特養の収支差率1.4%、老健は0.6%──令和6年度決算にみる介護施設の経営実態

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令和7年度介護事業経営概況調査の結果が公表され、介護施設の最新の経営状況が明らかになりました。

令和6年度決算における全介護サービスの平均収支差率(税引前・物価高騰対策関連補助金を含まない)は4.7%だった一方、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、以下「特養」)は1.4%、介護老人保健施設(以下「老健」)は0.6%と低い水準にとどまりました。

一方で、令和4年度決算ではともに赤字だった特養・老健は、令和6年度には黒字へ改善しており、経営状況には持ち直しの動きもみられます。

本記事では、厚生労働省の「令和7年度介護事業経営概況調査」と「令和6年度介護給付費等実態統計」をもとに、特養・老健を中心とした施設系サービスの経営実態と、今後の介護報酬改定への影響を解説します。

この記事でわかること

  • 令和6年度決算における特養・老健の収支差率と、令和4年度の赤字から黒字へ転じた推移
  • 費用額の増加や利用率の微減など、施設系サービスの経営を圧迫している要因
  • 今後の介護報酬改定に向けた議論の方向性と、施設経営に求められる対応

施設系サービスの収支差率一覧

令和7年度介護事業経営概況調査では、施設系サービスの収支差率が公表されました。

本調査では、「税引前収支差率(物価高騰対策関連補助金を含まない)」「税引前収支差率(物価高騰対策関連補助金を含む)」「税引後収支差率」の3種類が示されています。

「補助金を含まない」は、施設本来の経営状況を把握するための指標です。

一方、「補助金を含む」は物価高騰対策関連補助金を収入として計上した場合の収支差率であり、実際の経営状況を確認する際の参考となります。なお、税引後収支差率は法人税等を反映した最終的な利益率です。

令和6年度決算の主な施設系サービスの収支差率は次のとおりです。

サービス税引前(補助金含まず)税引前(補助金含む)税引後
介護老人福祉施設(特養)1.4%1.6%1.6%
地域密着型介護老人福祉施設2.2%2.3%2.3%
介護老人保健施設(老健)0.6%0.8%0.7%
介護医療院3.5%3.6%3.4%
特定施設入居者生活介護5.3%5.4%4.3%

特養の税引前収支差率(補助金を含まない)は、令和4年度の-1.0%から令和5年度は1.3%、令和6年度は1.4%へと改善しました。

また、老健も令和4年度の-1.1%、令和5年度の-0.6%から、令和6年度は0.6%と黒字へ転じています。

一方で、全介護サービス平均の4.7%と比較すると、特養・老健ともに依然として低い水準であり、物価高騰や人件費上昇の影響を受けやすい施設系サービスの厳しい経営環境がうかがえます。

特養の経営状況の詳細

特養の令和6年度決算における税引前収支差率(物価高騰対策関連補助金を含まない)は1.4%となりました。金額ベースでは1施設当たり月41万7,000円の黒字です。

補助金を含めると1.6%となるものの、全介護サービス平均の4.7%を大きく下回っています。

収支差率は、令和4年度の-1.0%から令和5年度は1.3%、令和6年度は1.4%へと改善しました。

しかし、収支差率の分布を見ると、0~5%未満の施設が最も多く、赤字となった施設は25.5%と、4施設に1施設以上が赤字となっています。

10%以上の収支差率を確保している施設は少なく、多くの施設がわずかな利益で運営している実態がうかがえます。

費用額は年々増加しており、年間費用額は令和4年度の2兆2,704億円から、令和5年度は2兆3,201億円、令和6年度は2兆4,258億円へと増加しました。

利用者1人当たりの費用額も31万8,000円まで上昇しており、人件費や食材費、光熱費などのコスト増加が経営を圧迫していることがうかがえます。

一方、利用率は94.5%と高い水準を維持しているものの、ここ数年は微減傾向にあります。1事業所当たりの受給者数も減少しており、稼働率だけで収益を改善することは難しい状況です。

また、入所者のおよそ6割が補足給付の対象となる低所得者であることも特養の特徴です。利用者負担を引き上げにくい構造のため、物価や人件費の上昇への対応は介護報酬や公的支援の影響を受けやすいと言えます。

令和6年度決算では黒字を維持したものの、利益率は依然として低い水準です。今後も物価や人件費の上昇が続く中、安定した施設運営には、生産性向上や業務効率化への取り組みが一層重要になるでしょう。

老健の経営状況の詳細

介護老人保健施設(老健)の令和6年度決算における税引前収支差率(物価高騰対策関連補助金を含まない)は0.6%となりました。金額ベースでは1施設当たり月22万6,000円の黒字です。

収支差率は、令和4年度の-1.1%、令和5年度の-0.6%から、令和6年度は0.6%へ改善し、ようやく黒字へ転じました。ただし、補助金を含めても0.8%にとどまり、利益率は依然として低い水準です。

受給者数・事業所数は緩やかな減少傾向が続いています。受給者数は平成27~28年頃をピークに減少しており、事業所数もわずかに減少しています。利用者確保が課題となる地域もみられます。

一方、年間費用額は令和4年度の約1兆3,399億円から、令和6年度は約1兆3,958億円へ増加しました。

利用者1人当たりの費用額も34万1,000円まで上昇しており、人件費や物価高騰に加え、医療・リハビリテーション機能の維持に伴うコスト増が経営を圧迫しています。

老健では在宅復帰支援機能の強化が進んでおり、超強化型施設の割合は7.8%から33.2%へ大きく増加しました。

一方で、在宅復帰率やリハビリ実績など、より高い要件を満たすため、人員体制の確保が重要になっています。

令和6年度は黒字へ転換したものの、収支差率は0.6%にとどまります。今後も物価や人件費の上昇が続く中、在宅復帰支援機能の充実と生産性向上の両立を図る施設運営が求められるでしょう。

今後の見通し

令和7年度介護事業経営概況調査では、特養・老健ともに令和4年度の赤字から改善し、令和6年度決算では黒字へ転じました。

しかし、収支差率は特養1.4%、老健0.6%と、全介護サービス平均の4.7%を大きく下回っており、経営環境は依然として厳しい状況です。

今回公表された収支差率は、今後の介護報酬改定に向けた重要な判断材料となります。

社会保障審議会介護給付費分科会では、サービスごとの経営実態を踏まえ、報酬水準のほか、介護報酬体系の簡素化や加算の整理についても議論が進められる見通しです。

今後も人件費や物価の上昇が続くと見込まれる中、物価高騰対策関連補助金だけでは十分な対応は難しいと考えられます。

ICTや介護ロボットの活用、生産性向上、多職種連携などを進めながら、持続可能な施設経営を実現できるかが大きな課題となりそうです。

参照元:厚生労働省 第260回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護介護老人保健施設介護医療院特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護

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