高齢化が進む現代、「住み慣れた自宅で、この先もずっと安心して暮らしたい。」と思う方もいるのではないでしょうか。誰もが抱くそんな願いを形にするのが「介護リフォーム(住宅改修)」です。
この記事では、介護保険を使ったお得なリフォームの知識から、具体的な工事事例、信頼できる業者の見極め方まで、あなたが知りたい情報を網羅的に解説します。ぜひ、ご一読ください。
介護リフォームは自宅での生活を続けたい方におすすめ
介護リフォームとは、要支援・要介護認定を受けた方が自宅での自立した生活を続けられるよう、住環境の障壁を取り除く改修のことです。その目的は、単なるバリアフリー化にとどまりません。
目次
介護リフォームの目的・メリット

介護リフォームの目的・メリットとしては、主に以下の4つが挙げられます。
1.自宅内の転倒事故の予防
自宅内の事故の大半を占める転倒。手すりの設置や段差の解消により、事故の原因そのものを取り除き、安全な生活空間を実現します。
2.自立支援と生活への意欲向上
トイレや入浴を自力で行えるようになることは、単なる機能回復ではありません。日々の達成感が自信となり、前向きに生きる意欲を育みます。
3.家族など介護者の負担軽減
動線の改善や介助しやすい設備の導入は、介護者の身体的負担を大幅に軽減。精神的なゆとりも生まれ、より良い介護関係を築けます。
4.認知症の方にやさしい環境づくり
視認しやすい色使いや迷わない動線設計により、認知症の方の不安や混乱を減らす効果も。落ち着いて過ごせる環境は、症状の進行抑制にもつながります。
このように、ご本人とご家族の生活の質(QOL)を大きく向上させる、重要な効果が期待できる手段となります。
介護保険が適用される6つの改修工事の内容:補助金活用には条件も?
介護リフォーム最大のメリットは、介護保険制度による費用補助です。条件としては、要介護1~5・要支援1~2に該当する方が利用できます。以下では、介護保険が適用される6つの改修工事について解説します。
1.手すりの取付け
転倒リスクの高い場所や、立ち座り・移動時に支えが必要な箇所に設置
◆対象場所:廊下、トイレ、浴室、玄関、階段など
2.段差の解消
つまずきや転倒の原因となる段差を取り除く工事
◆敷居の撤去、スロープ設置、浴室床のかさ上げなど
3.床材・通路面の変更
安全で移動しやすい床材への変更
◆滑りやすい床から、畳・フローリング・クッションフロアなどへ
4.扉の取替え
身体への負担が少ない扉への交換
◆開き戸から引き戸・折れ戸への変更(軽い力で開閉可能)
5.便器の取替え
立ち座りの負担軽減
◆和式便器から洋式便器への交換
6.付帯工事
前述した1~5の改修に必要な関連工事
◆下地補強、給排水設備工事、床・壁の補修など
介護リフォームの費用目安:支給限度額と自己負担
費用の目安について、以下にまとめました。
支給限度額:20万円(税込)
生涯を通じて利用できる上限額です。この範囲内で、所得に応じて工事費用の7〜9割が介護保険から支給されます。
自己負担割合:1〜3割
所得水準により決定されます。
【実際の負担額シミュレーション:20万円の工事を行った場合】
- 自己負担1割の方 → 実質負担額:2万円
- 自己負担2割の方 → 実質負担額:4万円
- 自己負担3割の方 → 実質負担額:6万円
申請手続きについて
この制度を利用するには、事前申請が必要です。担当のケアマネジャー等が作成する「住宅改修が必要な理由書」を提出し、承認を得てから工事を開始。介護保険を活用することで、必要な住宅改修を大幅に少ない負担で実現できる仕組みとなっています。
自治体によっては独自の助成金制度も利用できる

介護保険の住宅改修費支給とは別に、各自治体が独自の助成金制度を設けている場合も。これらの制度を上手に活用すれば、自己負担をさらに軽減することが可能です。以下では、東京都内の自治体における独自の助成制度の例をご紹介します。
【町田市】バリアフリー適応住宅改修補助(よりよい住まいづくり応援制度)
介護保険の対象とならない改修工事にも補助金を支給。より幅広いバリアフリー化を支援します。
