「家族の病気や障害が原因で介護が必要になってきた」「介護保険の仕組みがよくわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。介護保険制度を理解することで、実際にサービスを利用する際の不安が軽減され、より安心して対応することができます。
この記事では、介護保険制度の概要と、サービスを利用する前に知っておきたいポイントを紹介します。
はじめての介護保険|制度の概要と介護サービスの内容

2000年(平成12年)4月に施行された介護保険法は、高齢者や障害のある人々が必要な介護サービスをスムーズに利用できるように設けられた社会保険制度の基盤となる法律です。40歳以上の人々が保険料を納め、要介護や要支援と認定されると、介護サービスを利用できるようになります。介護認定は、市区町村に設置された介護認定審査会によって行われます。
目次
介護が必要になった時
人生の中で、突然「介護が必要」という状況に直面することがあります。それは、家族や自身の病気やケガ、または加齢による心身の変化がきっかけになるかもしれません。このような時、どのように対応すればよいのか分からず、不安や混乱を感じる方も多いでしょう。そんな時に頼りになるのが「介護保険制度」です。
この制度は、高齢者やその家族が介護に関するサポートを受けやすくするために作られたものです。しかし、はじめて利用する場合、どこから始めればいいのか分からない方も多いかもしれません。
まずは、現在の状況を整理し、介護が必要な方にどの程度の支援が必要かを見極めることが重要です。
介護保険制度の基礎知識|申請方法と保険料

介護保険制度は、高齢者や介護が必要な方が、安心して介護サービスを利用できるように整備された公的制度です。自宅での介護から施設でのケアまで、さまざまなサービスが利用できます。介護サービスの利用には、市区町村への申請と「要介護認定」が必要です。次に、介護保険の基本的な仕組みや申請手続き、サービス内容、そして保険料について詳しく解説します。
介護保険が適用されるサービスの範囲
介護保険が適用されるサービスには、自宅で生活しながら利用できる「在宅サービス」と、施設に入所して利用する「施設サービス」の2つがあります。
在宅サービスでは、訪問介護や訪問看護、通所介護などが含まれ、家事や身体介助、リハビリテーションを受けられるため、自宅などの住み慣れた環境での生活を送りながらサービスを受けれます。また、ショートステイや、24時間対応の定期巡回・随時対応型訪問介護看護も利用可能です。
施設サービスには特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設などがあり、介護度に応じて食事や入浴、リハビリなどの総合的なケアを受けられます。利用者の状態や希望に応じて、これらのサービスを柔軟に組み合わせることが可能です。
要介護認定の流れ
①市区町村に申請
要介護認定を受けるためには、まず市区町村の窓口で申請手続きを行います。申請は利用者や家族のほか、地域包括支援センターや介護サービス事業者が代行することも可能です。
②訪問調査・主治医の意見書
市区町村の職員が自宅を訪問し、利用者の生活状況や身体機能、認知機能などについて調査を行います。同時に市区町村からの依頼で主治医が意見書を作成します。
③審査・要介護度の決定
訪問調査の結果と主治医の意見書を合わせて、市区町村が設置する介護認定審査会で審査されます。審査の結果、非該当、要支援1・2、要介護1~5のいずれかに分類されます。
④認定結果通知
申請から30日以内に要介護度の結果が通知されます。要支援・要介護と認定されたら介護保険でサービスを利用することができます。
介護保険で受けられるサービス|在宅と施設

介護保険制度は、高齢者などが自立した生活を送るためのサポートを提供する仕組みです。サービスは大きく分けて「在宅サービス」と「施設サービス」の2種類があります。それぞれの特徴を理解することで、利用者に適した選択が可能になります。
在宅サービス
在宅サービスは、自宅に住みながら必要な支援を受けられる点が特徴です。家族と一緒に過ごしたい方や、住み慣れた環境で生活を続けたい方に特に適しています。
在宅で受けられる代表的なサービス
- 訪問介護(ホームヘルプ):ヘルパーが自宅を訪問し、食事の準備や掃除、買い物の代行、入浴介助などの日常生活をサポートします。
- 訪問看護:看護師が自宅を訪問し、医療的なケアや健康管理、服薬指導などを行います。
- デイサービス:日帰りで施設に通い、入浴や食事、リハビリ、レクリエーションを受けることができます。社会的交流の場としても活用されます。
- ショートステイ:短期間施設で宿泊し、入浴や食事の介助、リハビリを受けることができます。家族の負担軽減や一時的な預かりとして利用されます。
- 福祉用具の貸与:介護ベッドや車椅子、歩行器など、自宅での介護を助ける福祉用具をレンタルできます。
- 住宅改修費の助成:手すりの設置や段差解消など、自宅を介護しやすい環境に改修する費用が一部助成されます。
施設サービス
施設サービスは、専門スタッフが常駐する環境で、24時間体制の支援が受けられる点が特徴です。自宅での生活が難しくなった場合や、医療的ケアが必要な方に適しています。
施設で受けられる代表的なサービス
- 特別養護老人ホーム(特養)常時介護が必要な高齢者が入居し、日常生活全般の支援を受けることができます。
- 介護老人保健施設(老健)
リハビリテーションを中心に、医療と介護を一体的に提供する施設です。退院後のリハビリや在宅復帰を目指す方に適しています。 - 有料老人ホーム
生活支援や介護サービスを提供する民間運営の施設で、多様なニーズに対応しています。 - グループホーム
認知症の方が少人数で共同生活を送りながら、日常生活の支援や介護を受けられる施設です。
サービスを選ぶ際のポイント
介護サービスを選ぶ際には、以下の要素を考慮することが大切です。
- 利用者の希望(自宅での生活を希望するか、施設で支援を受けるか)
- 介護度や健康状態に応じたサービス
- 家族の負担や介護にかける時間
- 経済的な条件を考慮したサービス選び
これらを基に、ケアマネジャー(介護支援専門員)と共に最適なケアプランを立てることが重要です。
ケアマネージャーに相談

