協力医療機関の体制整備、経過措置期限まで残り1年を切る ── 特養の約3割がまだ整備途上

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令和6年度介護報酬改定では、介護施設における医療提供体制の強化を目的として、協力医療機関との連携体制の整備が見直されました。

特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院では、一定の要件を満たす協力医療機関を定めることが義務化され、令和9年3月31日までの経過措置期間が設けられています。

経過措置期限まで残り1年を切る中、厚生労働省が公表した最新の調査では、特養の67.9%が3要件を満たす協力医療機関を確保している一方で、約3割はまだ体制整備の途上にあることが明らかになりました。

本記事では、協力医療機関に関する制度の概要を改めて整理するとともに、施設種別や都道府県別の整備状況、ケアマネジャーが押さえておきたいポイントを解説します。

この記事でわかること

  • 令和6年度介護報酬改定で義務化された協力医療機関の3要件の内容と対象施設
  • 施設種別ごとの整備状況と都道府県別の充足率の差
  • ケアマネジャーが施設選びの支援で確認しておきたい連携体制のポイント

協力医療機関の3要件とは

令和6年度介護報酬改定では、入所者が急変した際にも切れ目のない医療を提供できる体制を確保するため、施設系サービスにおける協力医療機関の基準が見直されました。

対象となるのは、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院です。これらの施設では、次の3つの要件を満たす協力医療機関を定めることが求められています。

① 入所者の急変時に医師・看護職員が常時相談対応できる体制

入所者の病状が急変した際、施設職員が24時間体制で医師または看護職員へ相談できる体制を確保していることです。夜間や休日も含め、迅速な医療判断につなげられる体制が求められます。

② 診療の求めに常時対応できる体制

入所者の状態変化などにより診療が必要になった場合、協力医療機関が速やかに診療へ対応できる体制を整備していることです。電話相談だけではなく、必要に応じて実際の診療につなげられることが前提となります。

③ 急変時の入院を原則受け入れる体制

病状の悪化などにより入院が必要と判断された場合、原則として受け入れる体制を確保していることです。この要件については病院のみが対象となっています。

なお、3つの要件を必ずしも1つの医療機関で満たす必要はありません。例えば、診療所と病院など複数の医療機関が役割分担することで、全体として要件を満たすことも認められています。

また、施設と協力医療機関は年1回以上、急変時の対応や入院受け入れ体制などについて相互に確認するとともに、入所者の病歴や治療歴などを共有するための定期的な会議を開催することが求められています。

一方、特定施設入居者生活介護や認知症対応型共同生活介護(グループホーム)については、協力医療機関を定めることが努力義務とされており、施設系サービスとは位置付けが異なる点に留意が必要です。

最新の整備状況

厚生労働省が令和7年9月から11月に実施した調査によると、施設種別によって協力医療機関の整備状況には差がみられました。

3要件をすべて満たす協力医療機関を定めている割合は、介護医療院が84.9%で最も高く、続いて介護老人保健施設83.3%、特別養護老人ホーム67.9%となっています。

努力義務となっている居住系サービスでは、特定施設入居者生活介護73.6%、認知症対応型共同生活介護64.2%、軽費老人ホーム59.5%という結果でした。

養護老人ホームは60.4%で、介護保険施設とは制度上の位置づけが異なりますが、今回の調査では同様に集計されています。

施設種別3要件を満たす割合備考
介護医療院84.9%義務
介護老人保健施設83.3%義務
特別養護老人ホーム67.9%義務
特定施設入居者生活介護73.6%努力義務
認知症対応型共同生活介護64.2%努力義務
養護老人ホーム60.4%
軽費老人ホーム59.5%努力義務

