2026年3月31日、厚生労働省より「介護保険最新情報Vol.1489」が発出され、介護給付費の請求事務に関する記載要領が見直されました。本改正は2026年4月1日から適用されており、介護事業所の請求業務に直接影響する内容となっています。
今回の見直しは単なる記載ルールの整理にとどまらず、「算定ルールの精緻化」「減算項目の追加」「サービス提供体制の変化への対応」といった、実務に直結する改正が含まれている点が特徴です。
本記事では、改正のポイントを現場視点でわかりやすく解説します。
目次
この記事でわかること
- 2026年の介護給付費請求ルールの主な変更点
- ケアマネジメント業務における新たなルール
- 実務に直結する制度変更のポイント
改正の全体像|「記載ルール」から「算定実務」へ踏み込んだ見直し
従来の改正は、主に記載方法の統一が中心でした。
しかし今回の改正では、「どう計算し、どう請求するか」という算定実務そのものに踏み込んだ見直しが行われています。
そのため、請求担当者だけでなく、ケアマネジャーや管理者にも影響が及ぶ内容です。
①要介護・要支援区分の定義がより明確に
今回の改正では、利用者区分に関する定義が整理されました。
事業対象者の定義を明文化
「事業対象者」について、介護保険法施行規則に基づく対象者であることが明確に示されています。
これにより、総合事業の対象者判定における曖昧さが解消されます。
区分変更の扱いが拡張
月途中の区分変更についても整理され、
- 要介護
- 要支援
- 事業対象者
をまたぐ変更が想定された記載ルールへと拡張されました。
また、継続利用時の区分の扱いも明確化されており、「どの状態を基準に記載するか」の判断がしやすくなっています。
②単位数の算定ルールがより厳格に
単位数の算定・記載についても重要な見直しが行われています。
介護予防支援の処遇改善加算の扱い
同じ加算であっても、実施主体によって計算方法が異なる点に注意が必要です。
- 地域包括支援センター:サービスコード表の固定値を記載
- 居宅介護支援事業者:合計単位数×率(四捨五入)
この違いを誤ると、請求ミスにつながる可能性があります。
単位数「記載省略不可」のケースが拡大
これまで一部で認められていた単位数の記載省略について、対象サービスが見直され、「記載必須」となるケースが増えています。
主な対象は以下の通りです。
- 訪問看護(算定単位が「1日につき」のサービスコード、退院時共同指導加算、口腔連携強化加算、日割り計算用サービスコード)
- 看護小規模多機能型居宅介護(栄養改善加算、口腔機能向上加算、退院時共同指導加算等)
- 小規模多機能型居宅介護・介護予防小規模多機能型居宅介護(従来の初期加算に代わり、算定単位が「1日につき」のサービスコードが省略不可に変更)
「コードを入れればOK」ではなく、単位数まで明確に記載する必要があります。
③新たな減算項目の追加|請求ミスの新たな要因に
今回の改正では、新たな減算項目が追加されました。
主な新設・整理された減算
- 業務継続計画(BCP)未策定減算:福祉用具貸与(予防含む)
- 過少サービス減算:小規模多機能型・介護予防小規模多機能型・看護小規模多機能型
- サテライト体制未整備減算:看護小規模多機能型
実務上のポイント
減算は、対象サービスの単位数に対して「率を乗じて再計算」する必要があります。
単純な減点ではないため、計算ミスが発生しやすい領域です。
④介護予防サービス計画・給付管理のルール整理
ケアマネジメントに関するルールも大きく整理されています。
作成区分のルールが追加
以下のケースが明確化されました。
- 月の一部で小規模多機能型等を利用
- それ以外の期間で居宅介護支援を利用
この場合は「居宅介護支援事業者作成」として扱います。これまで曖昧だった判断基準が明文化されています。
事業所情報の記載根拠を明確化
事業所名の記載は、「被保険者証に記載された内容に基づく」というルールが整理されました。
給付管理票の作成主体を明確化
複数サービスを併用している場合の「居宅介護支援事業者」「地域包括支援センター」の役割分担が明確になっています。
⑤総合事業の対象拡大|要介護者も利用可能に
今回の改正では、総合事業の対象範囲にも変更があります。
要介護者も利用可能に
これまで主に要支援者等が対象だった総合事業について、「要介護認定者も利用可能」となるケースが追加されました。
ただし、「介護給付」「予防給付」の支給限度額の範囲内で利用する必要があります。
今回の改正は「請求の質」を問われる内容
今回の改正は、単なる記載方法の変更ではなく、算定ルールや減算、ケアマネジメントの整理まで含めた、実務全体に影響する内容となっています。
特に、「単位数の計算方法」「減算の適用」「区分変更時の扱い」「給付管理の判断」といったポイントは、理解の差がそのまま請求精度に直結する重要な部分です。
今後は「正しく書く」だけでなく、「正しく算定する」ことがより重要になります。
今回の改正を機に、自事業所の請求フローやチェック体制を見直し、安定した運営につなげていくことが求められます。
参照元:厚生労働省 「介護給付費請求書等の記載要領について」の一部改正について

執筆者紹介
「福祉現場の架け橋」として、20年の経験から心に寄り添うヒントを。
介護福祉士および保育士として、高齢者介護から障がい福祉、保育まで、世代を問わず20年以上福祉の最前線に携わる。現場での豊富な実践経験を活かし、単なる制度解説に留まらない「介護する側・受ける側」双方の気持ちに寄り添った発信が持ち味。複雑な介護保険制度も、家族の視点に立って分かりやすく紐解きます。





