認知症は、単なる「もの忘れ」とは異なり、脳の細胞が死んだり機能が低下したりすることで記憶や判断力に障害が生じ、日常生活に支障が出る状態を指します。2025年には、65歳以上の高齢者の約4人に1人が認知症またはその予備軍になると推計されており、65歳未満で発症する若年性認知症も全国で約3.6万人とされています。
内閣府はこうした現状を踏まえ、2025年8月21日〜9月28日にかけて「認知症に関する世論調査(速報)」を実施。本記事ではその結果をもとに、私たちが認知症とどう向き合っていくべきかを読み解きます。
認知症と「接点がある」人は6割超
調査では、「認知症の人と接したことがある」と答えた人が60.5%にのぼり、認知症がもはや「身近な存在」であることが明らかになりました。
接点の内訳を見ると、
- 家族に認知症の人がいる・いた:53.5%
- 親戚にいる・いた:34.2%
- 近所づきあいの中で接したことがある:22.0%
- 医療・介護現場で接した経験:18.3%
- 街中などで偶然見かけた:12.6%
と、日常のさまざまな場面で接する機会があることがわかります。
目次
認知症後の暮らし、「サポート前提」が6割超
認知症に対するイメージとして最も多かったのは、「介護施設でのサポートが必要になる」(35.8%)でした。
次いで「医療・介護などのサポートを利用しながら地域で生活できる」(26.5%)、「周りのサポートを受けながら地域で生活できる」(14.4%)が続き、合わせて76.7%が何らかの支援を前提とした生活像を思い描いていることがわかります。
一方、「自ら工夫して地域で今までどおり生活できる」と答えた人はわずか3.1%にとどまり、「自立的な暮らし」のイメージは依然として限定的。支援の必要性を前提にしつつも、「どのような形で暮らすのか」を社会全体で議論していく必要があります。
自分が認知症になったら…「迷惑をかけたくない」と「地域で暮らしたい」が拮抗
もし自分が認知症になったらどう暮らしたいか、という質問では、「医療・介護などのサポートを利用して地域で生活したい」(27.4%)が最も多く、「周囲に迷惑をかけたくないので施設で暮らしたい」(27.3%)が僅差で続きました。
また、「身の回りのことができなくなるので施設で暮らしたい」(15.0%)を合わせると、施設での生活を希望する人は42.3%。一方で、地域での暮らしを希望する声(49.6%)がやや上回っている点も重要です。
「迷惑をかけたくない」という意識は根強い一方、地域で自分らしい暮らしを続けたいと考える人も少なくありません。こうした両者のニーズを両立する支援体制の構築が求められます。
不安の中心は「家族への負担」と「できなくなること」
認知症への不安は、本人・家族ともに「生活への影響」と「支える側の負担」に集中しています。
本人の不安
最も多かったのは「家族に身体的・精神的負担をかけるのではないか」(74.9%)、次いで「できていたことができなくなる」(66.2%)、「思い出を忘れてしまう」(51.1%)でした。また、「家への帰り道がわからなくなる」(37.4%)といった具体的な生活上の支障への不安も目立ちます。
家族の不安
家族側の不安としても、「周囲に迷惑をかける」(46.5%)、「身体的・精神的負担をかける」(45.3%)に加え、「経済的に苦しくなる」(42.3%)が非常に高く、介護が家計に与える影響の大きさが浮き彫りとなりました。
また、「介護によって仕事が続けられなくなる」(36.2%)といった、介護と就労の両立に対する不安も無視できません。
認知症基本法の認知度はわずか5.5%
令和6年1月に施行された「認知症基本法」について、「成立も内容も知っている」と答えた人は1.0%、「ある程度知っている」(4.5%)を合わせても5.5%にとどまりました。
「知らなかった」と答えた人が75.8%に上る現状からは、法制度や支援策の周知が十分に進んでいない実態がうかがえます。
「迷惑をかけたくない社会」から「支え合える社会」へ
今回の世論調査から見えてきたのは、「家族や周囲に迷惑をかけたくない」という強い意識と、「支援を前提とした生活像」の広がりです。こうした意識は、本人・家族双方にとって切実な現実ですが、それだけに支え合える仕組みと理解の土壌が不可欠です。
認知症は誰にとっても身近な課題です。制度・サービスの充実だけでなく、地域・企業・家族が連携し、「迷惑」ではなく「共生」を前提とした社会をつくることこそ、今後の大きな課題といえるでしょう。





