介護保険施設やショートステイを利用する際には、食費や居住費(滞在費)が自己負担となります。
一定の要件を満たす低所得者については、「補足給付(特定入所者介護サービス費)」により、これらの費用負担を軽減する制度が設けられています。
厚生労働省は、「介護保険法施行規則の一部を改正する省令等」(令和8年厚生労働省令第105号・令和8年厚生労働省告示第253号)を公布し、補足給付の所得区分を判定する際の公的年金等収入金額などの基準額を見直しました。
新たな基準は、2026年8月1日から適用されます。
目次
この記事でわかること
- 補足給付の公的年金等収入金額などの判定基準が、2026年8月から80万9,000円→82万6,500円に引き上げられること
- 引き上げの背景は老齢基礎年金(満額)が従来の基準額を超えたためであること
- 収入基準だけでなく、住民税非課税要件や預貯金等の資産要件も引き続き必要であること
補足給付とは
補足給付(特定入所者介護サービス費)は、介護保険施設や短期入所生活介護(ショートステイ)などを利用する低所得者の食費や居住費(滞在費)の負担を軽減する制度です。
対象となるためには、所得区分だけでなく、原則として本人および世帯全員が住民税非課税であること(別世帯の配偶者がいる場合は配偶者も非課税であること)などの要件を満たす必要があります。
また、預貯金などの資産額にも基準が設けられており、収入基準だけで給付対象となるわけではありません。
公的年金等収入金額の基準額を引き上げ
今回の改正は、令和7年の老齢基礎年金(満額)が80万9,000円を超えたことを踏まえ、低所得者の自己負担に影響が出ないよう基準額を引き上げるものです。
補足給付の対象となる所得区分を判定する際の、公的年金等収入金額などの基準額が引き上げられます。
| 判定基準 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 公的年金等収入金額など | 80万9,000円 | 82万6,500円 |
判定基準は1万7,500円引き上げられ、2026年8月以降は新しい基準で補足給付の所得区分が判定される予定です。
なお、判定に用いる金額は、公的年金等収入金額だけで決まるものではなく、合計所得金額などを含め、介護保険法施行規則で定められた方法により算定されます。
資産要件も引き続き認定条件
今回見直されたのは収入基準額ですが、補足給付の認定要件そのものが変更されたわけではありません。
引き続き、預貯金や有価証券などの資産(現金等)の合計額が一定額以下であることも必要です。市町村は、収入や所得だけでなく、資産額についても確認した上で補足給付の認定を行います。
そのため、公的年金等収入金額が82万6,500円以下であっても、資産要件などを満たさない場合は補足給付の対象とならない点に注意が必要です。
改正の対象となる主な規定
今回の基準額の引き上げは、補足給付に関する複数の規定へ反映されています。
- 要介護被保険者の特定入所者介護サービス費の支給基準(施行規則第83条の5)
- 居宅要支援被保険者の特定入所者介護予防サービス費の支給基準(施行規則第97条の3)
- 要介護旧措置入所者に関する準用規定(施行規則第172条の2)
- 食費・居住費・滞在費の負担限度額に関する各告示
これらの規定では、公的年金等収入金額などの判定基準が80万9,000円から82万6,500円へ改められています。
2026年8月1日から適用
改正省令および告示は、2026年8月1日に施行される予定です。
また、経過措置として、2026年8月以降に提供される介護サービス分から新しい基準が適用されます。一方、2026年7月以前に提供されたサービスについては、従来の基準によって判定されます。
利用時期によって適用される基準が異なる点には注意が必要です。
補足給付の利用を検討している方は基準を確認しよう
今回の改正では、補足給付の対象となる所得区分の判定に用いる公的年金等収入金額などの基準が82万6,500円へ引き上げられます。
一方で、補足給付の認定には住民税非課税であることや預貯金などの資産要件も引き続き設けられています。そのため、収入基準だけで対象となるかを判断することはできません。
介護保険施設やショートステイの利用を予定している方やその家族は、今回の改正内容を確認するとともに、自身が補足給付の対象となるかについては、市町村や担当のケアマネジャーに相談するとよいでしょう。
参照元:厚生労働省 介護保険法施行規則の一部を改正する省令等の公布について(通知)

「福祉現場の架け橋」として、20年の経験から心に寄り添うヒントを。
介護福祉士および保育士として、高齢者介護から障がい福祉、保育まで、世代を問わず20年以上福祉の最前線に携わる。現場での豊富な実践経験を活かし、単なる制度解説に留まらない「介護する側・受ける側」双方の気持ちに寄り添った発信が持ち味。複雑な介護保険制度も、家族の視点に立って分かりやすく紐解きます。
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