厚生労働省は、令和7年度補正予算に基づき実施される「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」について、事業の取扱いを整理したQ&A(第1版)を公表しました。本Q&Aでは、基準月の考え方や補助金の使途、実施期限、根拠資料の取扱いなど、現場から寄せられやすい実務上の疑問点がまとめられています。
本記事では、内容を整理したうえで、特に実務担当者が注意したいポイントを中心に整理します。
この記事でわかること
- 賃金改善の対象となる職員の範囲(介護職以外も含む)
- 補助金を受けるための主な要件と根拠資料の整備ポイント
- 職場環境改善費として使える経費・使えない経費
目次
賃金改善の対象となる職員の範囲
本事業の対象となる「介護従事者」は、介護職員に限られていません。介護現場で働く職員として、介護職のほか、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、生活相談員、介護支援専門員などの専門職に加え、調理員や事務職なども含まれるとされています。
また、法人本部で勤務する職員であっても、補助対象となる介護サービス事業所の業務に従事していると判断できる場合には、賃金改善の対象に含めることが可能とされています。対象職員の範囲は想定よりも広い点に注意が必要です。
補助金を受けるための主な要件
本事業では、賃金改善や職場環境改善を行うだけでなく、一定の要件を満たしていることが前提となります。
特に重要なのが、以下の3点です。
ケアプランデータ連携システムへの加入
基準月時点および実績報告書の提出時点において、ケアプランデータ連携システム、または同等の機能・セキュリティを有すると認められたシステムに加入していることが求められます。
処遇改善加算の算定状況
基準月において処遇改善加算を算定していること、また、実績報告書の提出時点でも算定していることが要件とされています。実務上は算定期間の連続性に注意が必要です。
生産性向上推進体制加算
生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡを算定している場合は、その体制届出が根拠資料の対象となります。実績報告に備え、届出書類の整理が必要です。
これらの要件については、計画書や実績報告書の提出時に一律で資料提出を求められるわけではありませんが、根拠資料は事業所内で整備・保存しておく必要があります。
基準月と実施期限の確認ポイント
基準月は、原則として令和7年12月とされています。ただし、大規模改修や感染症の影響により12月の実績が著しく低い場合や、月遅れ請求となった場合、また令和8年1月から3月に新規開設された事業所については、令和7年12月から令和8年3月までの間で、事業所の判断により基準月を選択することが可能です。
また、賃金改善や職場環境改善の実施期限は、補助金の支給時期によって異なります。
- 令和8年3月末までに補助金を受給した場合:令和7年12月~令和8年3月末までに実施
- 令和8年4月以降に受給した場合:令和7年12月~各自治体が定める実績報告期限までに実施
賃金改善については、補助金の趣旨を踏まえ、できるだけ早期に実施することが望ましいとされています。実務上は早めの対応が安心です。
職場環境改善費の使い道に関する注意点
職場環境改善費として、PCやタブレットなどの機器購入費用は対象外とされています。対象外経費の把握が実務上のポイントです。
一方で、次のような経費は対象に含まれます。
- 業務の洗い出しや課題整理を行うための専門家派遣費用
- 業務改善に向けた検討会やプロジェクトチームの会議費
- 職場環境改善に資する研修費
ただし、法令で実施が義務付けられている研修で、職場環境改善とは趣旨が異なるものについては、本補助金の対象としては適切でないと整理されています。
対象外となる事業所と例外的な取扱い
計画書の提出時点で、休止または廃止が明らかになっている事業所は、原則として補助金の対象外です。ただし、合併や事業承継などにより新たに指定を受けた場合であっても、職員体制に変更がなく、実質的に事業が継続していると認められる場合には、補助金を活用することが可能とされています。該当する場合は、事前に都道府県への確認が重要です。
そのほかの実務上の留意点
本補助金は、全額を賃金改善または職場環境改善に充てることを前提としているため、債権譲渡は行わない取扱いとされています。また、同一の経費について複数の補助金を受けることはできませんが、自治体の重点支援地方交付金などを活用し、本事業による賃上げに上乗せする形での活用は可能とされています。補助金の使途管理には十分な注意が必要です。
Q&Aから見える本事業のポイント
今回公表されたQ&Aでは、基準月の考え方や補助金の使途、実施期限など、事業所から寄せられやすい実務上の疑問点が整理されています。本事業は、賃上げと職場環境改善を同時に進めるための制度として設計されており、各事業所においては、都道府県の実施要綱を確認しながら、計画的な対応が求められます。
参照元:厚生労働省 介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業に関するQ&A(第1版)





