居宅介護支援事業所では、介護支援専門員(ケアマネジャー)の人材確保と定着が大きな課題となっています。
最新の調査研究報告書では、担当件数の増加余地がある一方、事務負担や処遇面の課題が浮き彫りになりました。調査結果をもとに、現場の実態を整理します。
目次
この記事でわかること
- 介護支援専門員1人あたりの取扱件数は増加傾向にあるものの、事務負担や処遇面の課題から現場体制が追いついていない実態
- 処遇改善を「行っていない」事業所が41.9%で最多であり、基本報酬の引き上げが賃金に直結していない構造的な問題
- 検討委員会では、介護支援専門員へ直接配分される仕組みの必要性や、法人側の経営努力の課題が指摘されていること
ケアマネ1人あたりの取扱件数は微増──それでも「もっと増やしたい」が約6割
介護支援専門員1人あたりの利用者取扱件数は、令和6年3月時点の94.3件から令和7年10月時点の96.6件へ増加しました。 件数が伸びる一方で、59.3%の事業所が「今後さらに件数を増やしたい」と回答しています。
ただし、件数増加に向けた課題としては、「事務作業等の効率化」が70.8%で最多、「処遇の改善」が57.2%で続きました。受け入れ余地はあっても、現場体制が追いついていない状況がうかがえます。
事務職員がいない事業所は7割超──業務負担の偏りが深刻
調査では、事務職員を配置していない事業所が70.6%にのぼりました。居宅介護支援事業所では、請求業務や書類作成、連絡調整などを介護支援専門員が担うケースも少なくありません。
件数増加の課題として「事務作業の効率化」が最も多かった背景には、こうした業務負担の集中があるとみられます。本来業務であるケアマネジメントに専念しにくい構造が課題です。
処遇改善の実態──「行っていない」が最多の41.9%
調査では、介護支援専門員に対する処遇改善を「行っていない」と回答した事業所が41.9%で最多でした。改善を行っている場合の月額平均は、介護支援専門員全体で7,060円、35件以上担当する介護支援専門員では10,014円となっています。
また、年収帯は300万円以上400万円未満が36.1%で最も多い結果でした。なお、これは本調査回答者における分布です。
処遇改善加算の算定要件や対象サービスなど、制度の詳細は関連記事をご覧ください。
検討委員会が指摘する「基本報酬を上げても届かない」構造
検討委員会では、委員から「基本報酬を引き上げても、法人内で介護支援専門員へ十分還元されていない場合がある」との指摘がありました。
あわせて、「介護施設などと比べて固定費が少ないにもかかわらず処遇改善が進まないのは、法人の経営努力にも課題がある」との意見も出ています。
そのうえで、処遇改善を確実に現場へ届けるためには、介護支援専門員へ直接配分される仕組みが必要との提言も示されました。
報酬改定だけでなく、実際の賃金へ反映される制度設計が今後の論点になりそうです。
処遇改善を進めるために必要な視点
今回の調査では、担当件数の拡大余地がありながら、人材不足、事務負担、賃金水準が壁になっている実態が見えました。介護支援専門員の確保には、報酬水準の見直しとあわせて、事務負担軽減や還元の仕組みづくりが重要といえます。
なお、令和8年6月からは居宅介護支援にも処遇改善加算(加算率2.1%)が新設されます。本調査は加算新設前の令和7年10月時点のデータである点にご留意ください。
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参照元:株式会社三菱総合研究所 「居宅介護支援及び介護予防支援における令和6年度介護報酬改定による影響等に関する調査研究事業 報告書」(令和7年度老人保健健康増進等事業、令和8年3月)

執筆者紹介
介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。
介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。
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