厚生労働省が公表した「介護給付費等実態統計月報(令和7年12月審査分)」によると、介護予防サービス・介護サービスともに受給者数は引き続き増加傾向にあります。
一方で、1人当たり費用はやや抑制される動きも見られ、これまでとは異なる構造変化がうかがえる結果となりました。
本記事では、9月・10月審査分との流れを踏まえながら、12月時点の最新動向を整理します。
目次
この記事でわかること
- 介護予防サービスの受給者数が100万人規模で定着し、一時的な増加ではなく構造的な拡大に移行していること
- 要介護5の受給者数が引き続き減少しており、重度化防止の取り組みが一定の成果を見せていること
- 利用者数は増加する一方で1人当たり費用は抑制傾向にあり、費用構造に新たな変化が生じていること
介護予防サービス|100万人規模が定着フェーズへ
12月審査分の介護予防サービス受給者数は100万9,600人(前年同月比4.8%増)となり、10月に初めて100万人を突破した流れがそのまま定着した形となりました。
内訳を見ると、以下のとおりです。
- 要支援1:40万5,000人(5.3%増)
- 要支援2:60万500人(4.6%増)
9月・10月時点では「100万人突破」がトピックでしたが、12月時点では、「一時的な増加ではなく、構造的な拡大」に移行したと評価できます。
背景としては以下が考えられます。
- 介護予防・重度化防止施策の浸透
- 通いの場や地域活動の拡充
- 早期介入型のケアマネジメントの定着
現場にとっては、「要介護化を防ぐ前段階への関与」がより重要になる局面といえるでしょう。
介護サービス|緩やかな増加と“重度減少”の継続
介護サービス受給者数は485万1,400人(前年同月比1.2%増)となりました。
9月(約479万人)、10月(約487万人)と比較すると、大きな変動はないものの、緩やかな増加基調は維持されています。
要介護度別の内訳は以下のとおりです。
- 要介護1:131万0,000人(2.0%増)
- 要介護2:117万4,100人(1.6%増)
- 要介護3:92万6,800人(0.8%増)
- 要介護4:88万7,700人(1.2%増)
- 要介護5:55万2,700人(0.9%減)
これまでと同様に要介護5のみ減少傾向が続いています。
この傾向は一貫しており、以下の影響が指摘できます。
- 在宅療養・看取りの選択増加
- 医療・介護連携の強化
- 重度化防止施策の成果
単なる利用者増ではなく、「状態の分布が変わりつつある」点が重要です。
サービス形態別|在宅シフトがさらに鮮明に
12月審査分の内訳は以下のとおりです。
- 居宅サービス:360万400人(1.9%増)
- 地域密着型サービス:95万2,200人(0.5%増)
- 施設サービス:98万3,600人(0.3%増)
10月時点でも見られた傾向ですが、改めて整理すると、
- 居宅サービス:増加幅が大きい
- 施設サービス:ほぼ横ばい
- 地域密着型:微増
という構造が浮き彫りになっています。
これは単なる需要増ではなく、「可能な限り在宅で生活する」という政策・利用者双方の志向が定着していることを示しています。
費用額と1人当たり費用|“総額増・単価抑制”の構図
費用面では、
- 介護予防サービス:283億3,300万円(4.6%増)
- 介護サービス:9,795億4,300万円(0.5%増)
となり、総額としては引き続き増加傾向です。
一方、1人当たり費用は
- 介護予防:約2万8,100円(0.2%減)
- 介護サービス:約20万1,900円(0.7%減)
と、前年同月比で減少しています。
9月・10月では「費用も増加」という傾向でしたが、12月時点では
- 利用者数は増加
- しかし単価は抑制
という状態です。
この背景には、
- 軽度者の増加(予防・要介護1〜2の伸び)
- 在宅サービス中心の利用構造
- サービス提供の効率化
などが複合的に影響していると考えられます。
9〜12月の流れから見える3つの重要ポイント
今回の一連の統計(8月〜12月)を通して、現場が押さえるべきポイントは大きく3つです。
① 介護予防は“拡大フェーズ”から“定着フェーズ”へ
10月の100万人突破は一過性ではなく、12月でも維持。今後は標準的な利用規模として定着する可能性が高い状況です。
② 重度者減少という構造変化
要介護5の減少は継続しており、「重度化させない仕組み」が一定程度機能していると見られます。
③ 利用者増 × 単価抑制の時代へ
総費用は増え続ける一方で、1人当たり費用は抑制傾向。 これは今後の制度運営や報酬改定にも影響を与える重要な兆候です。
“予防・在宅・効率化”が今後のキーワード
令和7年12月審査分の統計からは、これまでの流れがさらに明確になりました。介護予防サービスは100万人規模で定着し、要介護サービスでは重度者が減少する一方、在宅中心の利用が広がっています。
また、費用面では総額が増加しながらも、1人当たり費用は抑制されるという新たな局面に入りました。
今後の介護現場では、早期介入による予防の強化に加え、在宅支援体制の充実、そして効率的なサービス提供の視点がこれまで以上に重要になります。
こうした変化に対応するためには、単に制度を理解するだけでなく、実際の利用動向や地域特性を踏まえた柔軟な運営が求められるでしょう。
参照元:厚生労働省 介護給付費等実態統計月報(令和7(2025)年12月審査分)結果の概要、介護給付費等実態統計月報(令和7(2025)年10月審査分)結果の概要、介護給付費等実態統計月報(令和7(2025)年9月審査分)結果の概要

執筆者紹介
「福祉現場の架け橋」として、20年の経験から心に寄り添うヒントを。
介護福祉士および保育士として、高齢者介護から障がい福祉、保育まで、世代を問わず20年以上福祉の最前線に携わる。現場での豊富な実践経験を活かし、単なる制度解説に留まらない「介護する側・受ける側」双方の気持ちに寄り添った発信が持ち味。複雑な介護保険制度も、家族の視点に立って分かりやすく紐解きます。





