第10期介護保険事業(支援)計画の策定に向けた事前準備として、医療と介護の連携強化が重要なテーマの1つとして示されています。
背景には、85歳以上の高齢者の増加に伴い、医療と介護の双方を必要とする「複合ニーズ」が急速に高まっている現状があります。
本記事では、厚生労働省の事務連絡をもとに、医療・介護連携の強化の方向性と、協力医療機関の確保に向けた具体的な動きについて、実務的な視点も踏まえて整理していきましょう。
目次
この記事でわかること
- 第10期介護保険事業計画で医療・介護連携が強化される背景と方向性
- 協力医療機関の確保が進まない実務上の課題と、自治体によるマッチング支援の仕組み
- 2040年を見据えた地域全体のケア提供体制づくりにおいて、現場が取り組むべきポイント
2040年を見据えた医療・介護連携の必要性
2040年に向けては、85歳以上の高齢者人口の増加が見込まれており、慢性疾患の併存やフレイル、認知症など複数の課題を抱える高齢者が増加するとされています。
こうした高齢者は、入退院を繰り返しながら在宅や施設で生活するケースも多く、医療と介護の切れ目のない支援が不可欠です。
従来は、医療は医療機関、介護は介護事業所という役割分担が中心でしたが、今後は「生活を支える医療」「医療的ニーズに対応できる介護」といった視点がより重要になります。
特に慢性期においては、治療だけでなく生活支援や看取りまでを見据えた包括的な支援体制の構築が求められるでしょう。
このため、第10期計画では、地域単位で医療・介護の提供状況を把握し、どの機能が不足しているのか、どこに連携の課題があるのかを可視化したうえで、体制整備を進めることが重視されています。
「総合確保方針に基づく協議の場」の役割
第10期計画の特徴の1つが、「総合確保方針に基づく協議の場」を計画初期から活用する点です。これは単なる情報共有の場ではなく、地域の医療・介護の実態を踏まえ、課題解決に向けた実務的な議論を行う場として位置づけられています。
具体的には、現行の地域医療構想に基づく慢性期の医療・介護提供状況の確認や、地域における課題の洗い出しが議論されることを想定されます。
たとえば、慢性期の患者がどこで受け入れられているか(病院、施設、在宅)や、医療資源と介護資源の偏在状況なども、議論の論点になり得るでしょう。
これらを踏まえ、「どの地域にどの機能を補うべきか」「どの連携を強化すべきか」を具体的に検討することが求められています。
また、この協議の場は、地域医療構想との整合を図る役割も担います。医療側の病床機能の再編と、介護側の受け皿整備を一体的に議論することで、地域全体として持続可能な体制を構築することが狙いです。
協力医療機関の確保における実務課題
介護保険施設における協力医療機関の確保は、制度上は重要とされてきたものの、実務上は課題が多い領域です。令和6年度の介護報酬改定では、急変時対応や医療連携の強化が図られましたが、それでも未確保の施設が一定数存在しています。
その背景として、以下のような要因が考えられます。
- 地域の医療機関側に受入余力がない
- 夜間・休日対応など負担の大きさ
- 責任範囲や役割分担が不明確
- 診療報酬・介護報酬上のインセンティブの限界
特に中小規模の医療機関や地方部では、人的資源の制約から協力医療機関としての参画が難しいケースもあるでしょう。
その結果、施設側は複数の医療機関に分散して対応を依頼するなど、非効率な体制となっている場合もあり、利用者の急変時対応や継続的な医療管理に影響を及ぼす可能性があります。
マッチング支援の具体的な意義
第10期計画で示されたマッチング支援は、こうした課題に対する構造的なアプローチといえるでしょう。従来は、各施設が個別に医療機関を探し、関係構築を行う必要がありましたが、今後は自治体が関与し、地域全体で調整する仕組みへ転換していく方向が示されています。
具体的な流れとしては、
- 協力医療機関を確保できていない施設の把握(リスト化)
- 地域内の医療機関の機能や受入状況の整理
- 協議の場におけるマッチングの検討
- 連携体制構築に向けた調整
といったプロセスを想定。
この取り組みにより、単なる「紹介」にとどまらず、役割分担や対応範囲を整理しながら、連携体制の構築に向けた検討が進むことが期待されます。結果として、急変時対応の迅速化や、入退院支援の質の向上、さらには看取り体制の強化にもつながる可能性があります。
令和9年度以降に向けた中長期的視点
第10期計画は、令和9年度以降の制度や体制を見据えた中長期的な計画でもあるでしょう。特に重要なのが、新たな地域医療構想との整合です。
今後は、病床機能の再編や在宅医療の拡充といった医療側の変化に対応しながら、介護側の受け皿をどう整備するかが問われます。
病床機能の再編や在宅医療の拡充といった医療側の変化と、介護側の受け皿整備を一体的に検討しながら、医療と介護の境界領域における役割の再整理が進んでいくでしょう。
このように、医療・介護連携は単なる「連携強化」にとどまらず、地域全体のケア提供体制の再設計という側面を持っています。
医療と介護が一体となる地域づくりに向けて
第10期計画における医療・介護連携の強化は、現場にとっても具体的な対応が求められるテーマです。特に、介護施設管理者やケアマネジャー、地域包括支援センター職員にとっては、以下のような視点が重要になります。
まず、自施設・自事業所の医療連携体制を客観的に把握することです。協力医療機関の有無だけでなく、急変時対応や入退院支援の流れが機能しているかを確認する必要があります。
次に、地域の協議の場への積極的な関与です。現場の課題を共有し、地域全体の連携体制づくりに参画することで、自施設だけでは解決できない課題への対応が可能になります。
さらに、利用者の状態変化を見据えたケアマネジメントの強化も求められるでしょう。医療ニーズの高まりを前提としたケアプランの作成や、多職種連携の調整が今後ますます重要になります。
2040年に向けて、医療と介護の関係はこれまで以上に密接になります。その中で、地域全体で支える体制をどう構築するかが、今後の介護サービスの質を左右する重要な鍵となるでしょう。
参照元:介護保険最新情報 第 10 期介護保険事業(支援)計画の策定に向けた 事前準備に関する留意事項について Vol.1485 令和8年3月26日

執筆者紹介
介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。
介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。





