「今は元気な母の、将来の介護に不安を抱えている」「今から介護予防に努めたいので利用できるサービスや内容を把握したい」と思っている方はいませんか?
一般介護予防事業は、要介護状態や要支援状態になるおそれの高い65歳以上の高齢者(介護認定を受けていない方)を対象に、介護予防の取り組みを支援する事業です。介護予防の普及啓発や地域での介護予防活動の支援など、様々な取り組みが行われています。
この記事では、一般介護予防事業の内容や利用の流れについて詳しく解説しています。介護予防に関心のある方や、実際に事業の利用を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
【介護予防・日常生活支援総合事業】一般介護予防事業とは?
一般介護予防事業とは、高齢者が要介護状態等になる前に身体機能の低下を予防し、健康寿命を伸ばすための取り組みです。介護認定を受けていない65歳以上であれば、誰でも事業の対象となります。
また、一般介護予防事業は『介護予防・日常生活支援総合事業』の取り組みの一つです。
介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の取り組みとは

介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)は、2015年(平成27年)の介護保険法改正によってスタートした事業です。
それまでは、要支援1・2の人を対象とした「介護予防訪問介護」や「介護予防通所介護」は、全国一律の基準で実施されていました。そこで、より地域の実情に合ったサービスを提供できるように、市区町村ごとにサービス内容や利用方法を決められるようにしたのが、総合事業です。
総合事業は、更に2つの事業に分けられます。
- 介護予防・生活支援サービス事業
- 一般介護予防事業
2つの事業は、どちらも高齢者の自立した生活を支援し、介護が必要となる状態を予防することを目的としていますが、対象者が異なります。
本記事では、『一般介護予防事業』について詳しく説明しています。『介護予防・日常生活支援サービス事業』について知りたい方は、こちらのページをご覧ください。
なぜ一般介護予防事業が高齢者に必要なのか?

一般介護予防事業が必要な理由は3つあります。
- 高齢化社会の到来
- 介護予防の重要性
- 早期の介入
それぞれについて説明していきます。
①高齢化社会の到来
日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいます。子どもが少なくなり、社会を支える働き手となる人が減っている一方で、高齢者の人口は増加しています。
この状況は、社会保障制度への大きな負担となり、経済成長への影響も心配されています。健康で自立した生活を送れる期間を延ばすことは、もはや個人の問題にとどまらず、国家レベルで取り組むべき課題と言えます。
②介護予防の重要性
介護が必要な状態になると、本人のQOL(生活の質)が著しく低下し、尊厳ある生活を送ることが困難になるケースも少なくありません。寝たきりや認知症など、重度の介護状態になると、医療費や介護費が膨大になり、経済的な負担が家族や社会に及ぶことも考えられます。さらに、介護者の負担も大きく、心身ともに疲弊してしまうケースも少なくありません。
③早期の介入
介護が必要な状態になる前に、体力づくりや栄養改善、社会参加など、様々な予防策を講じることで、要介護状態を遅らせ、その進行を緩やかにすることができます。例えば、定期的な運動は、筋力や柔軟性を維持し、転倒リスクを減らす効果が期待できます。
また、バランスの取れた食事は、健康な体づくりを支え、生活習慣病の予防にも繋がります。さらに、地域社会とのつながりを深めることで、孤独感を解消し、精神的な健康を維持することも大切です。
一般介護予防事業の目的

一般介護予防事業の目的は、大きくわけて3つあります。
- 要介護状態の予防
- 生活機能の改善
- 社会参加の促進
それぞれ、詳しく説明していきます。
①要介護状態の予防~より健康的で元気な毎日へ~
一般介護予防事業は、単に「運動をする」といった行為にとどまりません。
- 体力づくりを通して筋肉量を維持し、転倒リスクを減らす
- 栄養改善を通して、バランスの取れた食事を摂り基礎代謝を維持する
- 認知機能の維持を通して、物忘れや判断力の低下を防ぐ
これらの総合的な取り組みによって、要介護状態へとつながる身体機能の低下を未然に防ぎ、健康寿命の延伸を目指します。
②生活機能の改善~高齢者の自立した生活をサポート~
日常生活を送る上で必要な『食事』『着替え』『入浴』などの動作を、スムーズに行えるようにするための支援を行います。
具体的には、運動療法や日常生活動作訓練を通して身体機能を回復させ、自立した生活を長く続けられるようサポートします。また、住宅改修など、住環境の整備も行うことで、より安全で快適な暮らしを送れるように支援します。
③社会参加の促進~地域とのつながりを深める~
地域コミュニティへの自主的な参加は、高齢者の心身に良い影響を与えます。ボランティア活動や趣味の会など、様々な活動に参加することで人との交流が生まれ、孤独感の解消につながるでしょう。また、新たな目標を持つことで生活に張り合いが生まれ、意欲の向上にも繋がります。
一般介護予防事業では、こうした社会参加を促進することで、高齢者が生きがいを感じながら、地域の一員として活躍できるよう支援します。
一般介護予防事業の5つの事業内容