【中野区】高齢者自立支援住宅改修等給付事業
要介護認定を受けていない高齢者も利用可能。予防的な住宅改修を促進する制度です。
【練馬区】自立支援住宅改修給付・設備改修
日常生活の自立を支援するための設備改修に特化した給付制度。介護保険では対象外の設備にも対応。
各自治体の制度は内容や条件が異なるため、詳細はお住まいの市区町村窓口でご確認ください。お住まいの地域でも同様の制度がある可能性が高いため、ぜひ確認することをおすすめします。介護保険と併用できる場合も多く、賢く活用することで理想的な住環境整備が実現できます。
介護保険の申請から支払いまでの手続き:事前に手続きをしておく必要がある
補助金を利用するには、正しい手順を踏むことが絶対条件です。工事後の申請は認められないため、流れをしっかり把握しておきましょう。
申請から工事、補助金受給までの5ステップ
申請から工事、補助金受給までは以下の5つのステップを踏むことが必要です。
1.【相談】ケアマネジャー等へ相談
まずは担当ケアマネジャーや地域包括支援センターに、住宅改修の必要性を相談。専門的な視点でアドバイスを受けます。
2.【見積・書類準備】複数業者から見積書を取得
リフォーム業者から見積もりを取得(複数社推奨)。ケアマネジャーが「住宅改修が必要な理由書」を作成します。
3.【事前申請】市区町村へ必要書類を提出
工事着工前に必ず申請が必要です。
- 提出書類:申請書、見積書、理由書、改修前の写真、図面など
- 提出先:市区町村の介護保険担当窓口
4.【工事実施】承認後に着工
市区町村から承認通知を受けてから工事開始。承認前の着工は補助対象外となるため注意が必要です。
5.【完了報告・支給】完了書類の提出と補助金受給
- 提出書類:領収書、改修後の写真、完了報告書など
- 支給方法:償還払い(一旦全額支払い後に還付)または受領委任払い(自己負担分のみ支払い)
困ったときの相談窓口
手続きに不安があれば、以下の窓口で相談できます。
- お住まいの市区町村の「介護保険課」「高齢福祉課」
- 地域包括支援センター
- 担当のケアマネジャー
申請方法から信頼できる業者の情報まで、専門スタッフが丁寧にサポートしてくれます。
介護リフォームを実施するときの注意点
介護リフォームを成功させるためには、いくつかの重要なポイントに注意が必要です。失敗を防ぎ、本当に役立つ改修を行うための確認事項をまとめました。
1.事前申請を忘れずに
介護保険の住宅改修は必ず工事前に申請が必要です。工事後の申請では補助金が受けられません。
2.複数の業者から見積もりを取る
価格や提案内容を比較検討することで、適正な工事内容と費用を見極められます。
3.将来の身体状況も考慮する
現在の状態だけでなく、今後の変化も見据えた改修計画を立てましょう。
4.本人・家族の意見を十分に聞く
実際に使う方の生活動線や習慣を理解した上で、最適な改修内容を決定します。
5.ケアマネジャーや専門家に相談
医療・介護の専門家のアドバイスを受けることで、より効果的な改修が可能になります。
6.工事中の生活への配慮
工事期間中の生活場所の確保や、騒音・ほこり対策なども事前に計画しておきましょう。
適切な準備と計画により、介護する人もされる人も快適に過ごせる住環境を実現できます。
【場所別】介護リフォームの施工事例と成功ポイントを解説

具体的にどんなリフォームができるのか、場所別の事例でイメージを膨らませましょう。
事例1:廊下・居室|手すりと床材変更で安全な歩行空間へ
◆改修前の課題
- 手すりがなく、壁に寄りかかりながらの不安定な歩行
- 畳敷きの居室で車椅子移動が困難
- 敷居によるつまずきリスク
◆改修内容と効果
廊下全体に連続手すりを設置し、安定した歩行をサポート。人感センサー付き足元灯により夜間の移動も安心に。居室は畳から滑りにくいフローリングへ変更し、敷居も撤去。車椅子でもストレスなく移動できる空間が実現しました。
事例2:玄関・階段|段差解消とスロープで外出が楽しみに
◆改修前の課題
