「本人の希望」vs「家族の都合」〜温度差の裏にある“本当の理由”を探る〜

医療や介護のアイコンが散りばめられた背景に、『ケアマネ相談室 第9回 「本人の希望」vs「家族の都合」 ~温度差の裏にある”本当の理由”を探る~』と記載されたアイキャッチ画像。左側には、ひらめいたように電球を持った女性キャラクターのイラストが配置されている。

ケアマネジャーの皆さま、日々のお仕事お疲れ様です。現場の“困った”を解決する「ケアマネ相談室」です。

利用者本人は「できるだけ自宅で暮らしたい」と話しているのに、ご家族は「もう施設に入ってほしい」と希望する。

あるいは、本人は「デイサービスには行きたくない」と言う一方で、ご家族は「週3回は利用してほしい」と考えている。

このような本人と家族の意向の違いに悩んだ経験はありませんか?

今回は、本人の希望と家族の都合が食い違うとき、どのように双方の思いを整理し、本当の課題を見つけていけばよいのかについて、ベテランケアマネがお答えします。

本日のご相談
担当利用者のサービス調整をしているのですが、ご本人は「今まで通り家で過ごしたい」と希望。一方でご家族は「介護が限界なので施設入所を考えてほしい」と強く訴えています。 どちらの気持ちも理解できるため、どのように支援方針を考えればよいのか悩んでいます。本人と家族の意向が違う場合、どのように対応すればよいでしょうか?

まずは「どちらが正しいか」を決めない

本人と家族の意向が対立すると、つい「本人の希望を優先すべきか」「家族の負担軽減を優先すべきか」と考えてしまいます。

しかし、私はまず”どちらが正しいか”を決めようとしないことが大切だと考えています。

なぜなら、表面上は対立して見えても、その背景にはそれぞれ異なる事情や感情が隠れているからです。

例えば本人の「家にいたい」という言葉の裏には、

  • 住み慣れた環境を離れたくない
  • 家族に迷惑をかけている自覚がある
  • 施設への不安がある

といった思いがあるかもしれません。

一方、ご家族の「施設に入ってほしい」という言葉の裏には、

  • 介護疲れ
  • 仕事との両立の難しさ
  • 夜間対応への不安
  • 自分が倒れてしまう恐怖

などが隠れている場合があります。

まずは双方の言葉を額面通りに受け取るのではなく、その背景にある本当の理由を探ることが重要です。

現場で使える!温度差を整理する3つのステップ

ここでは双方の温度差を整理する3つのステップを紹介します!

①本人と家族を別々に話せる時間を作る

本人の前では本音を言えない家族もいますし、逆に家族の前では遠慮してしまう本人もいます。

そのため可能であれば、

  • 本人との面談時間
  • 家族との面談時間

をそれぞれ確保しましょう。

個別に話を聞くことで、表面的な意見ではなく本音が見えやすくなります。

また、支援の優先度が異なる場合もあるでしょう。やはり私達支援者は、まず命を守ることが大前提ですので、命の危機がある場合にはそちらを優先せざるを得ない場合もあります。

②「なぜそう思うのか」を繰り返し確認する

「施設に入りたくない」、「施設に入ってほしい」という言葉だけでは課題は見えてきません。

そこで、「そう思われるのはなぜですか?」「1番心配なことは何ですか?」と丁寧に掘り下げていきます。何度か理由を確認していくと、本当の困りごとが見えてくることがあります。

③双方が納得できる中間案を探す

白か黒かで考える必要はありません。

例えば、

  • デイサービス利用日数を増やす
  • ショートステイを定期利用する
  • 訪問介護を追加する
  • 一定期間だけ施設体験を行う

など、中間的な選択肢が見つかる場合もあります。

ケアマネジャーの役割は結論を押し付けることではなく、双方が納得できる着地点を一緒に探すことです。

本人と家族の思いをつなぐために

本人の希望も、ご家族の負担も、どちらも軽視できない大切なアセスメント情報です。

基本的には「ご本人の意思を尊重する」などと教科書にはありますが、そうはいかない場合も多くありますよね。

意向の違いが見えたときは、「どちらを優先するか」を急いで決めるのではなく、その言葉の背景にある気持ちや事情に目を向けてみてください。

多くの場合、対立しているように見える両者も、「安心して生活してほしい」という願いは共通しています。その共通点を見つけることが、支援の第一歩です。

本人と家族の間に立つケアマネジャーだからこそできる調整があります。焦らず丁寧な対話を重ねながら、双方が納得できる支援につなげていきましょう。

執筆者紹介 花俣

介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。

介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。

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