※養護老人ホームは老人福祉法に基づく措置施設であり、介護保険施設(特養・老健・介護医療院)とは制度上の位置づけが異なります。

今回の結果では、特養の約3割が現時点で3要件をすべて満たしていないことが分かりました。

もっとも、この結果だけで「体制が整備途上の施設=質が低い施設」と評価することは適切ではありません。

地域によっては医療機関が限られ、要件を満たす協力医療機関の確保そのものが難しいケースがあります。

また、制度には令和9年3月末までの経過措置期間が設けられており、多くの施設が期限に向けて医療機関との調整や契約手続きを進めている段階です。

なお、令和6年度介護報酬改定では、施設と協力医療機関の連携を評価する「協力医療機関連携加算」も新設されました。

特養では事業所ベースの算定率が42.3%となっており、定期的な会議や情報共有などを通じた医療・介護連携の取り組みが徐々に広がっています。

都道府県別の状況

都道府県別にみると、特養における協力医療機関の整備状況には大きな差がみられました。

3要件をすべて満たす協力医療機関を定めている割合が高かったのは、島根県(96%)、香川県(95%)、福島県(91%)などです。

一方で、高知県(21%)、青森県(22%)、佐賀県(26%)などでは充足率が低い結果となりました。

なお、これらの数値は調査時点で各自治体が把握していた概数であり、端数処理の方法なども自治体によって異なる可能性があります。

ただし、この数値だけをもって都道府県や施設の取り組みを単純に比較することはできません。

厚生労働省の調査では、一部の自治体が「集計していない」と回答しています。

その理由としては、「現在使用しているシステムでは集計できない」「個別確認に多くの時間と労力を要する」といった、事務的・システム上の課題が挙げられています。

今後、システム改修などにより集計可能となる予定としている自治体もあり、今回の調査結果は現時点で把握できた範囲の状況と理解することが重要です。

また、地域によって医療資源の状況は大きく異なります。都市部では複数の医療機関と連携しやすい一方、医療機関が限られる地域では、協力医療機関の確保そのものが難しいケースも少なくありません。

そのため、充足率の違いには、施設の努力だけではなく、地域の医療提供体制や人口規模、医療資源の偏在など、さまざまな要因が影響していると考えられます。

経過措置期限である令和9年3月末まで残り1年を切った今、各施設では地域の医療機関との協議を進めながら、体制整備を着実に進めていくことが重要です。

協力医療機関の種別

厚生労働省は、施設がどのような種類の医療機関を協力医療機関として定めているかについても調査しています。

施設系サービス(特養・老健・介護医療院)では、最も多かったのが「上記以外の病院」でした。

これは、在宅療養支援病院や地域包括ケア病棟を有する病院など、調査で個別に示された区分に該当しない病院が多いことを示しています。

そのほか、在宅療養支援病院や地域包括ケア病棟を有する病院などとも連携しており、地域の実情に応じてさまざまな医療機関との連携が進められています。

一方、特定施設入居者生活介護では、「在宅療養支援診療所(無床)」が最も多い結果となりました。

在宅療養支援診療所は、24時間対応や往診など在宅医療を担う医療機関です。施設入居者の日常的な健康管理や急変時の初期対応などにおいて、重要な役割を果たしています。

この結果からも分かるように、協力医療機関は一律の形ではなく、施設の役割や地域の医療資源に応じて多様な連携体制が構築されています。

そのため、協力医療機関の名称だけではなく、「急変時にどのような対応が可能なのか」「必要時にどの病院へつながるのか」といった実際の連携内容まで確認しておきたいところです。

ケアマネジャーが知っておくべきポイント

協力医療機関との連携体制は、施設運営上の要件であるだけでなく、入所者の安全・安心に直結する重要な要素です。

ケアマネジャーが施設入所を支援する場面では、料金や立地、空床状況だけでなく、協力医療機関との連携体制についても確認しておくことで、より適切な施設選びにつながります。

例えば、急変時にはどの医療機関が対応するのか、夜間や休日でも相談できる体制になっているのか、入院が必要となった場合にどの病院が受け入れるのかといった点は、利用者や家族にとって大きな安心材料となります。

また、複数の医療機関と役割分担している施設もあるため、「協力医療機関があるかどうか」だけではなく、どのような連携体制が構築されているのかまで確認することが大切です。

今回公表された調査結果では、施設ごとの整備状況だけでなく、地域による差も明らかになりました。しかし、その背景には医療資源の偏在や地域事情もあるため、数値だけで施設を評価することは適切ではありません。

経過措置期限が近づく中、今後は各施設で協力医療機関との連携体制がさらに整備されていくことが期待されます。

ケアマネジャーにも、制度の趣旨を理解し、利用者や家族への説明や施設選びの支援に今回の情報を生かす視点が求められます。

参照元:厚生労働省 第260回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護介護老人保健施設

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