厚生労働省:ケアマネ業務実態調査で「シャドウワーク」が可視化 ― 介護給付費分科会資料を読み解く

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厚生労働省が第259回社会保障審議会介護給付費分科会(令和8年6月29日開催)に提出した資料で、三菱総合研究所が実施した「居宅介護支援事業所における介護支援専門員等の業務実態に関する調査研究事業」の結果が公表されました。

ケアマネジャー1人あたりの月間労働投入時間が要介護度別・業務内容別に詳細に示されるとともに、法定外業務(いわゆるシャドウワーク)の実態が体系的に数値化されました。

今回の調査は、ケアマネジャーが日常的に担っている業務の全体像を可視化し、今後の制度改正や業務負担の見直しを検討する重要な資料となっています。

この記事でわかること

  • ケアマネジャー1人あたりの月間労働投入時間が要介護度別にどのくらいかかっているか
  • 通院付き添いやゴミ出しなど、法定外業務(シャドウワーク)を実際にどれだけのケアマネが担っているか
  • シャドウワークを地域課題として整理する国の方向性と、朝来市・出雲市・岡崎市の先行事例

業務実態調査の概要

今回公表された調査は、令和7年度老人保健健康増進等事業として三菱総合研究所が実施したものです。居宅介護支援事業所に勤務するケアマネジャーを対象に、1か月間の業務内容や労働投入時間を詳細に調査しました。

調査の概要は以下のとおりです。

項目内容
調査主体三菱総合研究所(令和7年度老人保健健康増進等事業)
配布事業所数194事業所
回答事業所数170事業所
対象ケアマネジャー543人
主な分析内容利用者1人あたり・要介護度別の労働投入時間、業務内容別の時間配分

分析対象となった業務は、ケアプラン作成、モニタリング、利用者・家族との連絡調整、サービス担当者会議、給付管理事務などの法定業務に加え、法定外業務(シャドウワーク)まで幅広く含まれています。

厚生労働省は、こうした詳細な業務分析を踏まえ、ケアマネジャーの負担軽減策を検討していく考えです。

要介護度別にみるケアマネジャーの労働投入時間

調査では、利用者1人あたり1か月間にケアマネジャーが費やす時間も要介護度別に集計されています。

利用者区分月間労働投入時間
要支援1約137.7分
要支援2約125.2分
要介護1約152.0分
要介護2約150.2分
要介護3約155.1分
要介護4約151.4分
要介護5約155.6分
認定申請中約297.1分

要支援1では、ケアプラン作成が約50.4分と最も多く、全体の約36.6%を占めています。一方、要介護度が高くなるにつれて、医療機関や入所施設との連絡に要する時間が増える傾向がみられました。

たとえば医療機関等との連絡時間は、

  • 要介護3:約13.4分
  • 要介護5:約19.5分

となっており、重度化に伴って医療との連携が重要になる様子が数値から読み取れます。

また、認定申請中の利用者では、初回契約やアセスメント、関係機関との調整などが必要になるため、通常の利用者のおよそ2倍となる約297分もの時間が必要となっていました。

数字で見えた「シャドウワーク」の実態

今回の資料で特に注目されたのが、いわゆる「シャドウワーク」の実態です。

分科会資料では、令和5年度に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが実施した地域包括支援センター調査(n=2,296)の結果も引用されており、「本来ケアマネジャーの業務範囲内と考える割合」と、「実際に対応している割合」の大きな差が明らかになりました。

業務内容業務範囲内と考える割合実際に対応
入院・通院時の付き添い・送迎9.8%68.0%
入退院にかかる手続きや申請、支払いの代行・支援3.3%36.0%
介護保険制度以外の行政への手続きや申請の代行・支援29.8%68.0%
金融機関の手続きや申請の代行・支援3.3%30.9%
部屋の片づけ・ゴミ出し、買い物1.7%36.1%
入院中・入所中の着替えや必需品の調達2.3%45.2%

たとえば、「入院・通院時の付き添い・送迎」は業務範囲内と考える人が1割未満であるにもかかわらず、実際には約7割のケアマネジャーが対応しています。

また、「部屋の片づけ」や「金融機関での手続き」など、本来は他の制度や地域資源が担うことも想定される支援についても、多くのケアマネジャーが現場で対応している実態が浮かび上がりました。

地域課題として進む「シャドウワーク」への対応

ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会の中間整理(令和6年12月)では、シャドウワークを地域全体で対応すべき課題として整理しています。

業務は概ね次の4類型に分類されるものです。

分類主な内容
法定業務ケアマネジメント本来の業務
保険外サービスとして対応しうる業務郵便物受取、代筆・代読など
他機関につなぐべき業務片づけ、預貯金引き出し、財産管理、死後事務など
対応困難な業務医療同意など

こうした考え方を踏まえ、各自治体では地域資源を活用した取り組みも始まっています。

朝来市(兵庫県)

地域ケア会議にワーキンググループを設置し、「身寄りのない人を支える資源マップ」を作成。地域で利用できる支援先を整理し、ケアマネジャーだけが抱え込まない仕組みづくりを進めています。

出雲市(島根県)

市内17団体の住民互助組織が、家事支援や通院付き添いなどを実施。利用料金は1時間あたり500~1,400円程度で、地域住民による生活支援体制を構築しています。

岡崎市(愛知県)

SDGs公民連携プラットフォームを活用し、「終活応援事業」を展開。居住支援法人や司法書士などと協定を結び、身寄りのない高齢者への支援体制を整えています。

これらの事例はいずれも、「ケアマネジャー個人ではなく地域全体で支える」という考え方に基づく取り組みといえます。

まとめ

今回公表された調査では、ケアマネジャーの業務量が初めて詳細な数値として可視化されました。

特に、法定業務ではない「シャドウワーク」が多くの現場で日常的に発生している実態は、今後の制度設計を考える上で重要な示唆を与えるものです。

介護保険部会の意見書やケアマネジメント検討会の中間整理でも、シャドウワークは「ケアマネジャー個人の問題」ではなく、「地域課題」として地域全体で対応すべきとの方向性が示されています。

今後は令和9年度介護報酬改定や制度改正に向け、居宅介護支援事業所と地域包括支援センターの役割分担、地域資源の活用、ケアマネジャーが本来業務に専念できる環境整備について、さらに議論が進むことが期待されます。

参照元:厚生労働省 居宅介護支援・介護予防支援

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