一般介護予防事業は市区町村が主体となって行われており、大きく分けると以下の5つの事業に分けられます。
- 介護予防把握事業
- 介護予防普及啓発事業
- 地域介護予防活動支援事業
- 一般介護予防事業評価事業
- 地域リハビリテーション活動支援事業
それぞれの事業について、詳しく見ていきましょう。
①介護予防把握事業
介護予防把握事業は、閉じこもりがちな高齢者や心身の状態が低下している高齢者を早期に発見し、必要な支援につなげるための事業です。具体的には、以下のような取り組みが行われます。
- 基本チェックリスト(※1)を活用し、健康状態や生活状況を把握する
- 保健師などが高齢者の自宅を訪問し、困りごとや心身の状態について詳細を把握する
- 医療機関からの情報提供により把握する
- 民生委員や地域住民からの情報提供により把握する
把握した情報は、地域包括支援センターや、ケアマネージャーと共有し、必要な支援につなげます。
(※1)基本チェックリストとは、日常生活を送る上で必要な動作や、認知機能、精神状態などについて、ご自身がどの程度できているかなどを自己評価するツールのことを言います。
②介護予防普及啓発事業
介護予防普及啓発事業は、地域住民一人ひとりに介護予防の大切さを理解してもらい、自分自身で健康づくりに取り組めるように促すことを目的とした事業です。具体的には、以下のような取り組みが行われています。
- パンフレット等の作成や配布
- 講演会や相談会の開催
- 介護予防教室やイベントの開催
- 介護予防事業の実施記録などを管理するための媒体を配布 など
正しい知識を普及することにより、高齢者自身が積極的に介護予防に取り組む意識を高めていきます。
③地域介護予防活動支援事業
地域介護予防活動支援事業は、地域住民が主体的に介護予防活動に取り組めるよう、自治体などが支援する事業です。要介護状態になる前に、地域住民が主体的に健康づくりに取り組み、互いに支え合いながら暮らせるような地域社会の実現を目指しています。具体的には、以下のような取り組みが行われています。
- 介護予防に関するボランティアを育成するための研修
- 介護予防に役立つ多様な地域活動組織の育成や支援
- 健康体操教室や栄養バランス教室など、介護予防に役立つ地域活動の実施
- ボランティア等へのポイント付与 など
このように、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を継続できるよう、介護予防につながる地域活動を市区町村が支援することで、地域全体で支え合う体制づくりにつながります。
④一般介護予防事業評価事業
一般介護予防事業評価事業とは、地域で行われている様々な介護予防事業の効果を評価し、より良い事業へと改善していくための取り組みです。単に事業を行っているだけでなく、その事業が本当に効果を上げているのか、地域住民のニーズに合っているのかなどを客観的に評価することで、より効果的な介護予防活動を推進することを目的としています。
評価の対象となる事業は、地域で行われている様々な介護予防事業です。具体的には、以下のような事業が挙げられます。
- 健康体操教室
- 栄養相談
- 認知機能向上教室
- 口腔機能向上教室
- サロン活動
- ウォーキング・散策
- ふれあい運動
評価方法は、アンケート調査や出席状況等の記録の分析、またインタビュー調査で情報を収集することもあります。
⑤地域リハビリテーション活動支援事業
地域リハビリテーション活動支援事業は、地域に住む高齢者の方々が住み慣れた地域で安心して暮らすことができるように、リハビリテーションの専門家が地域に密着して支援を行う事業です。
通所、訪問、地域ケア会議、サービス担当者会議、住民主体の通いの場などへ、リハビリテーション専門職等の関与を促進していきます。具体的には、以下のような取り組みが行われています。
- 住民主体の体操教室に理学療法士を派遣し、体力測定や元気度チェックを実施する
- デイサービス事業所向けに理学療法士を派遣し、研修会を実施する
- ヘルパー向けに重度化防止の技術指導を行う
リハビリテーション専門職等による定期的な関りにより、利用者の自立支援や介護予防に役立つ正しい理解の促進にもつながります。
【65歳以上の方】各地域の一般介護予防事業の例

