慢性的な人材不足が続く介護分野では、「賃上げ」と「業務効率化」を切り離して考えることが難しくなっています。こうした背景のもと、令和7年度補正予算を活用して実施される「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」では、処遇改善とDXを一体的に進める考え方が明確に示されました。
その象徴ともいえるのが、ケアプランデータ連携システムの位置づけです。本制度では、単なるIT活用ではなく、生産性向上に取り組む事業所を評価する要件の一つとして、このシステムが組み込まれています。
この記事でわかること
- ケアプランデータ連携システムが賃上げ支援の上乗せ要件となるサービス種別と、その具体的な条件
- フリーパスキャンペーンや導入助成金の申請期限と活用方法
- 令和8年度介護報酬改定や介護情報基盤統合を見据えた、今導入すべき理由
目次
サービス種別によって異なる「上乗せ要件」
今回の賃上げ・職場環境改善支援事業では、生産性向上に取り組む事業所を対象とした「上乗せ支援」が設けられていますが、その要件は提供している介護サービスの種別によって異なります。すべての事業所に一律の条件が課されているわけではない点には、注意が必要です。
まず、訪問系・通所系サービスについては、生産性向上に取り組む指標の1つとして、ケアプランデータ連携システムへの加入(または加入見込み)が要件とされています。なお、申請時点で未加入でも、加入を誓約すれば申請可能です。ただし、実績報告までに実際の加入が必要となります。
訪問介護や通所介護、訪問看護など、在宅系サービスを中心とした事業所では、このシステムの活用が、賃上げ支援の上乗せを受けるうえで重要な位置づけとなります。制度対応と業務改善の両面から、早期の導入判断が求められる局面といえるでしょう。
一方、施設系・居住系・多機能系・短期入所系サービスについては、評価の軸が異なります。これらのサービスでは、生産性向上加算(ⅠまたはⅡ)の取得(または取得見込み)が上乗せ要件とされており、ケアプランデータ連携システムへの加入が直接の条件とはなっていません。
このように、上乗せ支援の考え方はサービス特性に応じて整理されています。特に訪問・通所系サービスにおいては、ケアプランデータ連携システムが、単なる業務効率化ツールではなく、制度上の評価や賃上げ原資の確保に直結する要素として位置づけられている点を、あらためて押さえておく必要があるでしょう。
将来は「介護情報基盤」へ統合されるという前提
資料では、ケアプランデータ連携システムが将来的に「介護情報基盤」および「介護保険資格確認等WEBサービス」へ統合される方針であることも示されています。国が強調しているのは、統合後になって慌てて対応するのではないという点です。
あらかじめ、システム利用を前提とした業務体制を整えておくことが重要とされています。加えて、事業所間でのデータ連携、いわゆる連携先ネットワークを先行して構築しておくことが、円滑な移行につながるという考え方が示されています。
この点を踏まえると、ケアプランデータ連携システムの導入は、単なる目先の補助金対応ではなく、将来の介護DX基盤を見据えた「先行投資」として捉えることが重要だといえるでしょう。
導入を後押しする支援策と期限
事業所の負担を軽減するため、国は複数の支援策を用意しています。
フリーパスキャンペーン
令和7年度補正予算により、令和8年度(2026年度)中も引き続き無料利用が可能です。申請期間は2025年6月1日~2026年5月31日で、この期間中に申請すれば1年間無料で利用できます。
導入・接続支援に対する助成金
介護情報基盤との接続や、ケアプランデータ連携システムの導入支援を一体的に受ける場合、その費用は助成対象となります。初期設定や技術的な支援にかかる負担を抑えながら、段階的にDX対応を進められる点が特徴です。
ただし、この助成金には期限があります。申請受付は令和8年3月13日までとされており、国も事業所に対して早期の申請を呼びかけています。準備や検討に時間を要する場合もあるため、余裕をもって対応を進めることが重要です。
賃上げ支援の金額感と事業所へのインパクト
本事業では、支援額の目安も具体的に示されています。
- 幅広い賃上げ支援:月額1.0万円相当
- 生産性向上等に取り組む事業所への上乗せ:月額0.5万円相当
- 職場環境改善支援(人件費充当時):月額0.4万円相当
これらを合算すると、最大で月額1.9万円相当の支援となり、賃金改善や人材定着に与える影響は決して小さくありません。
「今動く理由」は制度の中にある
今回の通知から読み取れるのは、ケアプランデータ連携システムが、もはや任意の業務改善ツールではなく、賃上げ支援や加算取得と結びついた「制度対応の前提条件」になりつつあるという点です。特に訪問・通所系サービスにおいては、上乗せ支援の要件として位置づけられていることに加え、将来的な介護情報基盤への統合も見据えた準備が求められています。
また、令和8年度介護報酬改定では、介護職員等処遇改善加算の上乗せ区分の要件としてケアプランデータ連携システムを位置づけることも検討されており、今後さらに重要性が増す可能性があります。
さらに、導入支援に活用できる助成金には申請期限があり、フリーパスキャンペーンも期間限定であることから、検討を先送りするメリットは大きくありません。人材確保と業務効率化を同時に進めるためにも、制度の流れを踏まえた早めの判断と行動が、今後の安定した事業運営につながる重要なポイントになるでしょう。
参照元:厚生労働省 介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業、ケアプランデータ連携システムの利用促進及び介護情報基盤の活用のための介護事業所等への支援策について





