令和8年度(2026年度)の介護報酬改定により、「介護職員等処遇改善加算」は大きく見直されました。今回の改定では、賃上げの強化に加え、対象サービスの拡大や提出ルールの整理が行われています。従来との違いを正しく把握することが重要です。
本記事では、厚生労働省通知およびあきる野市の案内をもとに、制度の概要から提出期限、実務上の注意点までをわかりやすく解説します。
目次
この記事でわかること
- 令和8年度の処遇改善加算における賃上げの内容と、対象職種・対象サービスの拡大ポイント
- 計画書・体制届・実績報告書の提出期限と、算定開始時期ごとのスケジュール
- あきる野市独自の提出ルールと、指定状況に応じた提出先の整理方法
制度の基本|厚生労働省通知の確認
令和8年度の介護職員等処遇改善加算は、厚生労働省が公表した通知に基づき運用されています。制度の具体的な内容や算定要件、事務処理手順については、「介護保険最新情報Vol.1479」をご確認ください。
この通知では、処遇改善加算の基本的な考え方に加え、計画書・実績報告書の様式や提出方法、運用上の留意点などが体系的に整理されています。
また、今回の改定では、介護分野における人材確保を目的として、賃上げや職場環境改善を一体的に進める方針が明確に打ち出されている点も重要です。
賃上げの内容|最大1.9万円の引き上げも
令和8年度の処遇改善加算では、段階的な賃上げの仕組みが導入されており、従来よりも手厚い処遇改善が可能となっています。
まず基本となるのは、介護従事者を対象とした月額1.0万円相当(約3.3%)の賃上げです。これにより、職種を問わず幅広い職員の処遇改善が図られます。
さらに、ICTの活用や業務改善など、生産性向上・協働化に取り組む事業所に対しては、追加で月額0.7万円相当(約2.4%)の上乗せ措置が設けられています。
これらを合計すると、定期昇給分も含めて、介護職員一人あたり最大で月額1.9万円相当(約6.3%)の賃上げが実現する設計です。
このように、単なる賃上げにとどまらず、「取り組み次第でさらに処遇が向上する」仕組みとなっている点が、今回の改定の大きな特徴です。
令和8年度の主な変更点
令和8年度の介護職員等処遇改善加算では、制度の対象や評価の仕組みにおいて大きな見直しが行われています。ここでは、実務に直結する主な変更点を整理します。
対象職種の拡大
これまで主に介護職員を対象としていた処遇改善加算ですが、令和8年度からは介護従事者全体へ対象が拡大されました。
これにより、介護現場で働く幅広い職種に対して処遇改善を行うことが可能となり、事業所全体での人材確保・定着につながる仕組みとなっています。
対象サービスの拡大(令和8年6月〜)
これまで加算の対象外だった一部サービスについても、令和8年6月以降、新たに対象として追加されました。
具体的には、以下のサービスが該当します。
- 居宅介護支援
- 介護予防支援
- (介護予防)訪問看護
- (介護予防)訪問リハビリテーション
これにより、ケアマネジャーや医療系サービスに従事する職員の処遇改善も制度の対象となっています。
生産性向上と連動した加算区分の導入
今回の改定では、従来の加算区分に加えて、生産性向上や協働化の取り組みを評価する仕組みが強化されました。
具体的には、以下のような取り組みが評価対象となります。
- ICT機器や介護ソフトの導入
- 業務の見える化や効率化
- ケアプランデータ連携の活用
- 法人間の連携や共同化の推進
これらに取り組む事業所は、上位区分(Ⅰロ・Ⅱロなど)を算定できる可能性があり、より高い加算を受けることができます。
このように、令和8年度の改定は「対象の拡大」と「取り組みに応じた評価」の両面で制度が進化している点が特徴です。
提出書類と様式
処遇改善加算を算定するためには、所定の様式に基づいた書類の提出が必要です。ここでは、主な提出書類と入手先を整理します。
①処遇改善計画書・実績報告書
処遇改善加算を算定する場合は、年度ごとに「処遇改善計画書」を提出し、あわせて年度終了後には「実績報告書」の提出が必要となります。
様式については、東京都福祉保健局の「介護職員等処遇改善加算について」のページをご確認ください。
②体制届(重要)
体制届は、以下の場合に提出が必要です。
- 加算を新たに算定する場合
- 加算の区分を変更する場合
様式はサービス種別ごとに用意されており、該当するものを使用します。
体制届の様式については、以下のリンクより該当するサービス区分をご確認ください。
なお、体制届は法人単位ではなく事業所単位で作成・提出する必要があるため、提出時には対象事業所の整理に注意が必要です。
提出期限一覧
処遇改善加算の提出期限は、算定開始時期やサービス種別によって異なります。特に年度当初や新規算定時は期限が重なるため、事前に整理しておくことが重要です。
①4月・5月から加算を取得する場合
| 区分 | 体制届 | 提出要否 | 計画書 | 実績報告書 |