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護保険サービスを利用する際に欠かせない専門家です。介護が必要と認定された方やその家族の相談窓口となり、ニーズに合ったサービスを受けられるようサポートします。ケアマネジャーは利用者と面談を行い、日常生活の困りごとや希望を丁寧にヒアリングした上で、最適なケアプランを作成します。また、介護サービスを提供する事業者との調整も行い、利用者が安心して介護を受けられる環境を整えます。
ケアマネージャーの役割
ケアマネジャーの役割は多岐にわたります。介護保険サービスを利用するための最初の手続きから、サービス開始後のフォローアップまでを一貫してサポートします。利用者の状態や希望に基づき、訪問介護やデイサービス、ショートステイなどの利用計画を立案し、必要に応じて事業者と調整します。
さらに、サービスの実施状況を定期的に確認し、状況の変化に応じてプランを見直すこともケアマネジャーの重要な仕事です。例えば、認知症の進行や身体機能の低下、家族の介護負担が増加した場合には、より適切なサービスに切り替えることで、利用者とその家族の生活を支える役割を果たします。ケアマネジャーを活用することで、複雑な手続きや調整がスムーズになり、安心して介護生活を続けることが可能です。
ケアマネージャーと繋がるには
介護保険サービスを利用する際は、ケアマネジャーに相談することから始めます。以下の相談先を活用するとスムーズです。それぞれの特徴を確認し、ご自身に合った窓口を選びましょう。
市区町村の窓口
介護保険の申請や認定手続きを行う場所です。地域ごとに担当者がいるため、最初の相談に適しています。
地域包括支援センター
高齢者やその家族の総合的な相談窓口で、必要に応じてケアマネジャーを紹介してくれます。
介護施設や事業所
すでに利用を検討している施設や訪問介護事業所に相談すると、専属のケアマネジャーを案内してもらえます。
居宅介護支援事業所
ケアマネジャーが所属する専門の事業所で、直接相談することができます。
どの窓口でも、困っていることや希望を具体的に伝えると、より適切な支援を受けやすくなります。
定期的なケアプラン見直しで適切なサービスを
介護保険サービスを継続的に利用する場合、定期的なケアプランの見直しは非常に重要です。利用者の健康状態や生活環境は時間とともに変化します。例えば、身体機能が向上してサービスが不要になる場合や、逆に介護の負担が増加して新たな支援が必要になる場合があります。
ケアマネジャーは、定期的に利用者の状況を確認し、必要に応じてプランを調整します。この見直しにより、サービスが常に最適化されるため、利用者の生活の質が向上し、介護者の負担も軽減されます。ケアマネジャーとの連携を密にすることで、柔軟かつ迅速な対応が可能となり、利用者とその家族にとって安心のサポート体制が築かれます。
地域包括支援センターについて
介護保険を利用する際、地域包括支援センターは欠かせない存在です。介護サービスを適切に活用するためには、このセンターが提供する支援を理解し、うまく活用することが重要です。地域包括支援センターは、利用者やその家族が直面する様々な問題に対して、総合的な支援を行う役割を担っています。ここでは、地域包括支援センターがどのような役割を果たし、どのように利用するべきかについて説明します。
介護予防支援
高齢者が自立した生活を送るために、介護予防プログラムを提供します。健康相談や運動指導、生活習慣改善などを行い、介護が必要になる前に予防措置を取ることができます。
ケアマネジメントの支援
ケアマネジャー(介護支援専門員)を通じて、介護保険サービスを適切に利用できるよう支援します。利用者のニーズに応じたサービス計画を立て、必要なサービスが適切に提供されるよう調整します。
相談支援
高齢者やその家族が抱える問題について、専門的なアドバイスを提供します。介護、健康、福祉、生活支援に関する相談を受け付け、必要な支援を提供します。
権利擁護
高齢者がその権利を侵害されないよう、虐待防止や財産管理、成年後見制度の利用促進など、権利擁護に関する支援も行います。
地域包括支援センターの利用方法
地域包括支援センターは、各市町村に設置されており、地域ごとに運営されています。利用者は、直接センターに訪れるか、電話やインターネットを通じて相談することができます。また、地域包括支援センターには、介護に関する専門知識を持つスタッフ(社会福祉士、保健師、主任ケアマネジャーなど)が常駐しており、利用者一人ひとりに寄り添ったサポートを行っています。
介護サービス費の自己負担は1~3割

