認知症介護と仕事の両立、最大の壁は「見守りの空白」|ケアマネジャー90名への実態調査

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介護のススメ編集部では、一般社団法人日本単独居宅介護支援事業所協会(ケアマネジャーを紡ぐ会)と共同で、現役ケアマネジャー90名を対象に「認知症介護と仕事の両立」に関する実態調査(第3回)を実施しました。

ケアマネジャーの半数以上が認知症利用者の家族の介護離職を経験し、約2人に1人が「仕事を辞めたい」という相談を受けている――。調査からは、見守りの空白や急な症状変化が家族を離職の瀬戸際に追い込んでいる実態と、介護現場と企業をつなぐ連携への強い期待が浮き彫りになりました。

9月の認知症月間に合わせ、調査結果から見えてきた認知症介護と仕事の両立の現場のリアルをお伝えします。

ケアマネジャーの52.2%が、認知症利用者の家族の介護離職を経験

Q5認知症利用者の家族が介護を理由に仕事を辞めたケース

認知症の利用者の家族が介護をきっかけに仕事を辞めたケースがあったかを尋ねたところ、52.2%(47名)が「あった」と回答しました。

第1回調査(n=231)では介護全般について62.3%のケアマネジャーが家族の働き方変更を経験しており、認知症介護に限定した本調査でも過半数が離職ケースを経験していることから、認知症の有無にかかわらず介護離職が広く生じている実態が確認されました。

認知症利用者の介護者、71.1%のケアマネが「3割以上は働いている」と回答

認知症利用者の主な介護者(家族)の就労割合

現在担当している認知症利用者のうち、主な介護者(家族)がどの程度就労しているかを尋ねたところ、「5割以上」が38.9%(35名)で最多でした。「3〜4割程度」の32.2%(29名)と合わせると、71.1%のケアマネジャーが「介護者の3割以上は働いている」と回答しています。

「就労者はほぼいない」はわずか6.7%(6名)にとどまり、認知症介護と就労の両立は一部の特殊なケースではなく、ケアマネジャーが日常的に向き合う課題であることがわかります。

約2人に1人のケアマネが「仕事を辞めたい」という相談を受けている

直近1年以内に認知症利用者の家族から「仕事を辞めようと思っている」と相談を受けた経験

直近1年以内に認知症利用者の家族から「仕事を辞めようと思っている」という相談を受けたことがあるかを尋ねたところ、「よくある」(3.3%)と「ときどきある」(43.3%)を合わせて46.7%(42名)が相談を受けた経験があると回答しました。

約2人に1人のケアマネジャーが、認知症介護に起因する介護離職の意向に直面しています。

仕事との両立、最大の壁は「本人が一人でいる時間帯の安全確認」74.4%

認知症利用者の家族が仕事との両立で特に困っている場面(複数選択)

認知症利用者の家族が仕事との両立で特に困っている場面を尋ねたところ(複数選択)、最も多かったのは「本人が一人でいる時間帯の安全確認ができない」(74.4%・67名)でした。

次いで「急な症状の変化(徘徊・興奮等)への対応で仕事を中断せざるを得ない」(63.3%・57名)、「デイサービスの時間外(早朝・夜間・休日)に目が離せない」(50.0%・45名)、「通院・受診の付き添いで仕事を休む頻度が多い」(45.6%・41名)が続きます。

上位4項目はいずれも45%を超えており、認知症介護の特性として、見守りの空白時間・急な症状変化・サービス時間外の不安など、複数の困りごとが重層的に存在していることがわかります。

「職場に介護の状況を説明しづらい(認知症の偏見への懸念)」も24.4%(22名)あり、認知症特有のスティグマが両立の障壁となっている構図もうかがえます。

回答の一例(自由記述より)
「なんといっても見守り的支援だと思う。誰かそこにいてくれれば全て解決すると思われる話。問題はその誰かを誰がやるのかです」
「夜勤などの不規則な勤務体制に対応できるデイサービスがあると良いです」

ケアマネジャーの対応は「傾聴・相談対応」82.2%が最多

ケアマネジャーが実際に行っている支援や工夫(複数選択)

ケアマネジャーが実際に行っている支援や工夫を尋ねたところ(複数選択)、最多は「家族の精神的負担を軽減するための傾聴・相談対応」で82.2%(74名)でした。

次いで「家族の勤務状況に合わせたサービス提供時間の調整」73.3%(66名)、「定期巡回やショートステイなど、不在時間をカバーするサービスの提案」66.7%(60名)が続きます。

「特に工夫していることはない」と答えたのはわずか1名で、ほぼ全てのケアマネジャーが何らかの形で仕事との両立を支援しています。

家族が企業に求めるのは「柔軟な勤務時間・テレワーク」71.1%

認知症利用者の家族が勤務先企業に求めている支援(複数選択・上位3つまで)

