令和6年度の介護報酬改定により、居宅介護支援事業所が市町村から直接「介護予防支援」の指定を受けられるようになりました。
しかし、施行から1年以上が経過した最新の調査(令和8年3月発表)では、多くの事業所が依然として「指定」ではなく「委託」を選択している実態が浮き彫りになっています。
目次
この記事でわかること
- 介護予防支援の居宅への指定移行が進まない現状と、8割の事業所が「指定なし」を選んでいる背景にある構造的な課題
- 指定を受けた事業所が実感している「継続支援」のメリットと、「報酬の低さ」という経営面の厳しい現実
- 今後、指定を受けるかどうかを判断する際に事業所が押さえておくべきチェックポイント
「指定なし」が8割──進まぬ移行の現状
調査によると、介護予防支援の市町村からの指定状況は、「指定を受けていない(予定もない)」という回答が80.0%に達しました。「既に指定を受けている」事業所は16.3%に留まっており、制度導入時の期待ほど移行は進んでいません。
地域包括支援センターの業務負担軽減を目的としたこの制度ですが、現状では多くの事業所が従来の「包括からの委託」という形を維持することを選択しています。
指定を受けない最大の理由は「制度の複雑さ」
なぜ直接指定への移行が進まないのでしょうか。
アンケート調査(有効回収数977事業所)では、理由のトップが「地域包括支援センターからの委託で対応する方針のため(52.3%)」でした。さらにヒアリング調査からは、以下のような構造的な課題が見えてきました。
二階建て構造の弊害
介護予防支援(予防給付)の指定を受けても、介護予防ケアマネジメント(総合事業)は引き続き包括からの委託が必要な自治体が多く、「かえって事務が煩雑になる」という指摘が目立ちます。
マンパワーの限界
「要介護者の受け入れで手一杯(32.6%)」という回答も多く、現行の人員体制では新規の指定申請や維持にかかるコストが見合わないと判断されています。
指定事業所のリアル──効果は「継続支援」、課題は「報酬」
一方で、指定を受けた事業所(16.3%)は、明確なメリットと厳しい現実の両面に直面しているのです。
実感している効果
最も高かったのは「利用者の継続的な支援が可能となった(65.4%)」です。要支援から要介護へ状態が変化しても、同じケアマネジャーが切れ目なく担当できる点は、支援の質向上に大きく寄与しています。
直面している課題
圧倒的に多いのが「報酬が低い(71.1%)」という不満です。また、「担当件数増による負担(34.0%)」も挙げられており、経営的メリットが薄いことが普及の大きな障壁となっています。
検討委員会で出された「支援の質」と「ICT」をめぐる意見
調査検討委員会では、「ICTやAIを活用し、適切に多くの件数を管理できる体制を整えている事業所こそ、質の高い支援ができていると評価すべき」という意見が出されました。
また、基本報酬が引き上げられたにもかかわらず「「特別な処遇改善は行っていない」事業所が41.2%にのぼる現状に対し、経営努力の不足や、ケアマネジャー個人への直接的な還元システムの必要性を問う厳しい声も上がっています。
まとめ──事業所が判断するためのチェックポイント(編集部の視点)
今後、指定を受けるべきか判断する際、事業所は以下のバランスを見極める必要があります。
事務コストと連携の効率化
ケアプランデータ連携システム等の導入により、事務負担をどこまで削減できるか。
地域包括ケアにおける自所の役割
医療連携や看取り、あるいは予防支援のいずれに注力し、自所の「強み」とするか。
指定移行を加速させるには、介護予防ケアマネジメントを含めた統合的な仕組みへの改善が、今後の重要な鍵となりそうです。
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参照元:株式会社三菱総合研究所 「居宅介護支援及び介護予防支援における令和6年度介護報酬改定による影響等に関する調査研究事業 報告書」(令和7年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)、令和8年3月)

執筆者紹介
医療と介護を繋ぐ。20年の看護経験を活かした、命と生活を守る情報発信。
透析看護を中心に、病院・在宅医療の両現場で20年以上のキャリアを持つ現役看護師。医療的ケアが必要な方の生活指導や、患者家族への支援に深く携わる。看護師としての専門知識とケアマネジャーの視点を掛け合わせ、持病を抱えながらの介護や、退院後の生活設計など、医療的な裏付けに基づいた「安心できる介護のあり方」を分かりやすく伝えます。