- 高い上がりかまちで転倒リスクが高い
- 急勾配の階段が外出を妨げる要因に
◆改修内容と効果
玄関外側に緩やかなスロープ、内側に式台(踏み台)を設置して段差を解消。縦手すりの追加で立ち座り動作も安全に。階段は両側手すりと滑り止めシートで不安なく昇降可能となり、外出への心理的ハードルが大幅に低下しました。
事例3:トイレ・浴室|最新設備で衛生面と安全性を向上
◆改修前の課題
- 和式トイレで立ち座りが困難
- タイル張りの寒い浴室でヒートショックリスク
- 狭い空間で介助が困難
◆改修内容と効果
和式から最新の節水型洋式トイレへ交換し、L字型手すりで安全性を確保。扉を引き戸に変更して介助スペースも拡大。浴室は断熱性能の高いユニットバスに一新し、滑りにくい床材と適切な位置の手すりで、自立した入浴を実現。温度差によるヒートショックリスクも大幅に軽減されました。
失敗しない!信頼できるリフォーム業者の選び方
リフォームの成否は、業者選びで9割決まります。大切な住まいを任せるパートナーを見極めるための3つの基準を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
基準1:介護リフォームの実績と専門知識
◆チェックポイント
- 公式サイトに、介護リフォームの具体的な施工事例が豊富にあるか。
- 介護保険制度の申請手続きに精通し、サポート体制が整っているか。
- 福祉住環境コーディネーターや建築士など、専門資格を持つスタッフが在籍しているか。
基準2:明確な見積もりと充実した保証
相見積もりを取る際は、総額だけでなく以下の点を比較しましょう。
◆見積もりの比較ポイント
- 工事内容や使用部材が「一式」ではなく、具体的に明記されているか。
- 工事後の保証期間やアフターサービス(定期点検など)の内容。
- 万が一の事故に備え、損害保険や労災保険に加入しているか。
基準3:ケアマネジャーからも紹介され密な連携を実施
優れた業者は、利用者や家族だけでなく、担当ケアマネジャーとも密に連携します。
ケアマネジャーは、利用者の心身の状態を最も理解する専門職。その情報に基づいた的確なリフォーム計画を立てるには、業者との円滑な情報共有が不可欠です。
また、地域のケアマネジャーから評判の良い業者を紹介してもらうのも1つの有効な手段。最近では、オンラインでの無料相談や簡易見積もりに対応する業者も増えています。まずは気軽に問い合わせてみましょう。
介護リフォームに関する「よくある質問(FAQ)」
ここでは、介護リフォームに関するよくある質問をまとめました。
Q1.持ち家でなくてもリフォームできますか?
A1.賃貸住宅や分譲マンションでも可能です。ただし、必ず事前に大家さんや管理組合の承諾を得る必要があります。書面での承諾書を求められる場合がほとんどです。
Q2.介護保険による補助金の対象者は要介護認定を受けていなくても使えますか?
A2.いいえ、使えません。介護保険の住宅改修費支給は、要支援1・2、または要介護1~5の認定を受けている方が対象です。
Q3.申請してから補助金が振り込まれるまで、どのくらいかかりますか?
A3.自治体によって異なりますが、一般的には申請書類をすべて提出してから約1~2ヶ月後が目安です。
快適・安心な暮らしのために介護リフォームを行うことはおすすめです

介護リフォームは、要介護者本人と家族の未来を明るくする力強い一手です。
成功の鍵は、「①補助金制度を正しく理解し、②信頼できる専門家と連携し、③利用者本人の意思を尊重する」こと。
まずは第一歩として、お近くの地域包括支援センターや担当のケアマネジャーに相談してみてください。専門家と手を取り合うことで、費用負担を抑えながら、安全で快適な住まいを実現できます。
参照元:厚生労働省 「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」、「介護保険における住宅改修」、「福祉用具・住宅改修」、東京都福祉局 住宅改善事業(バリアフリー化等)区市町村別事業概要一覧





