テクノロジーの進化に伴い、令和8年度中の施行を目指して、GPSや通信機能を内蔵した福祉用具の給付運用ルールが新たに整理される見通しです。
これまで曖昧だった「通信機能付き用具」の扱いについて、厚生労働省の検討会で保険給付の対象範囲と、利用者の自己負担となる費用の切り分けが明確化されました。
本記事では、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が実務で直面する「給付の境界線」と運用上の留意点を解説します。
目次
この記事でわかること
- 令和8年度中に施行予定の、通信機能付き福祉用具における保険給付の対象範囲と対象外の切り分け
- GPS位置情報の通知が給付対象となるのは認知症老人徘徊感知機器(携行型)のみであること
- ケアマネ・福祉用具専門相談員が押さえるべき、機器選定時の注意点と説明・同意の実務ポイント
検討会の概要と背景
今回の検討会では、GPSや通信機能を内蔵した福祉用具をどこまで介護保険の対象(給付対象)とするか、その具体的な線引きと運用ルールが議論されました。
主な改正のポイント
これまで曖昧だった「通信機能付き用具」の扱いが整理され、以下の機能が新たに給付対象として認められる方向です。
ただし、GPS等による位置情報の通知が給付対象となるのは認知症老人徘徊感知機器(携行型)に限られます。
| 分類 | 給付対象となる機能(例) | 主な対象種目 |
|---|---|---|
| 安全確保 | 位置情報の通知(GPS等) | 認知症老人徘徊感知機器(携行型に限る) |
| 維持管理 | バッテリー状態、異常・故障の通知 | 電動車いす、特殊寝台、移動用リフト等 |
| 適正利用 | 使用状況(利用の有無)の通知 | 全般(モニタリングに活用) |
給付の「対象」と「対象外」の切り分け
もっとも重要なのは、「用具本体の貸与料」は保険対象になりますが、「通信に付随するサービスや費用」は自己負担になるという切り分けです。
1.保険給付の対象となるもの(所得に応じて9割・8割・7割給付)
- 通信機能が内蔵・専用付属された福祉用具本体の貸与料。
- 用具の故障検知や、適切なメンテナンスのためのデータ通知。
- 認知症の方が屋外へ出た際の位置情報通知(携行型に限る)。
※市販の汎用GPSトラッカーやセンサーを福祉用具に後付けしても、給付対象にはなりません。
2.保険給付の「対象外」となるもの(全額自己負担)
- 通信の実費: 月額の通信料金、アプリの導入・利用料、サブスクリプション費用。
- インフラ費用: スマートフォン・タブレット代、自宅のWi-Fiルーター設置費用。
- 付随サービス: 通知を受けた後の「警備員の駆けつけ」や「安否確認」などの役務(事業者との個別契約が必要)。
運用上の留意点(ケアマネ・相談員向け)
検討会では、導入にあたっての「説明と同意」の重要性が強調されました。
- プライバシーの保護: 位置情報を第三者(事業者や家族)に提供することへの明確な同意が必要です。
- 業務範囲の明確化: 位置通知が来たからといって、福祉用具専門相談員に「即時の駆けつけ」を義務付けるものではないことが明記されました(駆けつけは別途、自己負担の自費サービス扱い)。
- ケアプランへの記載: 導入の必要性を居宅サービス計画書に明記し、多職種で検討する必要があります。
機器選定時の注意
給付対象外の機能(例:バイタルセンシング、緊急通報機能など)が搭載された機器は、機器全体が給付対象外になります。「対象外の機能の分だけ自己負担すれば、本体部分は保険で使える」というわけではありません。
今後のスケジュール(案)
- 3月:社会保障審議会介護給付費分科会へ報告
- 4月〜5月: 改正通知・Q&Aの発出
- 4月〜6月: 福祉用具情報システム(TAIS)の改修
- 4月以降: 福祉用具情報システム(TAIS)の改修(完了時期は未定。改正通知の施行はシステム改修完了に合わせて実施)
- 6月~8月: 自治体・事業者向け説明会
参照元:厚生労働省 通信機能を備えた福祉用具について

執筆者紹介
医療と介護を繋ぐ。20年の看護経験を活かした、命と生活を守る情報発信。
透析看護を中心に、病院・在宅医療の両現場で20年以上のキャリアを持つ現役看護師。医療的ケアが必要な方の生活指導や、患者家族への支援に深く携わる。看護師としての専門知識とケアマネジャーの視点を掛け合わせ、持病を抱えながらの介護や、退院後の生活設計など、医療的な裏付けに基づいた「安心できる介護のあり方」を分かりやすく伝えます。
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