介護支援専門員(ケアマネジャー)の確保や定着が大きな課題となる中、日本介護支援専門員協会は「介護支援専門員の人事評価制度に関する実態調査」の結果を公表しました。
調査では、居宅介護支援事業所における人事評価制度の導入状況や運用方法、評価に対する納得度などが明らかになっています。
今回の調査からは、人事評価制度の有無だけでなく、「どのように運用するか」が職員の納得感や人材育成に大きく影響していることが見えてきました。
目次
この記事でわかること
- ケアマネジャーの人事評価制度は約半数の事業所で導入されているが、法人規模や運営主体によって導入率に大きな差がある
- 評価制度の主な目的は処遇決定であり、ケアマネジャー特有の数値化しにくい業務をどう評価するかが共通の課題となっている
- 評価結果を丁寧にフィードバックしている事業所ほど職員の納得度が高く、制度の”有無”よりも”運用の質”が重要である
調査の概要
本調査は、日本介護支援専門員協会が令和7年9月から10月にかけて実施したものです。人事評価を行う管理者など947人を対象とした調査では707人が回答し、有効回答率は74.7%でした。
調査の目的は、居宅介護支援事業所における人事評価制度の実施状況や課題、人材育成との関係を把握し、今後の制度改善や支援策の検討につなげることです。
人事評価制度の導入状況~事業所規模で大きな差
調査によると、「運用している(定期的に実施)」と回答した事業所は44.4%、「一部職員のみ対象に運用している」は9.8%でした。
一方で、「運用していない」は39.1%に上っており、導入状況には大きなばらつきがみられることが分かります。
報告書では、人事評価制度の導入状況に大きく影響しているのは地域ではなく、法人の規模や組織体制であると分析しています。
特に法人全体の職員数による差は顕著でした。
- 職員20人未満の法人:15.2%
- 職員500人以上の法人:67.0%
大規模法人ほど制度導入が進んでいる一方、小規模法人では導入率が低い傾向が見られました。
また、法人種別でも違いが確認されています。
- 社会福祉法人:55.3%
- 医療法人:57.4%
- 民間企業:33.5%
社会福祉法人や医療法人では半数を超える事業所が制度を運用しているのに対し、民間企業では3割程度にとどまっています。
一方で、市区町村の人口規模や都市規模による大きな差は見られず、人事評価制度の導入は地域特性よりも法人の経営基盤や組織体制の影響を受けやすいことが示されました。
制度の目的は「処遇決定」が最多~評価の難しさが共通課題
評価制度の導入理由のうち、最も重視する理由を1つだけ選ぶ設問では「処遇決定のため」が40.1%で最多でした。次いで「組織目標の浸透・連動」が19.8%、「人材の定着・離職防止」が13.3%となっています。
評価結果の活用方法としても、「賞与への反映」が62.8%、「給与・手当への反映」が56.0%と高く、処遇との連動が評価制度の主要な役割となっていることが分かります。
一方で、ケアマネジャーの業務は利用者支援や多職種連携など数値化しにくい専門業務が多く、報告書では「人が人を評価する難しさ」や「数値化できない業務をどう評価するか」が課題として挙げられました。
評価項目としては「業務遂行力」「主体性・積極性」「勤務態度」などが多く採用されていましたが、何を重視し、どのように公平に評価するかは依然として難しいテーマであることがうかがえます。
フィードバックの有無が納得度を左右する
今回の調査で特に注目されたのが、評価結果のフィードバックと職員の納得度の関係です。
評価結果を本人へフィードバックしている事業所は62.1%、フィードバックしていない事業所は37.0%でした。
フィードバック方法としては「口頭(面談等)」が81.0%と最も多く、評価結果を直接伝える取り組みが中心となっています。
さらに、評価制度に対する納得度を見ると、「納得している」「ある程度納得している」を合わせた割合は70.4%でした。
報告書では、単に制度を導入するだけではなく、評価内容を丁寧に説明し、職員と対話を行うことが納得感の向上につながると分析しています。
つまり、評価制度の“有無”以上に、“どのように運用するか”が重要であることが今回の調査で示されました。
協会が示した7つの提言
報告書では、人事評価制度の普及や運用改善に向けて、次の7つの提言が示されました。
- 組織規模に応じた段階的評価制度の整備と導入支援
- 評価手法の明確化と評価基準の標準化
- 制度運用における説明及びフィードバックの充実
- 業務負担及び人的体制への対応とICT活用
- スーパービジョンと人事評価制度の役割分担の明確化
- 制度改善の継続的見直しの仕組み
- 人事評価制度導入を促進するための動機付けの強化
これらの提言は、単なる査定制度ではなく、人材育成や専門職としての成長を支える仕組みとして人事評価制度を位置付ける考え方に基づいています。
人事評価制度の改善が人材定着のカギに
日本介護支援専門員協会の調査から、ケアマネジャーの人事評価制度は約半数の事業所で導入されている一方、法人規模や運営主体によって大きな差があることが明らかになりました。
また、評価制度の主な目的は処遇決定であるものの、評価項目の設定や公平性の確保には課題が残っています。
さらに、評価結果を丁寧にフィードバックしている事業所ほど職員の納得度が高い傾向がみられ、制度そのものよりも運用の質が重要であることが示されました。
人材不足が続く介護業界において、ケアマネジャーが専門職として適切に評価され、成長できる環境づくりの重要性は今後さらに高まっていくでしょう。
参照元:一般社団法人日本介護支援専門員協会 令和7年度調査報告書・介護支援専門員の人事評価制度に関する実態調査

執筆者紹介
「福祉現場の架け橋」として、20年の経験から心に寄り添うヒントを。
介護福祉士および保育士として、高齢者介護から障がい福祉、保育まで、世代を問わず20年以上福祉の最前線に携わる。現場での豊富な実践経験を活かし、単なる制度解説に留まらない「介護する側・受ける側」双方の気持ちに寄り添った発信が持ち味。複雑な介護保険制度も、家族の視点に立って分かりやすく紐解きます。
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