令和6年度介護報酬改定で、一部の福祉用具に「貸与と販売(購入)の選択制」が導入されました。利用者の状態に応じた選択や保険給付の適正化を目的とした制度ですが、導入後の実績はどう変化したのでしょうか。
本記事では、介護保険総合データベース(介護DB)分析やアンケート、ヒアリング結果をもとに整理します。
この記事でわかること
- 選択制導入後、販売の給付額は令和6年6月をピークに減少し、購入選択率0%の保険者が56.8%を占めるなど、制度の浸透は限定的であること
- 購入割合は固定用スロープが15.2%と最も高く、歩行器は1.6%と低いなど、種目ごとに大きな差があること
- 購入後に用具を使用していない割合が歩行器で6.4%に上るなど、購入後フォローや多職種連携に課題が残ること
目次
選択制導入の狙いと調査の枠組み
選択制は、要介護度に関係なく給付可能な福祉用具のうち、比較的廉価で購入の方が負担を抑えやすいものを対象に導入されました。具体的には、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖、多点杖の4種目です。
調査は、介護DB(令和5年4月〜令和7年6月、月遅れ請求除く)と、貸与事業所・居宅介護支援事業所・保険者へのアンケート、ヒアリングで構成。なお、本記事は令和8年2月18日の介護報酬改定検証・研究委員会に提出された「結果概要(案)」に基づいており、今後内容が変更される可能性があります。
利用実績の変化:全体は増、対象種目は減少傾向
福祉用具全体(貸与+特定福祉用具販売)では、利用者数・給付額とも季節性を伴いながら増加傾向です。一方、選択制対象種目では制度開始(令和6年4月)で販売が発生したものの、販売の給付額は令和6年6月をピークに減少しています。販売利用者数も前年同月比で減少傾向であり、貸与額も制度開始を境に前年同月比で減少傾向が示されています。
なお、販売データが介護DBに格納されている保険者は全1,574保険者中493(31.3%)にとどまり、政令市は0%です。このためデータの代表性には留意が必要です。
購入はどれくらい選ばれたか
購入割合は種目で差があります。固定用スロープは令和6年度で15.2%(令和7年4〜6月は7.5%)と比較的高い一方、歩行器は1.6%(同1.2%)と低い結果でした。購入理由は「長期利用が想定される」「購入の方が経済的」が上位です。
ケアマネジメントと安全面
令和7年4〜6月に選択制対象種目がケアプランに位置付けられた32,307人のうち、対象種目のみの利用者は4,523人。購入により福祉用具貸与がなくなり、居宅介護支援費の算定対象外となったケースは117人でした。
購入後に用具を使用していない割合は、歩行器6.4%、単点杖4.7%、多点杖4.3%、固定用スロープ2.9%でした。理由は種目によって異なり、固定用スロープは入院、歩行器は身体機能の低下、多点杖は身体機能の改善が主な要因として挙げられています。ヒアリングでは、医師所見や多職種意見の収集の難しさも指摘されました。
今後の運用が鍵
選択制は販売が発生した一方、令和6年4〜6月時点で購入選択率が0%の保険者は56.8%を占め、特に一般市や町村で割合が高く、制度の浸透には地域差があります。今後は説明の標準化や多職種連携の強化、購入後フォローの充実が制度運用の重要なポイントとなるでしょう。





