身寄りのない高齢者の増加が社会課題となる中、厚生労働省の社会保障審議会福祉部会に示された「社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要」(令和8年4月23日資料)では、新たな支援制度の創設が盛り込まれました。
地域で安心して暮らし続けられる仕組みづくりとともに、ケアマネジャーが担ってきた法定外業務の見直しも注目です。
※本記事は審議会に示された法律案の概要に基づくものであり、国会提出・成立前の段階の内容です。今後、内容が変更される可能性があります。
目次
この記事でわかること
- 身寄りのない高齢者等への日常生活・入院手続き・死後事務の支援が第二種社会福祉事業として制度化される方針
- 新事業の3つの柱(日常生活支援・入院等手続支援・死後事務支援)の具体的な内容
- 地域包括支援センターの相談対象の明確化や介護予防ケアマネジメントの委託実施により、居宅介護支援事業所のシャドウワーク軽減が期待されること
身寄りのない高齢者等への支援が法的に整備される
2020年に738万世帯だった単身高齢世帯は、2040年には1,041万世帯まで増加すると見込まれています。
こうした背景から、これまで家族や親族が担ってきた日常生活や入院手続き、死後事務などの支援が社会的課題として顕在化。
今回の改正案では、これらの支援を第二種社会福祉事業「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」として位置付ける方針が示されました。
なお、この新事業は公布後2年以内に政令で定める日から施行される予定です(施行期日は改正項目ごとに異なり、令和9年4月1日施行のもの、公布日施行のもの、公布後1年6月~3年以内に政令で定める日に施行されるものがあります)。
新事業の3つの柱
新たな事業では、地域生活を支えるための3つの支援が行われます。
日常生活支援
福祉サービスの利用援助や日常的金銭管理、書類等の預かりサービスを提供し、安心して生活できる環境づくりを支援。
入院・入所等の手続き支援
入退院・入退所等の手続き支援のほか、緊急連絡先の提供や費用の支払代行など、円滑な入院・入所を支える支援が行われます。
死後事務支援
葬儀・納骨・家財処分の契約手続き支援や行政官庁への届出などを、生前から準備しておくことを目的とした支援です。
対象者と利用料
対象となるのは、頼れる身寄りがいない高齢者等と判断能力が不十分な者です。
資力の要件に該当する者については、無料又は低額で利用できる仕組みが予定されています(全利用者が一律無料・低額になるわけではない点に留意が必要です)。
ケアマネのシャドウワークはどう変わるのか
現在、居宅介護支援事業所では、入院等の手続支援や緊急連絡先の対応など法定外業務(いわゆる「シャドウワーク」)にやむを得ず対応するケースがあることが課題として挙げられています。
改正案では、まず地域包括支援センターが担う包括的支援事業(総合相談支援事業)について、身寄りのない高齢者等からの相談を対象として明確化するとともに、地域ケア会議の実施を地域包括支援センターに委託できることを明記し、障害・生活困窮分野などとの連携を進めることとしています。
これに加えて、居宅介護支援事業所については、介護予防ケアマネジメント(第一号介護予防支援事業)を市町村から委託を受けて直接実施できるようになり、地域包括支援センターとの役割分担が進む見込みです。
これらの見直しにより、身寄りのない高齢者等への相談対応が制度的に位置づけられ、結果として居宅介護支援事業所が抱えてきた法定外業務の負担が地域全体で分散される方向に向かうことが期待されます。
地域全体で支える仕組みづくりが進む
今回の制度化により、これまで個人や事業所の善意に頼る場面が多かった支援が公的な枠組みへ位置付けられます。
身寄りのない高齢者等への支援体制の充実だけでなく、ケアマネジャーの業務範囲の適正化や地域全体で支える体制づくりにもつながる改正として期待されるでしょう。
参照元:厚生労働省 社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要

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介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。
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