【熱中症・脱水予防や食中毒予防】「エアコン嫌い」な高齢者の心理を解きほぐす、初夏の促し術

『ケアマネ相談室 第15回 【熱中症・脱水予防や食中毒予防】「エアコン嫌い」な高齢者の心理を解きほぐす、初夏の促し術』と書かれたボードの横で、ひらめき電球を持つキャラクターのススメちゃんが案内しているアイキャッチ画像。

ケアマネジャーの皆さま、日々のお仕事お疲れ様です。現場の”困った”を解決する「ケアマネ相談室」です。

気温や湿度が高くなる初夏になると、「エアコンは体に悪いから使わない」「水はそんなに飲まなくても大丈夫」と話される高齢者の方に出会うことはありませんか?

ご本人の健康を考えると熱中症や脱水、食中毒が心配ですが、強く勧めるほど拒否感が強くなってしまうケースも少なくありません。

実は、その背景には高齢者ならではの価値観や身体機能の変化長年続けてきた生活習慣が関係していることがあります。

今回は、「エアコン嫌い」な高齢者の方への関わり方と、熱中症・脱水・食中毒を予防するための支援のポイントについて、ベテランケアマネがお答えします。

【ご相談内容】

利用者様が「エアコンは体に悪いから使わない」「昔はエアコンなんてなかった」と言って、暑い日でも冷房をつけてくれません。

水分補給もあまり積極的ではなく、ご家族も心配しています。熱中症や脱水が心配なのですが、どのように声をかければ受け入れてもらいやすいでしょうか?また、この時期は食中毒も心配です。どのような視点で支援すればよいでしょうか?

まずは「エアコンを使わない理由」をアセスメントする

熱中症予防のためにはエアコンの活用が有効ですが、まず大切なのは「なぜ使いたくないのか」を理解することです。

高齢者がエアコンを拒否する理由はさまざまです。

例えば、

  • 冷たい風が苦手
  • 電気代への不安がある
  • エアコンを使う習慣がない
  • 「自分はまだ元気だから大丈夫」という思い込みがある
  • 認知機能の低下により暑さを感じにくくなっている

といった背景が考えられます。

また、高齢者は加齢により体温調節機能が低下し、室温が高くても暑さを自覚しにくくなることがあります。

そのため、「暑くないから大丈夫」という本人の感覚だけでは安全を判断できません。

まずは説得するのではなく、「なぜ使いたくないのか」を丁寧に聞き取り、ご本人の価値観や生活歴を理解することから始めましょう。

現場で使える!行動変容につなげる3つのアプローチ

現場でお話をする時は以下を意識してみると良いでしょう。

① 価値観を否定せず共感する

「熱中症になりますよ」「危険ですよ」と正論を伝えても、ご本人は反発してしまうことがあります。

まずは、

  • 「昔はエアコンなしで過ごしていましたものね」
  • 「冷たい風が苦手なんですね」

など、ご本人の気持ちに寄り添う言葉をかけましょう。共感によって信頼関係が築かれると、その後の提案も受け入れられやすくなります。

② 小さな提案から始める

エアコンに抵抗がある方には、

  • 除湿運転を活用する
  • 28度程度の設定にする
  • 日中の暑い時間帯だけ使用する
  • 扇風機と併用する

など、取り組みやすい方法を提案します。支援の目的はエアコンを使わせることではなく、安全に夏を過ごしていただくことです。

③ 「本人ができる方法」を一緒に考える

「エアコンをつけてください」と指示するのではなく、

「どの方法ならできそうですか?」と、ご本人と一緒に考える姿勢も大切です。

本人が納得して選択した方法の方が継続しやすく、行動変容につながりやすくなるでしょう。

脱水予防は“喉が渇く前”の支援が重要

高齢者は加齢に伴い口渇感覚が低下するため、脱水が進んでいても自覚しにくい特徴があります。

また、エアコンを使用しない環境では発汗量が増え、気づかないうちに水分が失われていきます。

特に、

  • 利尿剤を服用している方
  • 糖尿病のある方
  • 発熱や下痢がある方
  • 認知症により水分摂取を忘れやすい方

は注意が必要です。

水分補給については、

「1日○○リットル飲みましょう」と伝えるより、「薬を飲む時にコップ1杯」「テレビ番組が変わる時に一口」など、生活習慣の中に組み込む工夫が効果的です。

また、訪問介護員やご家族と連携しながら、水筒やペットボトルの減り具合、尿量や尿の色、食事量の変化なども確認し、脱水の早期発見につなげましょう。

初夏から意識したい食中毒予防の視点

気温と湿度が高くなる初夏は、細菌性食中毒が発生しやすい時期でもあります。

特に一人暮らしの高齢者では、

  • 作り置きを長時間常温保存している
  • 消費期限を過ぎた食品を食べている
  • 冷蔵庫内の温度管理が不十分

といったケースも少なくありません。

また、食中毒による下痢や嘔吐は脱水を引き起こしやすく、高齢者では重症化するリスクがあります。

ケアマネジャーは訪問時に、

  • 「お惣菜はいつ購入されましたか?」
  • 「冷蔵庫の中は整理されていますか?」
  • 「食べ残しはどのように保管していますか?」

など、生活環境にも目を向けることが大切です。必要に応じて訪問介護員やご家族と情報共有し、食品管理の見守り体制を整えていきましょう。

ケアマネジャーが担うべき多職種連携の視点

熱中症や脱水、食中毒のリスク管理は、ケアマネジャーだけで完結できるものではありません。

訪問介護員、訪問看護師、デイサービス職員、ご家族など、多職種で情報共有しながら見守ることが重要です。

例えば、

  • 室温が適切に保たれているか
  • 水分摂取量が減っていないか
  • 食欲低下がみられないか
  • 発熱や倦怠感がないか

といった情報を共有することで、体調変化の早期発見につながります。

また、ご家族が遠方に住んでいる場合は、室温計の設置見守り機器の活用を検討することも有効です。

ケアマネジャーには、ご本人の生活を支えるチーム全体をコーディネートする役割が求められます。

熱中症・脱水・食中毒は「生活全体」を見る視点が大切

熱中症や脱水、食中毒の予防は、夏場の重要な支援のひとつです。しかし、ご本人にとっては「長年続けてきた生活習慣を変えること」でもあります。

だからこそ、正しさを伝える前に、その方の価値観や不安、生活歴を理解しようとする姿勢が欠かせません。

「なぜエアコンを使わないのか」「なぜ水を飲まないのか」という行動の背景を理解することで、その方に合った支援方法が見えてきます。

ケアマネジャーは単に注意喚起をする立場ではなく、ご本人の尊厳を守りながら安全な在宅生活を支える専門職です。

しかし、共感や工夫を重ねても、ご本人の行動がなかなか変わらないケースもあります。室温管理や水分摂取が改善せず、在宅での安全確保が難しいと判断される場合には、一時的なショートステイの利用や、施設入所の検討が必要になることもあるでしょう。

本人の思いと安全確保のバランスを取りながら、多職種やご家族と連携し、その方らしい夏の過ごし方を一緒に考えていきたいものです。

執筆者紹介 花俣

介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。

介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。

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