一方、認知症利用者の家族が勤務先企業に求めている支援として多いと感じるもの(複数選択・上位3つまで)を尋ねたところ、第1位は「柔軟な勤務時間・テレワークの選択肢」71.1%(64名)、第2位は「上司や同僚の理解・配慮」67.8%(61名)、第3位は「介護休業・介護休暇の取得しやすい雰囲気」63.3%(57名)でした。

ケアマネジャーが傾聴やサービス調整を中心に現場で支援を重ねる一方、家族が企業に求めているのは「制度の有無」よりも「柔軟な働き方」や「職場の理解」といった”使える環境”です。

「認知症に関する正しい知識の社内共有」も28.9%(26名)が挙げており、認知症への偏見解消も含めた職場環境の整備が、介護現場の工夫と両輪で求められていることが示されました。

回答の一例(自由記述より)
「認知症の初期は徘徊など目が離せないこともあり、毎日でもデイサービスに行って欲しいが限度額超になる。グループホーム共用型のデイサービスは点数が低く、毎日利用が可能で土日祝も対応OK。夕飯の提供もしてくれるので、利用者家族も本当に喜んでくださっている」
「就業先の認知症に対する理解が必要。介護休業等で休むと収入が減ってしまい生活が困難になるため、公的な補助金の拡充を」
「家族自身のことは『ケアマネジャーではなく会社の窓口に相談してください』と言える環境が整うと良い」

連携先として「企業の人事部門・産業ケアマネ」に63.3%が期待 

支援で連携できたら有効だと思う相手

認知症利用者家族への支援で連携できたら有効だと思う相手を尋ねたところ(複数選択)、第1位は「認知症疾患医療センター・専門医」66.7%(60名)、第2位は「利用者家族の勤務先企業の人事部門・産業ケアマネ」63.3%(57名)でした。

医療連携への期待が最も高い一方で、企業との連携がわずか3.4ポイント差で第2位に入ったことは注目に値します。

第1回調査(2026年5月実施・231名対象)では83.1%が「企業とケアマネの連携の仕組みは介護離職防止に役立つ」と回答しており、認知症介護の文脈においても、介護現場と企業をつなぐ新たな支援体制への強い潜在ニーズがあることがわかります。

回答の一例(自由記述より)
「産業ケアマネが会社と家族、そして在宅の間に入ってくれる存在になれば有効ではないか」
「産業ケアマネの認知度があがり、企業と連携していける日が当たり前になることを期待している」
「介護休業を取りやすい環境。介護休業を取った時にサポートする同僚への手当ての仕組みも必要」

編集部より

今回の調査から浮かび上がったのは、認知症介護ならではの「見守りの空白」が、家族を離職の瀬戸際に追い込んでいるという現実です。

仕事中に本人の安全を確認できない不安、急な徘徊や興奮による仕事の中断、デイサービスの時間外に目が離せない――。認知症介護の困りごとは複数が重なり合い、介護保険サービスの時間帯調整だけでは対応しきれない構造的な課題を抱えています。

ケアマネジャーのほぼ全員が傾聴やサービス調整で何らかの支援を行っている一方、家族が企業に求めているのは「柔軟な働き方」と「職場の理解」。制度があっても使える環境がなければ意味がないという声は、第1回調査から一貫したメッセージです。

そして、6割超のケアマネジャーが「企業の人事部門・産業ケアマネ」との連携を有効と考えている事実は、介護現場からの明確なシグナルといえるでしょう。介護の専門家と企業の人事が情報を共有し、連携できる仕組みが整えば、「誰に相談すればいいかわからない」という家族の孤立を防ぐ一歩になるはずです。

9月は認知症月間です。認知症介護と仕事の両立支援が、企業・行政・介護現場それぞれの立場から前進するきっかけとなれば幸いです。

調査概要

項目内容
調査名ケアマネジャーを対象とした「認知症介護と仕事の両立」に関する実態調査(第3回)
調査企画株式会社IRODORI(介護のススメ編集部)
調査協力一般社団法人日本単独居宅介護支援事業所協会(ケアマネジャーを紡ぐ会)
調査期間2026年8月〜9月
調査方法オンラインアンケート
有効回答数90名
回答者属性現役ケアマネジャー

▶ 本調査のプレスリリースはこちら

ススメちゃん右

執筆者紹介

介護の不安を「安心」に変える情報サイト 介護のススメ編集部
ケアマネジャーや社会福祉士など、介護現場の最前線を知る専門家チームが監修・執筆しています。40代から始まる親の介護や、仕事との両立、介護保険制度の複雑な仕組みを、どこよりも分かりやすく、正確に解説。介護に携わるすべての方の「今、知りたい」に寄り添った解決策をお届けします。

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