厚生労働省が公表した「令和7年度介護事業経営概況調査結果(案)」では、全国17,528施設・事業所を対象に調査を行い、8,099施設・事業所(有効回答率46.2%)から得た令和5・6年度決算データを基に、介護事業の経営実態が明らかになりました。
本記事では、4つの関連資料を踏まえ、この調査が示す介護経営の本質をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 令和6年度決算で介護事業所の37.5%が赤字、平均収支差率は+5.4%という経営実態
- 訪問介護9.6%、介護老人保健施設0.6%など、サービス別の収支差率の違い
- 給与費が収入の60〜76%を占める人件費構造と、事業所間の二極化の背景
目次
約4割が赤字という厳しい現状
今回の調査で最も注目されるのは、令和6年度決算で事業所の37.5%が赤字だった点です。一方で、全サービスの平均収支差率は+5.4%(物価高騰対策関連補助金を含まない場合)と報告されており、黒字事業所と赤字事業所が混在する「二極化」の状態が続いています。この数字は、サービス全体が一律に悪いというより、事業所ごとの状況が大きく異なることを示唆しています。
人件費の高さという構造的課題
介護は典型的な労働集約型産業です。今回の調査でも、収入に対する給与費の割合はサービスによって60〜76%台と幅があり、居宅介護支援(76.2%)、訪問看護(70.1%)、訪問介護(67.8%)など、特に人件費比率の高いサービスが見られます。職員確保と処遇改善は依然として経営上の大きな課題であり、物価高や光熱費の上昇も重なり、多くの事業所がコスト増の影響を受けています。
サービス別の収支状況
今回の調査では、サービス種別ごとの収支差率も公表されました。令和6年度決算では、定期巡回・随時対応型訪問介護看護(13.4%)、訪問リハビリテーション(10.8%)、訪問介護(9.6%)などが比較的高い収支差率を示す一方、介護老人保健施設(0.6%)、地域密着型特定施設入居者生活介護(0.4%)、通所リハビリテーション(2.0%)など低水準のサービスもあります。
ただし、同じサービス内でも事業所単位で赤字・黒字が大きく分かれており、規模、地域、利用者数など個々の環境が収益に強く影響していることがうかがえます。
次の報酬改定に向けた重要な基礎資料
今回の調査は、介護事業の経営が全体として厳しい状況にあり、事業所間のばらつきが大きいことをデータで示しました。これらの結果は、令和8年度介護報酬改定に向けた政策判断の重要な基礎資料となります。介護の持続可能性を確保するためには、処遇改善、生産性向上、ICT活用など、多面的な支援と経営戦略が求められています。
参照元:厚生労働省 第42回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会資料、令和7年度介護事業経営概況調査結果の概要(案)、令和7年度介護事業経営概況調査 参考資料、令和7年度介護事業経営概況調査結果(案)





