利用者・家族との距離感に悩んだら―ケアマネが意識したい境界線

『ケアマネ相談室』のタイトルと、ひらめき電球を持つキャラクター『ススメちゃん』のイラストが描かれた背景に、『第12回 利用者・家族との距離感に悩んだら ケアマネが意識したい境界線』と書かれたボードが吊るされたアイキャッチ画像。

ケアマネジャーの皆さま、日々のお仕事お疲れ様です。現場の”困った”を解決する「ケアマネ相談室」です。

利用者やご家族との信頼関係は、ケアマネジャーにとって欠かせないものといえます。

しかし、関係が深くなるほど、身寄りの方がいない人ほど「どこまで関わればいいのだろう」「断ると冷たいと思われないだろうか」と悩む場面も増えていくでしょう。

今回は、利用者・家族との良好な関係を築きながらも、ケアマネジャーとして適切な距離感を保つための「境界線(バウンダリー)」について考えていきます。

本日のご相談
担当している利用者さんやご家族と関係が良くなり、休日や夜間にも電話が来たり、介護保険とは関係ない相談を受けたりすることが増えてきました。できるだけ力になりたい気持ちはありますが、どこまで対応すればいいのか悩んでいます。

「良い関係」と「近すぎる関係」は違う

利用者や家族との信頼関係は、ケアマネジャーの支援を円滑に進めるためにとても重要です。

しかし、「困っているから断れない」「自分が何とかしなければ」という気持ちが強くなりすぎると、本来の支援範囲を超えてしまうことがあります。

その結果、ケアマネ自身が疲弊したり、公平な判断が難しくなったりすることも少なくありません。

大切なのは「親しくなること」ではなく、「専門職として安心して相談できる関係」を築くことです。

現場で意識したい3つの境界線

現場では以下の点を意識すると良いでしょう。

① 「できること」と「できないこと」を最初に伝える

契約時や関係性ができ始めた頃に、「ケアマネジャーとして対応できる内容」「事業所で対応できないこと」を丁寧に説明しておきましょう。

最初にルールを共有しておくことで、後からお断りする場面でも理解を得やすくなります。

「それは私の仕事ではありません」と線を引くのではなく、「その内容は別の支援につなぐことができますよ」と伝える姿勢が、信頼関係を保つポイントです。

② 介護保険では対応できないニーズは「地域の力」につなぐ

利用者や家族からは、「電球を交換してほしい」「ペットの世話をしてほしい」「庭の草むしりをお願いしたい」など、介護保険サービスだけでは対応できない相談を受けることがあります。

そのような時こそ、「できません」で終わらせるのではなく、地域の支え合いサービスやシルバー人材センター、社会福祉協議会の生活支援、民間サービスなど、利用できる社会資源を提案することが大切です。

ケアマネジャーが直接対応するのではなく、必要な支援につなぐことも重要なマネジメント業務の1つです。

地域資源を活用しても必要な支援が行き届かない場合や、在宅生活への不安が残る場合もあるでしょう。

そのようなときは、ご本人やご家族の意向も大切にしつつ、施設入所や短期入所などのサービスも選択肢として提案していくことが必要です。

③ 「抱え込まない」ことも専門職としての責任

利用者や家族から頼られると、「自分が何とかしなければ」と感じてしまうことがあります。

しかし、1人で抱え込み続けると、ケアマネジャー自身が疲弊し、公平な支援が難しくなることもあります。

地域包括支援センターや医療機関、多職種との連携を積極的に活用し、必要に応じて地域資源へつなぐこともケアマネジャーの大切な役割です。

専門職として信頼される距離感を大切に

利用者や家族との距離感に正解はありません。しかし、「何でも引き受けること」が良い支援ではなく、専門職として適切な境界線を持ちながら、必要な支援へ確実につないでいくことが本来の役割です。

介護保険制度だけでは解決できない困りごとも少なくありません。だからこそ、地域資源やインフォーマルサービスを活用し、「支えられる仕組み」を一緒に考えていくことがケアマネジャーの専門性につながります。

利用者、ご家族、そしてケアマネジャー自身が無理なく関われる距離感を意識しながら、安心して相談できる関係づくりを目指していきましょう。

執筆者紹介 花俣

介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。

介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。

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