物価高騰や人手不足が続く中、介護事業所の経営はかつてないほど厳しさを増しています。こうした状況を受け、厚生労働省は2025年11月28日付で、全国の自治体・介護事業所に向けて「医療・介護等支援パッケージ」を通知しました。
今回の支援は、令和8年度の介護報酬改定を待たずに実施される緊急措置を中心とし、賃上げ・物価高対策・ICT導入・施設整備など多方面を網羅した内容です。あわせて、地域の実情に応じて活用できる「重点支援地方交付金」も示され、両制度を併用することでより強力な支援が可能に。
この記事では、通知の内容を介護事業者向けにわかりやすく整理し、特に重要なポイントを中心に解説します。
この記事でわかること
- 「医療・介護等支援パッケージ」で受けられる7つの支援策の概要
- 賃上げ支援(月1万円〜)の内容と対象期間
- 重点支援地方交付金との違いと併用のポイント
目次
介護現場が緊急支援を必要とする理由
介護現場では、以下の要因が深刻化しています。
- 人材不足の長期化と離職の増加
- 燃料費・光熱費・食材費などの物価上昇
- 猛暑・災害への備えが不十分
- 施設の老朽化による安全性の課題
これらの影響から、「報酬改定を待っていられない」という現場の声が強まり、国は緊急的に支援パッケージを組む方針を示しました。今回の施策は、介護サービスを止めないことを最優先にしています。
今回の支援の軸となる7項目 | 医療・介護等支援パッケージと重点支援地方交付金
以下では、通知で示された7つの支援策と、その中で特に事業者が押さえておくべきポイントを解説します。
①介護従事者の賃上げ支援(令和7年12月〜令和8年5月)
支援の柱の一つが、賃上げの前倒し実施です。具体的な内容は次のとおりです。
基本の賃上げ
介護従事者に対し、月1万円相当を引き上げる支援。
上乗せ(生産性向上・協働化に取り組む事業所)
取り組みを行う事業所では、介護職員に月0.5万円を追加で上乗せ。
職場環境改善
環境改善費を人件費に振り向けた場合、介護職員1人あたり月0.4万円の賃上げに相当。
対象期間
令和7年12月〜令和8年5月の6か月間。
事業所としては、これらの内容を踏まえ、6か月分の賃上げ相当額を確実に受け取るための準備が必要です。
②サービス継続のための運営支援(物価高対策・気候変動・災害対応)
訪問系・通所系・施設系を問わず、運営を維持するための幅広い経費が対象となります。
補助対象の具体例
- 燃料費、消耗品、備品の購入費
- 猛暑対策機器(ネッククーラー、スポットエアコン等)
- 災害時の備蓄(簡易トイレ、発電機、食料・水など)
- 送迎車・訪問車の運行にかかるコスト
- 防災設備の整備など
「単なる物価高対策ではなく、猛暑や災害も含めた広い意味でのリスク対策」であることが特徴です。
③介護施設における食事提供を支える支援
食材費の高騰により、特養や有料老人ホームなどでは食事提供が経営負担となっています。今回の支援では、食事提供に必要な食材費・消耗品費の補助が明確に位置づけられています。
④老朽化対策・防災対策などの施設整備支援
建物の改修や浴室・トイレなどの衛生設備の更新、バリアフリー化、防災・減災設備の整備など、施設の安全性を維持するために必要な改修費を補助するものです。
⑤ICT導入・業務効率化の推進
介護記録ソフト、見守り機器、事務効率化システム、協働化による業務分担の見直しなどが補助対象となり、これらを通じて介護現場の業務負担を減らし、働き手の定着率向上を目指す内容です。
⑥訪問介護・ケアマネ体制の確保
訪問介護の担い手不足やケアマネジャーの業務量増加に対応するため、体制維持を目的とした支援を実施します。
⑦重点支援地方交付金(自治体が柔軟に使える物価高騰対策)
この交付金は、地域の実情に合わせて自治体が支援内容を決められる仕組みです。
特徴
- 物価高(光熱費・燃料費・食料品など)への対応が目的
- 医療・介護等支援パッケージとは別枠で、併用が可能
- 国は「積極的に併用して現場を支える」よう自治体に求めている
医療・介護等支援パッケージとの違い
- 医療・介護等支援パッケージ→介護サービスに特化
- 重点支援地方交付金→幅広い物価高騰対応(介護含む)
この仕組みを理解しておくと、事業所として受けられる支援の幅が格段に広がります。
今回の支援策の前提条件|補正予算成立後に実施
現時点で示されている内容は、国会での補正予算成立を前提としたものです。正式な実施要件や申請方法は、予算成立後に自治体から順次公表されるため、現時点の情報はあくまで“予定”であること、そして自治体からの追加通知を必ず確認することが重要となります。
事業者が今から準備すべき3つのポイント
事業所が支援を確実に活用するためには、制度の詳細が固まる前の段階から準備を進めておくことが大切です。ここでは、今のうちに取り組んでおきたい3つのポイントを紹介します。
自治体の通知を随時チェック
事業所が受けられる支援の“具体的な形”は自治体が決めます。
申請体制の整備
補助金申請には計画書・実績報告が必要です。事務担当を早めに決めておくとスムーズです。
ICT化や職場環境改善に前向きな投資を
今回の補助は、介護事業所が将来に向けて設備や仕組みを整える好機となります。
介護の未来を守るために|今回の支援策が示す方向性
今回のパッケージと交付金は、介護現場の声に応える形で「今すぐ必要な支援」を盛り込んだ内容です。賃上げ、食事提供、施設整備、ICT化、安全対策など、幅広い課題に同時に取り組む設計となっており、介護サービスの継続性と質の確保につながることが期待されます。
今後、自治体ごとの運用が決まり次第、事業所が取るべきアクションもさらに具体化されていきます。今回の支援策を上手に活用しながら、現場の課題解消につなげていくことが大切です。
参照元:厚生労働省 「医療・介護等支援パッケージ」及び「重点支援地方交付金」の双方の活用について