全国の各自治体では、介護予防のための様々な取り組みが行われています。ここでは、東京都を例に、3つの取り組みを紹介していきます。
※各地域のホームページでは、さらに詳しく一覧で確認できます。
(例1) 東京都大田区
東京都大田区では、認知症予防や社会参加の活動を支援する事業など、幅広く取り組んでいます。
| 主な取り組みや目的 | 具体的な内容 |
| 認知症予防 | ・認知症予防体操 ・認知症予防朗読講座 |
| 教室・講座 | ・いきいき公園体操 ・足腰らくらく水中ウォーク ・膝・腰痛ストップ体操 ・音楽にのせてフィットネス ・食から実践!フレイル予防の食生活講座 ・口から始める健康講座 等 |
| その他 | ・体力測定会 ・介護予防ポイント制度シニアボランティア ・地域リハビリテーション活動支援事業 ・高齢者生活支援(絆サポート)担い手登録説明会 等 |
参考元:東京都大田区ホームページ(2024年10月4日現在)
(例2) 東京都稲城市
東京都稲城市では、介護予防・栄養指導等を目的とした各教室や、ボランティア活動を通した介護予防に取り組んでいます。
| 主な取り組みや目的 | 具体的な内容 |
| 教室・講座 | ・介護予防体操教室 ・転倒骨折予防教室 ・食生活改善教室 ・口腔機能向上教室 ・複合型教室 |
| その他 | ・介護支援ボランティア制度 ・介護予防ガイドブック |
参考元:東京都稲城市ホームページ(2023年12月1日現在)
(例3) 東京都目黒区
東京都港区では、栄養や運動に関する各教室が行われています。また、オンラインによる講話や運動も取り入れています。
| 主な取り組みや目的 | 具体的な内容 |
| 教室・講座 | ・介護予防まるごと教室 ・お口と食の健康体操教室 ・ひざの痛み予防講習会 ・オフラインでフレイル予防 等 |
| その他 | ・介護予防出前講座 ・フレイルチェック会 ・シニアの部活介護予防通信 等 |
参考元:東京都目黒区ホームページ(2024年4月25日現在)
事例としてあげた3つの自治体以外にも、全国の市区町村で独自の取り組みが行われています。お住いの地域の活動や事業内容については、市区町村の窓口または電話でも問い合わせることが可能です。
一般介護予防事業を利用する流れ

一般介護予防事業は、65歳以上の全ての高齢者が利用可能なサービスです。では、実際に利用する際はどのような手続きを踏めばよいのでしょうか。ここでは、一般介護予防事業の利用の流れについて、順を追って説明します。
①市区町村の窓口へ相談する
一般介護予防事業の利用を検討している方は、まず住んでいる市区町村の介護保険担当窓口に相談しましょう。
総合事業には、一般介護予防事業以外に『介護予防・生活支援サービス事業』もあります。そのため、明らかに介護予防・生活支援サービス事業の対象外であると判断された場合は、基本チェックリストを用いることもなく、一般介護予防事業について説明を受けることができます。
介護予防・生活支援サービス事業の対象外と判断されなかった場合は、要介護認定申請や基本チェックリストの実施について案内されます。
②基本チェックリストの実施
※お住まいの地域によっては必ずしもではない
基本チェックリストを実施することになった場合は、その結果によって一般介護予防事業の利用が適切かどうかを判断できます。基本チェックリストでは、身体機能、栄養状態、口腔機能、閉じこもり、認知症、うつ病などに関する25項目の質問に答えていきます。
③要介護状態区分に非該当(一般介護予防事業の対象)
基本チェックリストの結果、要支援・要介護状態に該当しないと判定された場合、一般介護予防事業の対象者となります。一般介護予防事業の対象者は、心身の状態が安定しており、リスクはあるものの現在は要支援・要介護状態ではない方々です。この事業を利用して、要介護状態になることを予防していくことが目的となります。
④サービス利用開始
対象者と判定された後は、実際に一般介護予防事業のサービスを利用していくことになります。一般介護予防事業には、体操教室や認知症予防教室など、さまざまなプログラムが用意されています。地域によって内容は異なるため、詳細は市区町村の窓口で確認しましょう。
事業への参加は、原則として本人の希望に基づいて行われます。必要に応じて、家族や地域の支援者と相談しながら、適切なサービスを選択していくとよいでしょう。
介護予防教室や講座を活用し健康で元気な生活を

一般介護予防事業は、要支援・要介護状態に該当しないと判断された65歳以上の方々が対象の事業です。高齢者の自立した生活を支援し、要介護状態への進行を防ぐことを目的としています。
心身の状態に不安を抱えている方も少なくありません。サービスの利用により、心身の状態を維持・改善し、住み慣れた地域で元気に暮らし続けることが期待されています。
一般介護予防事業の内容は、利用できるサービスの種類や内容も市区町村によって異なり複雑です。そのため、利用を検討する際は、まずは住んでいる地域の窓口に問い合わせ、事業の説明を受けることから始めましょう。
参考元:「厚生労働省」介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(概要)、「厚生労働省」介護事業所・生活関連情報検索、「厚生労働省」一般介護予防事業について、「厚生労働省」介護予防の取組強化・推進のための市町村マニュアル





