社会福祉施設職員の退職金を支える「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」について、厚生労働省の検討会(令和8年4月23日)で現状と課題が示されました。制度の持続性に関わる重要な論点が明らかになっています。
目次
この記事でわかること
- 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の掛金が3年連続で引き上げられている背景と、給付増を招く3つの要因
- 支払準備金の取り崩しによる掛金抑制の現状と、残高が3年で約4割減少している財政上の課題
- 厚労省検討会の今後のスケジュールと、制度の持続可能性に関する議論の方向性
制度の概要|社会福祉法人が任意加入する退職金制度
本制度は、社会福祉法人が任意で加入する退職金共済で、(独)福祉医療機構(WAM)が運営しています。財政方式は賦課方式で、積立ではなく、その年度の掛金で当年度の退職金を賄う仕組みです。
加入法人は約16,678法人(全体の約8割)、加入職員は約88万人にのぼります。
掛金は3年連続で引き上げ|法人負担の増加
近年、掛金は3年連続で引き上げられている状況です。公費助成のない介護・障害分野では法人が全額負担となります。
- 公費助成なし:133,500円 → 136,500円 → 142,500円 → 148,500円
- 公費助成あり:44,500円 → 45,500円 → 47,500円 → 49,500円
人件費に加えた負担増として、経営への影響は小さくありません。
給付増の背景|3つの要因
退職手当の支給総額は増加傾向にあり、主な要因は以下の3点です。
- 退職者数の増加(介護保険制度創設前後の加入世代が退職期)
- 平均在籍期間の長期化(75か月→89か月)
- 賃金上昇
特に、2040年頃に退職のピークを迎える見込みとされており、今後も給付増が続く可能性があります。
支払準備金は3年で約4割減
掛金の急激な上昇を抑えるため、支払準備金の取り崩しが続いています。残高は令和3年度末の505億円から令和6年度末には294億円まで減少しました。これにより年間約13,500円分の掛金上昇が抑制されてきたとされています。
離職率は低水準|制度の一定の効果も
産業計・介護職員計・福祉医療機構退職手当共済制度加入法人の離職率の比較では、退手共済加入法人の離職率は10.9%で、介護職員全体(12.4%)、産業計(14.2%)より低い水準になりました。
退職金制度が人材定着に一定の役割を果たしている可能性も示唆されます。
検討会のスケジュール|夏にかけて議論、秋にとりまとめへ
今後の検討会では、段階的に議論が進められる予定です。
- 4月23日:制度の現状・課題・検討の視点を整理
- 5月〜夏頃:有識者や構成員によるヒアリング・議論
- 秋頃:とりまとめ(福祉部会へ報告予定)
制度の方向性はこの議論を踏まえて整理される見込みです。
今後の論点|制度の持続可能性
検討会では、今後の制度の在り方として、掛金のさらなる見直しや給付水準の調整、持続可能性の確保などが議論される可能性があるでしょう。
現時点で具体的な方向性は示されていませんが、介護・障害分野の事業者にとっては経営への影響も含め、引き続き動向を注視する必要がありそうです。
参照元:厚生労働省 資料4 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の現状及び課題について、資料3 今後の検討会のスケジュール(案)

執筆者紹介
介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。
介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。
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