ケアマネジャーの皆さま、日々の業務お疲れさまです。現場の”困った”を解決する「ケアマネ相談室」です。
利用者宅への訪問は、ケアマネジャーにとって欠かせない業務ですが、近年は利用者や家族とのトラブル、ハラスメント、感染症対策、さらには支援困難ケースへの対応など、さまざまなリスクを抱えながら業務を行っています。
特に初回訪問では、「事前情報では分からなかった課題が次々と見つかった」「想像以上に家族の介護負担が重かった」といった経験をされた方も多いのではないでしょうか。
安全な支援を継続するためには、利用者のリスクだけでなく、支援者自身の安全にも目を向ける必要があります。
今回は、訪問前にできるリスクマネジメントと、想定以上に困難なケースに遭遇した際の対応について考えていきましょう。
リスクマネジメントは訪問前から始まっている
リスクマネジメントというと、事故やトラブルが起きた後の対応をイメージしがちですが、本来は「起こりうるリスクを予測し、事前に備えること」です。
ケアマネジャーの訪問業務においても同様で、訪問前の情報収集や準備が、その後の支援の質と安全性を大きく左右します。
特に初回訪問や担当変更時には、利用者本人だけでなく家族の状況、関係機関からの情報、生活環境などをできる限り整理しておくことが重要です。
「何が起こるかわからない」ではなく、「何が起こる可能性があるか」を想定することが、専門職としてのリスクマネジメントの第一歩です。
現場で確認したい4つのチェックポイント
現場では以下の点をチェックしましょう。
①利用者・家族の状況を把握する
まず確認したいのは、利用者本人や家族の状況です。
認知症による被害妄想や興奮、不安の強さ、精神疾患の既往、家族の介護負担感などは、訪問時の関わり方に大きく影響します。
また、過去にサービス事業所とのトラブルがなかったか、家族が支援に対してどのような思いを持っているかも重要な情報です。
地域包括支援センターや前任ケアマネジャー、サービス事業所などから情報を得られる場合は、できる限り確認しておきましょう。
②訪問先の環境を確認する
利用者宅だけでなく、周辺環境にも目を向けることが大切です。
駐車スペースの有無や夜間の安全性、集合住宅のセキュリティ状況、大型犬の飼育など、一見すると支援と関係のないような情報も、実際の訪問時には重要な要素になります。
また、ゴミの堆積や衛生環境の悪化が予測される場合には、感染対策や訪問方法について事前に検討しておく必要があります。
③訪問予定を事業所内で共有する
単独訪問が多いケアマネジャーだからこそ、組織内での情報共有は欠かせません。
訪問先や訪問時間を共有しておくことで、万が一のトラブルや緊急事態が発生した際にも迅速な対応が可能になります。
特に初回訪問や支援困難ケースでは、管理者や主任ケアマネジャーが状況を把握していることが重要です。
④違和感を軽視しない
ベテランのケアマネジャーほど、「何となく気になる」という感覚を大切にしています。
電話対応で怒りや不満が強く感じられる、話の辻褄が合わない、家族との連絡が極端に取りづらいなど、小さな違和感が後のトラブルにつながることもあります。
根拠が明確でなくても、「気になる」という感覚があれば、事業所内で共有し、必要に応じて同行訪問なども検討しましょう。
想定以上に困難なケースだったときの対応
どれだけ準備をしていても、実際に訪問して初めて見えてくる課題は少なくありません。
「少し物忘れがある程度」と聞いていた利用者が、実際には服薬管理や金銭管理ができず生活が破綻しかけていたり、「家族は協力的」と聞いていたものの、介護疲れから限界状態に陥っていたりすることもあります。
そのような場面では、まず冷静に状況を整理することが大切です。
①緊急性と安全性を優先する
困難ケースでは課題が複雑に絡み合っています。
そのため、まずは「今すぐ対応しなければならないことは何か」を見極める必要があります。
低栄養や脱水、服薬中断、虐待の疑い、家族の介護崩壊など、生命や生活に直結する課題がないかを優先的に確認しましょう。
②その場で全て解決しようとしない
経験の浅いケアマネジャーほど、訪問中に全てを解決しようとしてしまいがちです。
しかし、複雑なケースほど一度の訪問で全体像を把握することは困難です。
まずは事実を整理し、課題の優先順位を見極めることに集中しましょう。
初回訪問で必要なのは問題解決ではなく、正確なアセスメントです。
③1人で抱え込まない
支援困難ケースほど、ケアマネジャーが孤立しやすくなります。
しかし、困難ケースは1人で解決するものではありません。
主治医、訪問看護師、地域包括支援センター、行政機関、民生委員など、多職種や地域資源を活用しながら支援体制を構築していくことが重要です。
ケアマネジャーの役割は、すべてを背負うことではなく、必要な支援につなぐことにあります。
支援者自身を守ることも専門職の役割
利用者や家族を支えたいという思いは、ケアマネジャーにとって大切な原動力です。
しかし、その思いが強すぎるあまり、自分自身の疲労や不安を後回しにしてしまうことがあります。
困難ケースに関わった後に強い疲労感が残る、次回訪問に不安を感じる、対応に迷い続けるといった場合は、支援者側にも負荷がかかっているサインかもしれません。
利用者を守るためには、まず支援者自身が安全に働ける環境を整えることが必要です。
訪問前の準備、事業所内での情報共有、そして早めの相談を意識しながら、一人で抱え込まない支援を心掛けていきたいものです。
執筆者紹介 花俣
介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。
介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。
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