~ケアマネジャー231名に聞いた、仕事と介護の両立支援の現場のリアル~
介護のススメ編集部では、一般社団法人日本単独居宅介護支援事業所協会(ケアマネジャーを紡ぐ会)と共同で、現役ケアマネジャー231名を対象に「利用者家族の仕事と介護の両立支援」に関する実態調査を実施しました。
年間約10万人ともいわれる介護離職。国も企業も対策を急いでいますが、介護の最前線に立つケアマネジャーは、利用者家族の就労についてどのような相談を受け、どう対応しているのでしょうか。
調査結果から見えてきた、介護現場と企業の”分断”の実態をお伝えします。
ケアマネジャーの7割超が、家族から「仕事と介護の両立」の相談を受けている

「利用者家族から仕事と介護の両立に関する相談を受けたことがあるか」を尋ねたところ、「よくある」(10.4%)と「ときどきある」(60.6%)を合わせて71.0%が「ある」と回答しました。
ケアマネジャーは利用者本人のケアプランを作る専門職ですが、実際には働く家族の悩みにも日常的に向き合っていることがわかります。
最も多い相談は「仕事を続けられるか不安」61.6%

相談を受けた経験のあるケアマネジャー164名に相談内容を聞いたところ(複数回答)、最も多かったのは「仕事を続けられるか不安」(61.6%)でした。
次いで「介護費用と収入の両立への不安」(47.6%)、「勤務時間や働き方の調整について」(43.9%)が続き、「退職すべきか迷っている」も37.2%に上りました。介護離職に直結しうる深刻な悩みが上位を占めています。
また、「介護休業・介護休暇の取り方がわからない」(17.1%)、「職場に介護していることを言いづらい」(16.5%)といった回答も見られ、制度の周知不足や職場の雰囲気が家族を孤立させている現状がうかがえます。
6割超のケアマネが、家族の介護離職・働き方変更を経験

「担当した利用者のうち、主な介護者(家族)が働き方を変えたケースがあったか」との問いには、62.3%が「はい」と回答しました。
転職、雇用形態の変更、退職など、介護を理由とした働き方の変化は、ケアマネジャーにとって珍しいことではありません。
対応の中心は「サービスの時間帯調整」。4人に1人は「対応が難しい」

家族の就労に関する相談への対応方法(複数回答)では、「サービスの時間帯調整(デイサービスの時間など)で対応」が75.3%と突出しました。
次いで「自分で調べて情報提供する」(39.8%)、「企業の人事・総務への相談を勧める」(30.3%)が続く一方、「正直、対応が難しいと感じている」も23.8%に達しています。
注目したいのは、「産業ケアマネへの相談を勧める」がわずか6.9%にとどまっている点です。介護現場から企業側の支援につなぐルートが、まだ十分に確立されていない実態が見えてきます。
企業の介護支援制度を「把握している」ケアマネはわずか2.2%

利用者家族の勤務先の介護支援制度について把握状況を尋ねたところ、「ほとんど把握していない」が70.1%と圧倒的でした。「把握する必要を感じていない」(8.7%)と合わせると78.8%が未把握です。
「把握している」と答えたケアマネジャーはわずか2.2%。介護の専門家でありながら、企業側の制度情報にはほとんどアクセスできていないのが現状です。
「介護休業制度」の認知は9割超、一方で「EAP」はわずか5.2%

企業側の介護支援の取り組みについて認知度を聞いたところ(複数回答)、「介護休業制度(育児・介護休業法に基づくもの)」が90.9%と広く知られていました。
一方、「企業独自の介護支援制度」は59.7%、「産業ケアマネ」は55.4%、「企業内の介護相談窓口」は35.9%にとどまり、「EAP(従業員支援プログラム)」はわずか5.2%でした。法定制度は知っていても、企業独自の取り組みへの認知にはまだ課題があるようです。
8割超が「企業との連携の仕組みがあれば介護離職防止に役立つ」

「企業の人事・総務担当者とケアマネジャーが連携する仕組み(産業ケアマネなど)があれば、利用者家族の介護離職の防止に役立つと思うか」との問いには、「とても思う」(43.7%)と「やや思う」(39.4%)を合わせて83.1%が肯定的に回答しました。
企業の制度を把握できていないケアマネジャーが多いからこそ、「連携の仕組みがあれば現場は変わる」という期待感の強さがうかがえます。
現場の声
自由記述には、介護の最前線に立つケアマネジャーの切実な声が多数寄せられました。その一部をご紹介します。
| 「支援制度があることを知らない、知識があっても勤務先へ申し出できない家族がほとんどです。今すぐ取り組むべき社会課題だと思います」 「相談先に困っている状況が多く見られる。ただ担当ケアマネに投げられても、そこまで手が回らないほどの件数を抱えている。だからこそ、専門の相談先が必要だと感じます」 「介護に直面する前の備え、介護への向き合い方、相談先、元気なうちに話し合っておくことが大切。今後、誰もが仕事と何かしらのケアを両立していく社会において、企業・地域・行政が連携して両立支援をしていく必要がある」 |
編集部より
今回の調査から浮かび上がったのは、「介護の現場」と「企業」の間にある大きな溝です。
ケアマネジャーの7割超が利用者家族から仕事と介護の両立について相談を受けているにもかかわらず、企業の支援制度を把握しているケアマネジャーはわずか2.2%。現場では介護サービスの時間帯調整で対応するほかなく、4人に1人が「対応が難しい」と感じています。
一方で、8割超のケアマネジャーが企業との連携の仕組みに期待を寄せていることは、明るい材料といえるでしょう。介護の専門家と企業の人事・総務が情報を共有し、連携できる仕組みが整えば、「制度はあるのに使えない」「誰に相談すればいいかわからない」という家族の孤立を防ぐ一歩になるはずです。
介護離職は、本人だけでなく企業にとっても大きな損失です。今後、「産業ケアマネ」のような介護と企業をつなぐ新たな支援体制がどのように広がっていくか、引き続き注目していきます。
調査概要
| 調査名 | ケアマネジャーを対象とした「仕事と介護の両立支援」に関する実態調査(第1回) |
| 調査企画 | 株式会社IRODORI(介護のススメ編集部) |
| 調査協力 | 一般社団法人日本単独居宅介護支援事業所協会(ケアマネジャーを紡ぐ会) |
| 調査期間 | 2026年5月〜6月 |
| 調査方法 | オンラインアンケート |
| 有効回答数 | 231名 |
| 回答者属性 | 現役ケアマネジャー(経験10年以上 64.1%、3〜10年 29.9%、3年未満 6.1%) |
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