一般社団法人日本介護支援専門員協会は、令和8年3月に「令和7年度調査報告書」を公表しました。
報告書の第2部では、居宅介護支援事業所におけるICT活用の実態について調査が行われています。
介護現場では業務効率化や人材不足への対応策としてICT活用への期待が高まっていますが、実際にはどのような課題があるのでしょうか。本調査から見えてきた現状を紹介します。
目次
この記事でわかること
- 居宅介護支援事業所におけるICT導入の障壁は、ITスキル不足や導入費用といった環境面の課題が上位であり、ICTへの拒否感が主な要因ではないこと
- ICT導入の効果を実感できるかどうかは、導入の有無よりも実際の活用度に左右されること
- 協会が提言する今後の方向性として、機器の導入支援から活用支援への転換や補助金制度の周知強化など5つの具体策が示されていること
調査の概要
本調査は、日本介護支援専門員協会の会員のうち、居宅介護支援事業所に勤務する介護支援専門員2,000人を無作為抽出して実施されました(有効回答数1,266人、有効回答率64.9%)。
調査では、ICTツールの導入状況や活用目的、導入による効果、導入時の課題、今後の導入意向や支援ニーズなどについて把握し、現場の実態を明らかにすることを目的としています。
介護現場ではICT導入が推進されている一方で、事業所の規模や地域、職員のICTリテラシーなどによって活用状況に差があることも背景として挙げられています。
ICT導入の現状と効果の実感
調査結果からは、ICTに対する強い拒否感が現場全体に広がっている状況は確認されませんでした。むしろ、多くの事業所がICT活用の必要性や有効性を認識していることがうかがえます。
ICT導入による効果として、他の項目と比較して最も実感されていたのは業務効率化でした。
ただし、「感じる」「非常に強く感じる」と回答した割合は合計47.1%にとどまり、「どちらともいえない」も34.9%を占めています。
ICTツールの利便性を高く評価している事業所ほど効果を実感する傾向が見られており、導入の有無だけでなく、実際にどの程度活用できているかが重要であることが示されました。
導入が進まない理由~人手不足・時間不足が上位
ICT導入の障壁として最も多く挙げられたのは「職員のITスキル不足」(68.6%)で、次いで「導入費用」(64.3%)が上位を占めました。
このほか、「導入後の運用負荷」「セキュリティとプライバシーの問題」「経営者・管理者の理解不足」なども課題として挙がっています。
また、自由記述では「ICTを学ぶ時間がない」「研修の機会が少ない」といった声も多く見られました。
注目すべき点は、ICTに対する否定的な意識が主な障壁ではないことです。現場では日々の業務に追われ、新たなシステムを学習したり運用したりする余裕がない状況が課題となっています。
つまり、ICT導入の課題は個人の意識よりも、人材や時間、教育機会といった環境整備の問題である可能性が今回の調査から示されました。
補助金制度の認知度と活用の関係
調査では、ICT導入に関する補助金制度を認知している事業所ほど、ICT活用が進んでいる傾向も確認されました。
そのため、単に補助制度を用意するだけではなく、制度の存在や活用方法について現場へ十分に情報が届いているかが重要な課題といえます。必要な支援策があっても、知られていなければ活用にはつながりません。
協会が示した5つの提言
報告書では今後の方向性として、主に次の5点が提言されています。
- ICT機器の導入支援から活用支援への転換
- 介護支援専門員のICTリテラシー向上支援
- 補助金制度や支援策の周知強化
- ICT活用とケアの質向上との接続
- ICT普及における「必要性の啓発」から「活用できる環境整備」への政策的視点の転換
単なる機器導入ではなく、現場で活用し続けられる仕組みづくりが求められていることがわかります。
ケアマネジメントの質向上につながるICT活用へ
今回の調査からは、居宅介護支援事業所におけるICT活用の課題は「ICTへの抵抗感」よりも、「活用するための環境整備」にある可能性が示されました。
人材不足や業務多忙の中でICTを定着させるためには、研修機会の確保や管理者の理解促進、補助制度の周知など、継続的な支援が欠かせません。
今後は、ICTを単なる業務効率化の手段として捉えるだけでなく、介護支援専門員が利用者支援により多くの時間を確保し、ケアマネジメントの質向上につなげるための基盤として活用していくことが期待されます。
参照元:一般社団法人日本介護支援専門員協会 令和7年度調査報告書

執筆者紹介
介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。
介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。
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