厚生労働省が公表した「介護保険事業状況報告(暫定版)」から、令和7年8月・9月時点の最新データが明らかになりました。本記事では、直近2か月の動きを整理しながら、4月〜7月のデータとも照らし合わせて、介護保険制度の現在地と今後の課題を読み解きます。
この記事でわかること
- 令和7年8月・9月の介護保険の主要データ(認定者数・給付費など)
- 要介護認定者の約7割が高齢女性である理由
- 在宅志向の強まりと給付費拡大が示す制度の課題
目次
第1号被保険者数は横ばい、高水準で推移
65歳以上の第1号被保険者数は、8月末・9月末ともに3,587万人となり、前月から大きな変化はありませんでした。4月〜7月の推移では、7月にかけてわずかな増加が見られていましたが、今回の8月・9月は増加が一服し、高水準で横ばいとなっている状況です。
ただし、団塊の世代が後期高齢者へ移行する流れは今後も続くため、中長期的には、再び被保険者数が増加局面に入ることが考えられます。
要介護(要支援)認定者数は増加が継続
一方で、要介護(要支援)認定者数は引き続き増加傾向です。
- 8月末:732.3万人
- 9月末:733.7万人
65歳以上人口に占める認定率は約20.0〜20.1%と、高い水準で推移しています。被保険者数の伸びが緩やかな一方で、認定者数は着実に増えており、介護ニーズの拡大が「人口増」ではなく「高齢化の深化」によって生じていることが、改めて確認できる状況です。
認定者の約7割を占める「高齢女性」という構造
認定者数の内訳を見ると、もう一つ重要な特徴が浮かび上がります。
9月末時点の認定者733.7万人のうち、
- 女性:497.7万人
- 男性:236.0万人
と、女性が全体の約68%を占めている状況です。
高齢女性は、配偶者と死別して単身となる割合が高く、年金水準が比較的低いことや家族介護に頼りにくいといった背景を抱えやすいため、在宅介護ニーズが量・質の両面で高まりやすい層といえます。また、認定者数の増加も、こうした属性を持つ高齢者の増加によって、より強く押し上げられている側面があると考えられます。
在宅介護の利用拡大がより鮮明に
サービス利用者数を見ると、在宅志向の流れは明確です。
居宅(介護予防)サービス
- 8月時点:442.0万人
- 9月時点:443.2万人
4月〜7月の時点でも増加が続いていましたが、8月・9月もその流れは変わっていません。自宅での生活を続けたい高齢者が増えるなか、居宅サービスが介護保険の中心になりつつあることが、数字からも読み取れます。
地域密着型サービス
- 8月:94.0万人
- 9月:93.8万人
大きな増減はないものの、地域包括ケアの要として、安定的に利用されているサービス層といえるでしょう。
施設サービスは横ばいだが、依然として高いニーズ
施設サービスの受給者数は、8月が96.8万人、9月が97.4万人と、ほぼ横ばいで推移しています。内訳を見ると、特別養護老人ホームの利用者が最も多く、在宅介護が進む一方で、重度化に伴い施設を必要とする層が一定数存在している状況が続いています。
保険給付費は全分野で拡大、過去最高水準へ
制度全体への影響が大きい保険給付費にも注目が必要です。9月支出決定分の保険給付費総額は9,782億円となり、過去最高水準を更新しました。
9月支出決定分のサービス別給付費内訳
- 居宅(介護予防)サービス分:4,806億円
- 施設サービス分:2,918億円
- 地域密着型(介護予防)サービス分:1,567億円
8月支出決定分と比べると、すべての主要サービス分野で給付費が増加しており、支出拡大は特定の分野に偏らず、制度全体に広がっていることが分かる状況です。
低所得者支援と医療連携費用が示す制度の課題
給付費の内訳からは、制度の構造的な課題も見えてきます。
特定入所者介護(介護予防)サービス費(補足給付)
9月支出決定分は196億円に達し、
- 食費分:104億円
- 居住費分:92億円
となっています。
これは、施設利用者の中で、低所得者への公的支援が不可欠な層が引き続き多いことを示している状況です。
高額介護・高額医療合算介護サービス費
- 高額介護サービス費:248億円
- 高額医療合算介護サービス費:47億円
これらの費用は、介護と医療を多く利用する重度者の増加を反映しており、医療と介護の連携を前提とした支援体制の重要性を、数字の面から裏付けています。
4月〜7月比較と最新データから見える共通構造
厚生労働省が公表した令和7年4月〜7月分の統計と、8月・9月の暫定値を総合的に見ると、次の点は一貫して確認できます。
- 要介護認定者数は増加を続けている
- 認定率は20%前後で高止まり
- 認定者の約7割は高齢女性
- 在宅・施設・地域すべてで給付費が拡大
- 医療と介護を併用する重度者が増えている
つまり、「誰に、どこで、どのような支援が集中しているのか」が、これまで以上に明確になってきているといえるでしょう。
数字の先にある「介護の現場」
これらの統計は、単なる制度データではなく、高齢者一人ひとりの暮らしや、それを支える家族、さらには介護現場の負担や人材不足といった現実と直結しています。
今後は、在宅介護を支える人材の確保や、単身・低所得高齢者への支援強化、医療と介護の切れ目ない連携、そして財政の持続可能性とサービスの質をどう両立させていくかといった課題への対応が、これまで以上に求められると考えられます。
介護保険制度は今、「拡大を前提に、いかに持続させていくか」という次の段階に入りつつあり、今回の最新データは、その現実を静かに、しかし確実に示しているといえるでしょう。
参照元:厚生労働省 介護保険事業状況報告の概要(令和7年9月暫定版)、介護保険事業状況報告の概要(令和7年8月暫定版)、介護保険事業状況報告の概要(令和7年7月暫定版)、介護保険事業状況報告の概要(令和7年6月暫定版)、介護保険事業状況報告の概要(令和7年5月暫定版)、介護保険事業状況報告の概要(令和7年4月暫定版)