|---|---|---|---|---|
| 令和8年4月・5月分 | 令和8年4月15日まで | 【必要】新規算定・区分変更時【不要】既存で変更なし | 令和8年4月15日まで | 令和9年7月30日まで |
本来、体制届の提出期限はサービス種別ごとに異なり、居宅系サービスは前月15日、施設系サービスは当月1日が原則です。
ただし、令和8年度は計画書の提出期限に合わせて、4月15日までの提出を認める柔軟な対応が取られています。
②6月以降に加算を取得する場合
| 区分 | 体制届 | 提出要否 | 計画書 | 実績報告書 |
|---|---|---|---|---|
| 令和8年6月以降分 | 算定開始月の前月15日まで | 【必要】新規算定・区分変更時【不要】既存で変更なし | 算定開始前々月の末日まで | 令和9年7月30日まで |
③新設サービスのみを運営する場合(6月開始)
| 区分 | 体制届 | 計画書 | 実績報告書 |
|---|---|---|---|
| 令和8年6月分 | 令和8年6月15日まで | 令和8年6月15日まで | 令和9年7月30日まで |
④7月以降に算定する場合(新設サービス)
| 区分 | 体制届 | 提出要否 | 計画書 | 実績報告書 |
|---|---|---|---|---|
| 令和8年7月以降分 | 算定開始月の前月15日まで | 【必要】新規算定・区分変更時【不要】既存で変更なし | 算定開始前々月の末日まで | 令和9年7月30日まで |
なお、実績報告書の提出期限は、原則として「最終の加算支払月の翌々月末」とされています。
そのため令和8年度分は、実務上令和9年7月末が基本期限となりますが、自治体によっては日付指定となっている場合もあるため、必ず提出先の案内を確認するようにしましょう。
あきる野市の提出ルール
あきる野市における処遇改善加算の提出ルールは、事業所の指定状況によって対応が異なる点が大きな特徴です。提出方法を誤ると再提出となる可能性もあるため、事前に整理しておきましょう。
①市指定サービスがある場合は提出が必要
あきる野市から指定を受けているサービス(地域密着型サービス・総合事業など)については、毎年度、計画書および実績報告書の提出が必要です。
②都道府県指定も受けている場合
東京都指定のサービス(介護給付・予防給付)もあわせて運営している場合は、東京都へ提出した書類の写しをあきる野市へ提出することで対応できます。この場合、あきる野市向けに新たに書類を作成する必要はありません。
なお、令和8年6月から新設される(介護予防)訪問看護・(介護予防)訪問リハビリテーションについては、あきる野市ではなく東京都への提出となります。居宅介護支援・介護予防支援はあきる野市への提出です。
③他市町村に事業所がある場合
あきる野市以外の市区町村に事業所があり、その自治体の指定を受けている場合は、所在地の市区町村へ提出した書類の写しを、あきる野市にも提出する必要があります。
④法人一括申請でも市への提出が必要なケースあり
法人で一括申請を行う場合でも、
- 居宅介護支援
- 介護予防支援
- 地域密着型サービス
- 総合事業
を含む場合は、該当する区市町村への提出が必要です。
⑤対象外サービスに注意
あきる野市の総合事業においては、訪問型サービスA(請求コードA3)は処遇改善加算の対象外とされています。このため、当該サービスについては加算の算定ができない点に注意が必要です。
このように、あきる野市では写しの提出で対応できるケースが多い一方で、指定区分によって提出先が異なります。そのため、提出前に内容を十分に確認しておくことが重要です。
まとめ
令和8年度の介護職員等処遇改善加算は、従来制度の延長ではなく、内容が大きく見直された重要な改定となっています。
特に、賃上げの水準が最大で月額1.9万円相当まで引き上げられる点や、対象職種・対象サービスの拡大は、現場に与える影響が大きいポイントです。
制度を正しく活用するためには、単に概要を理解するだけでなく、自事業所のサービス区分や指定状況に応じて必要な対応を整理し、早めに準備を進めることが重要です。
今回の改定を、職員の処遇改善と人材定着につなげるための機会として、確実な運用を行っていきましょう。
参照元:あきる野市 【令和8年度】介護職員等処遇改善加算について(事業者向け情報)、介護保険最新情報Vol.1479、地域密着型サービス、介護予防・日常生活支援総合事業、東京都 介護職員等処遇改善加算について

執筆者紹介
「福祉現場の架け橋」として、20年の経験から心に寄り添うヒントを。
介護福祉士および保育士として、高齢者介護から障がい福祉、保育まで、世代を問わず20年以上福祉の最前線に携わる。現場での豊富な実践経験を活かし、単なる制度解説に留まらない「介護する側・受ける側」双方の気持ちに寄り添った発信が持ち味。複雑な介護保険制度も、家族の視点に立って分かりやすく紐解きます。





