40歳から64歳の現役世代にとって、給与明細から天引きされる「介護保険料」の負担増は切実な問題です。
厚生労働省が令和8年3月に公表した資料によると、令和8年度の介護納付金算定額および負担見込額の上昇が明らかになりました。
この記事では、なぜ保険料は上がるのか、私たちの手取りにどう影響するのかを解説します。
目次
この記事でわかること
- 令和8年度の第2号被保険者1人当たり介護納付金額は月額6,360円となり、前年度から158円増加した背景と推移
- 「標準給付費の増大」と「現役人口の減少」という二重の構造が、1人当たりの負担を押し上げ続ける仕組み
- 協会けんぽの介護保険料率引き上げや子ども・子育て支援金の新設が重なり、現役世代の手取り額が実質的に減少する影響
介護納付金とは何か?
介護保険制度は、65歳以上の「第1号被保険者」と、40〜64歳の「第2号被保険者」の保険料、および公費(税金)で成り立っています。
第2号被保険者の保険料は、個々の自治体に支払うのではなく、加入している医療保険(協会けんぽ、健保組合、国保など)が「介護納付金」として一括徴収し、社会保険診療報酬支払基金へ納付する仕組みです。
この納付金の総額は、全国の標準給付費等(介護給付費や地域支援事業費などの合計)の27%を賄うよう法律で定められています。
令和8年度の算定額と負担の推移
資料によると、令和8年度の介護納付金における重要な指標は以下のとおりです。
- 第2号被保険者1人当たり負担見込額(概算):年額 89,791円
- 第2号被保険者1人当たり納付金額(平均):月額 6,360円
前年度(令和7年度)の見込額が6,202円であったのに対し、月額で158円の増加となります。平成12年度の制度開始時(2,075円)と比較すると、現役世代の負担は約3倍にまで膨らみました。
なぜ負担が増え続けるのか
主な要因は「標準給付費の増大」と「現役人口の減少」です。
令和8年度の諸係数を見ると、標準給付費等の伸び率が1.205(令和6年度実績に対して約20%増)と推計されている一方で、支え手となる第2号被保険者の数は伸び率0.993と減少に転じています。
少ない人数で膨らむ介護費用を支える構造が、1人あたりの単価を押し上げている結果です。
協会けんぽの保険料率引き上げとの関連
協会けんぽの介護保険料率は、1.60%(2024年度)→1.59%(2025年度)→1.62%(2026年度)と上昇しています。適用開始は2026年(令和8年)3月分(4月納付分)からです。
被用者保険(サラリーマンなど)の納付金計算には、保険者間で報酬総額に応じて負担を配分する「総報酬割」が導入されています。
また、個人の保険料は標準報酬月額に料率を掛けて算出されるため、給与が高い方ほど保険料の増額幅は大きくなります。
「子ども・子育て支援金」との合わせ読み
現役世代にとって追い打ちとなるのが、令和8年度から本格導入される「子ども・子育て支援金(0.23%)」の存在です。
この支援金も介護保険料と同様に「医療保険料とあわせて徴収」される仕組みです。介護納付金の増額と子育て支援金の新規負担が重なることで、額面給与が変わらなくても「手取り額」が実質的に減少します。
事業所・経営者に求められる視点
介護経営者や管理者は、この負担増の背景を理解し、スタッフの処遇改善や生産性向上を議論する際の前提知識とする必要があります。
公的負担が増える中で、制度の持続可能性をどう確保していくかが、問われるでしょう。
参照元:厚生労働省 令和8年度 介護納付金の算定について、協会けんぽ 令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます、協会けんぽの介護保険料率について(年度別の料率一覧)、協会けんぽの子ども・子育て支援金率について

執筆者紹介
医療と介護を繋ぐ。20年の看護経験を活かした、命と生活を守る情報発信。
透析看護を中心に、病院・在宅医療の両現場で20年以上のキャリアを持つ現役看護師。医療的ケアが必要な方の生活指導や、患者家族への支援に深く携わる。看護師としての専門知識とケアマネジャーの視点を掛け合わせ、持病を抱えながらの介護や、退院後の生活設計など、医療的な裏付けに基づいた「安心できる介護のあり方」を分かりやすく伝えます。