介護保険制度を利用する際、サービスの費用は利用者自身が一部を負担する仕組みになっています。この自己負担割合は、原則として1割、2割、3割のいずれかです。どの割合になるかは、利用者やその配偶者の収入や資産状況によって決まります。
たとえば、年金収入が一定額以下の方や住民税が非課税の世帯は1割負担が適用されることが多いです。一方、現役並みの所得がある方は2割または3割となり、介護サービスを頻繁に利用する場合、家計に与える影響が大きくなる可能性があります。この制度設計は、負担の公平性を保つためのものですが、利用者によっては大きな負担感を感じることもあるため、別途支援策が用意されています。
高額介護サービス費で経済的負担を軽減

経済的な負担を軽減するために設けられているのが「高額介護サービス費」という仕組みです。この制度は、1か月の自己負担額が所得に応じた上限額を超えた場合、その超過分が払い戻されるものです。これにより、特に収入が少ない方や重度の介護が必要な方でも、安心してサービスを利用することができます。
たとえば、住民税非課税世帯では、自己負担の上限額が15,000円に設定されています。この金額を超えた部分については、後日払い戻しが受けられるため、サービスを継続的に利用しやすくなります。一方で、高所得者に適用される上限額は最大で140,100円となり、負担に差が設けられています。このような仕組みにより、低所得者層が過剰な経済的負担を強いられることを防ぎ、介護サービスを必要な人が公平に利用できる環境が整えられています。
参照元:厚生労働省 サービスにかかる利用料
高額介護サービス費の申請と手続き方法
高額介護サービス費を受けるには、市区町村に申請を行う必要があります。初回は申請書類を提出する必要がありますが、二回目以降は多くの市区町村で自動的に計算され、還付金が支給される仕組みになっています。このため、一度手続きを済ませれば、利用者側の負担は比較的少なくて済むようになっています。
ただし、すべての支出が高額介護サービス費の対象になるわけではありません。たとえば、施設入居者が支払う食費や居住費は対象外となる場合があります。そのため、介護サービスを利用する際は、事前に自治体やケアマネジャーに相談し、適用範囲を確認することが重要です。
介護保険サービスの選び方:ニーズに合った利用と予防の視点
介護サービスを適切に選ぶためには、ご本人のニーズや生活スタイルを十分に理解することが大切です。例えば、身体的な支援が必要であれば訪問介護やデイサービス、リハビリが必要なら訪問リハビリを選択します。また、認知症が進行している場合は、専門の施設や認知症ケアが受けられるサービスを利用することが重要です。ケアマネジャーと連携し、ケアプランを見直しながら、定期的にサービスを調整することで、より生活に合った介護を提供できます。これにより、利用者が安心して生活できる環境が整います。
サービス選択の際に考慮すべき重要ポイント
サービス選択の際に考慮すべき重要なポイントは、まずご本人の介護度や健康状態です。身体的な介護が必要か、認知症ケアが優先かなど、個々のニーズに応じたサービスを選びます。また、生活環境や家族のサポート体制も考慮する必要があります。サービスの利用可能時間や場所、料金、自己負担額を確認し、利便性を調整することも重要です。ケアマネジャーと相談し、柔軟にサービスを組み合わせることで、より適切な介護が提供できます。
定期的な見直しで最適な介護環境を整える
介護を受ける人の状態や生活環境は時間とともに変化します。身体機能の改善や悪化、認知症の進行、家族の支援状況の変化に応じて、サービス内容を調整することが求められます。ケアマネジャーは、定期的に利用者や家族と確認し、プランを見直して適切な介護サービスを提供します。これにより、常に最良のサポートを受けられ、生活の質を高めることができます。
まとめ

介護は誰にとっても突然必要になることがある課題です。しかし、介護保険制度を正しく理解し活用することで、不安を軽減し、利用者や家族にとって最適な介護環境を整えることができます。
本記事で紹介した5つのポイントを参考に、まずは制度の基本を押さえ、利用者や家族に合ったサービスを見つけてみてください。介護の負担を減らし、安心して生活を続けるために、介護保険は大きな助けとなるはずです。
参考元:厚生労働省 介護保険制度・サービス利用までの流れ・地域包括支援センター





