ケアマネジャーの皆さま、日々のお仕事お疲れ様です。現場の”困った”を解決する「ケアマネ相談室」です。
気温や湿度が高くなる初夏になると、「エアコンは体に悪いから使わない」「水はそんなに飲まなくても大丈夫」と話される高齢者の方に出会うことはありませんか?
ご本人の健康を考えると熱中症や脱水、食中毒が心配ですが、強く勧めるほど拒否感が強くなってしまうケースも少なくありません。
実は、その背景には高齢者ならではの価値観や身体機能の変化、長年続けてきた生活習慣が関係していることがあります。
今回は、「エアコン嫌い」な高齢者の方への関わり方と、熱中症・脱水・食中毒を予防するための支援のポイントについて、ベテランケアマネがお答えします。
【ご相談内容】
利用者様が「エアコンは体に悪いから使わない」「昔はエアコンなんてなかった」と言って、暑い日でも冷房をつけてくれません。
水分補給もあまり積極的ではなく、ご家族も心配しています。熱中症や脱水が心配なのですが、どのように声をかければ受け入れてもらいやすいでしょうか?また、この時期は食中毒も心配です。どのような視点で支援すればよいでしょうか?
まずは「エアコンを使わない理由」をアセスメントする
熱中症予防のためにはエアコンの活用が有効ですが、まず大切なのは「なぜ使いたくないのか」を理解することです。
高齢者がエアコンを拒否する理由はさまざまです。
例えば、
- 冷たい風が苦手
- 電気代への不安がある
- エアコンを使う習慣がない
- 「自分はまだ元気だから大丈夫」という思い込みがある
- 認知機能の低下により暑さを感じにくくなっている
といった背景が考えられます。
また、高齢者は加齢により体温調節機能が低下し、室温が高くても暑さを自覚しにくくなることがあります。
そのため、「暑くないから大丈夫」という本人の感覚だけでは安全を判断できません。
まずは説得するのではなく、「なぜ使いたくないのか」を丁寧に聞き取り、ご本人の価値観や生活歴を理解することから始めましょう。
現場で使える!行動変容につなげる3つのアプローチ
現場でお話をする時は以下を意識してみると良いでしょう。
① 価値観を否定せず共感する
「熱中症になりますよ」「危険ですよ」と正論を伝えても、ご本人は反発してしまうことがあります。
まずは、
- 「昔はエアコンなしで過ごしていましたものね」
- 「冷たい風が苦手なんですね」
など、ご本人の気持ちに寄り添う言葉をかけましょう。共感によって信頼関係が築かれると、その後の提案も受け入れられやすくなります。
② 小さな提案から始める
エアコンに抵抗がある方には、
- 除湿運転を活用する
- 28度程度の設定にする
- 日中の暑い時間帯だけ使用する
- 扇風機と併用する
など、取り組みやすい方法を提案します。支援の目的はエアコンを使わせることではなく、安全に夏を過ごしていただくことです。
③ 「本人ができる方法」を一緒に考える
「エアコンをつけてください」と指示するのではなく、
「どの方法ならできそうですか?」と、ご本人と一緒に考える姿勢も大切です。
本人が納得して選択した方法の方が継続しやすく、行動変容につながりやすくなるでしょう。
脱水予防は“喉が渇く前”の支援が重要
高齢者は加齢に伴い口渇感覚が低下するため、脱水が進んでいても自覚しにくい特徴があります。
また、エアコンを使用しない環境では発汗量が増え、気づかないうちに水分が失われていきます。
特に、
- 利尿剤を服用している方
- 糖尿病のある方
- 発熱や下痢がある方
- 認知症により水分摂取を忘れやすい方
は注意が必要です。
水分補給については、
「1日○○リットル飲みましょう」と伝えるより、「薬を飲む時にコップ1杯」、「テレビ番組が変わる時に一口」など、生活習慣の中に組み込む工夫が効果的です。
また、訪問介護員やご家族と連携しながら、水筒やペットボトルの減り具合、尿量や尿の色、食事量の変化なども確認し、脱水の早期発見につなげましょう。
初夏から意識したい食中毒予防の視点
気温と湿度が高くなる初夏は、細菌性食中毒が発生しやすい時期でもあります。
特に一人暮らしの高齢者では、
- 作り置きを長時間常温保存している
- 消費期限を過ぎた食品を食べている
- 冷蔵庫内の温度管理が不十分
といったケースも少なくありません。
また、食中毒による下痢や嘔吐は脱水を引き起こしやすく、高齢者では重症化するリスクがあります。
ケアマネジャーは訪問時に、
- 「お惣菜はいつ購入されましたか?」
- 「冷蔵庫の中は整理されていますか?」
- 「食べ残しはどのように保管していますか?」
など、生活環境にも目を向けることが大切です。必要に応じて訪問介護員やご家族と情報共有し、食品管理の見守り体制を整えていきましょう。
ケアマネジャーが担うべき多職種連携の視点
熱中症や脱水、食中毒のリスク管理は、ケアマネジャーだけで完結できるものではありません。
訪問介護員、訪問看護師、デイサービス職員、ご家族など、多職種で情報共有しながら見守ることが重要です。
例えば、
- 室温が適切に保たれているか
- 水分摂取量が減っていないか
- 食欲低下がみられないか
- 発熱や倦怠感がないか
といった情報を共有することで、体調変化の早期発見につながります。
また、ご家族が遠方に住んでいる場合は、室温計の設置や見守り機器の活用を検討することも有効です。
ケアマネジャーには、ご本人の生活を支えるチーム全体をコーディネートする役割が求められます。
熱中症・脱水・食中毒は「生活全体」を見る視点が大切
熱中症や脱水、食中毒の予防は、夏場の重要な支援のひとつです。しかし、ご本人にとっては「長年続けてきた生活習慣を変えること」でもあります。
だからこそ、正しさを伝える前に、その方の価値観や不安、生活歴を理解しようとする姿勢が欠かせません。
「なぜエアコンを使わないのか」「なぜ水を飲まないのか」という行動の背景を理解することで、その方に合った支援方法が見えてきます。
ケアマネジャーは単に注意喚起をする立場ではなく、ご本人の尊厳を守りながら安全な在宅生活を支える専門職です。
しかし、共感や工夫を重ねても、ご本人の行動がなかなか変わらないケースもあります。室温管理や水分摂取が改善せず、在宅での安全確保が難しいと判断される場合には、一時的なショートステイの利用や、施設入所の検討が必要になることもあるでしょう。
本人の思いと安全確保のバランスを取りながら、多職種やご家族と連携し、その方らしい夏の過ごし方を一緒に考えていきたいものです。
執筆者紹介 花俣
介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。
介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。
お気に入り
閲覧履歴
施設を検索する





