高齢化の進展に伴い、有料老人ホームは介護が必要な高齢者の重要な住まいとして利用が広がっています。
一方で、近年は住宅型有料老人ホームを中心に、併設事業所への利用誘導や過剰なサービス提供など、いわゆる「囲い込み」が課題として指摘されてきました。
こうした状況を受け、政府は「社会福祉法等の一部を改正する法律案」において、有料老人ホームに新たな登録制度を導入する方針を示しました。
登録制度の創設にあわせて、囲い込み対策や新たな相談支援の仕組みも整備される予定です。
本記事では、有料老人ホームの登録制度の概要や導入の背景、利用者や家族への影響について解説します。
目次
この記事でわかること
- 有料老人ホームに導入される登録制度の概要と、その背景にある「囲い込み問題」
- 囲い込み対策として新たに設けられる具体的なルールの内容
- 新たな相談支援の類型「登録施設介護支援」の仕組みと、入居者・家族が確認すべきポイント
有料老人ホームに登録制度が導入される
今回の法改正では、中重度の要介護者など、特に入居者保護の必要性が高い高齢者を受け入れる有料老人ホームを対象に、新たな登録制度が導入される予定です。
対象となるホームは入居対象者の要件によって判断され、現存する有料老人ホームの大半が該当すると見込まれています。
厚生労働省によると、有料老人ホーム全体では約2万5,000棟、定員数は約95万人となっています。その内訳は以下のとおりです。
| 類型 | 施設数 | 定員数 |
|---|---|---|
| 住宅型有料老人ホーム | 約2万棟 | 約63万人 |
| 介護付き有料老人ホーム | 約5千棟 | 約32万人 |
介護付き有料老人ホームは介護保険法に基づく指定を受け、ホーム自らが介護サービスを提供しています。
一方、住宅型有料老人ホームは老人福祉法に基づく施設であり、必要な介護サービスは外部事業所を利用する仕組みです。
今回の登録制度では、こうした制度上の違いによる課題を解消し、入居者保護を強化することが大きな目的となっています。
なぜ登録制度が必要なのか|囲い込み問題の実態
登録制度創設の背景には、住宅型有料老人ホームで指摘されてきた「囲い込み問題」があります。
本来、住宅型有料老人ホームは住まいを提供する施設であり、制度上は介護サービス提供への関与は想定されていません。
しかし実際には、ホームと同一法人や関連法人が運営する訪問介護事業所や居宅介護支援事業所などの利用を事実上促すケースがあるとされています。
こうした状況では、入居者本位のサービス利用が難しくなる可能性があります。具体的には、以下のような問題が発生しかねません。
- 入居者が介護サービス事業者を自由に選びにくくなる
- ケアマネジャーの独立性や中立性が損なわれる可能性がある
- 必要以上の介護サービスが提供される恐れがある
このような課題は、利用者の自己決定を妨げるだけでなく、自立支援や重度化防止の観点からも問題視されています。
厚生労働省はこれらを「囲い込み」と位置付け、自立支援や重度化防止の観点から課題視しています。
また、介護付き有料老人ホームは介護保険制度の中で運営基準や人員基準が定められている一方、住宅型有料老人ホームはガイドラインによる運営が中心となっており、制度上の位置付けに大きな差があることも問題視されていました。
囲い込み対策|具体的にどう変わるのか
今回の制度改正では、囲い込み防止のための具体的なルールが導入されます。
まず、特定の介護サービス事業者の利用をホーム入居の条件とすることが禁止されます。これにより、入居者のサービス選択の自由が確保される見込みです。
さらに、ケアマネジメントの独立性を確保するための方針策定・公表が義務付けられる予定です。
相談支援を担う事業者と介護サービス提供事業者との適切な距離を保つことで、公正なケアマネジメントの実現を目指します。
加えて、入居希望者や家族が適切な情報を得られるよう、有料老人ホーム協会による「入居者紹介事業の優良事業者認定制度」も創設されます。利用者が安心してホームを選択できる環境づくりが進められる予定です。
新たな相談支援の類型「登録施設介護支援」とは
今回の改正で注目されるのが、新たな相談支援サービスである「登録施設介護支援(登録施設介護予防支援)」です。
この仕組みでは、ホーム入居者に対して、ケアプラン作成と地域生活相談を包括的に提供します。主な支援内容は以下のとおりです。
- ケアプランの作成
- 地域生活相談(介護サービスの調整に加え、本人の意思に即した地域活動等への参画を含めた支援)
- 介護サービスの調整
- 地域活動や社会参加に向けた支援
特徴は、相談支援事業者がホームや介護サービス事業者から独立した立場で支援を行う点です。ホームと対等な立場で情報共有を行いながら、入居者本人の意思を尊重した支援を実施する仕組みとなっています。
また、利用者負担は介護付き有料老人ホームと同様に原則1割負担となる予定です。
なお、この制度は一般的な居宅介護支援(居宅ケアマネジメント)とは異なる新たな仕組みとして位置付けられています。
単なるケアプラン作成だけでなく、地域とのつながりや社会参加まで含めて支援することが特徴です。
入居者・家族が知っておくべきこと
登録制度の導入によって、ホーム選びの際に確認すべきポイントも変わってきます。
今後、有料老人ホームを検討する際には、次のような点を確認しておくことが重要です。
- 登録制度の対象となっているホームか
- ケアマネジメントの独立性確保に関する方針が公表されているか
- 特定の介護サービス事業者の利用が事実上前提となっていないか
- 登録施設介護支援を利用できる体制が整っているか
また、制度上、入居者の介護サービス選択の自由がより強く守られる方向となるため、「ホームが勧めるサービスしか使えないのではないか」という不安は軽減されることが期待されます。
家族にとっても、第三者的な立場で相談できる仕組みが整備されることで、ホームや介護サービス事業者との関係に悩んだ際の相談先が明確になる可能性があります。
まとめ
有料老人ホームの登録制度は、中重度の要介護者が安心して暮らせる環境を整備するための大きな制度改革です。
特に住宅型有料老人ホームについては、これまで課題となっていた囲い込みへの対策が強化され、ケアマネジメントの独立性確保やサービス選択の自由の保障が進められます。
また、新たな相談支援である「登録施設介護支援」の創設により、入居者一人ひとりの意思や地域とのつながりを重視した支援も期待されています。
今後は、住宅型有料老人ホームの質の確保と入居者保護がこれまで以上に重視される時代へと移行していくことになりそうです。
参照元:厚生労働省 社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要

「福祉現場の架け橋」として、20年の経験から心に寄り添うヒントを。
介護福祉士および保育士として、高齢者介護から障がい福祉、保育まで、世代を問わず20年以上福祉の最前線に携わる。現場での豊富な実践経験を活かし、単なる制度解説に留まらない「介護する側・受ける側」双方の気持ちに寄り添った発信が持ち味。複雑な介護保険制度も、家族の視点に立って分かりやすく紐解きます。
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