令和8年度 厚生労働省予算案|介護分野の注目ポイントをわかりやすく解説

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高齢化が進む日本では、介護サービスの需要が年々高まっています。こうした中、厚生労働省が示した令和8年度予算案(老健局関係)では、介護分野に約3.7兆円が計上されました。介護人材の処遇改善や認知症施策、介護DXの推進、地域包括ケアシステムの強化など、介護の現場や利用者に関わるさまざまな取り組みが打ち出されています。

介護分野にどれだけの予算が投じられ、どの政策が重点的に進められるのかは、介護事業者やケアマネジャーだけでなく、利用者や家族にとっても重要な関心事です。

本記事では、令和8年度の老健局予算案をもとに、介護分野の予算規模と主要施策、注目ポイントをわかりやすく解説します。

老健局関係の予算総額と前年度比

厚生労働省老健局の令和8年度予算案は、約3兆7,142億円です。前年度の約3兆6,665億円から477億円増(+1.3%)となり、介護分野の予算は引き続き増加傾向にあります。なお、この総額にはデジタル庁に計上されている関連予算も含まれています。

老健局が直接計上している予算(他局計上分を除く)は、約3兆4,702億円です。予算の大半は、介護保険制度に基づくサービス提供のための費用に充てられています。具体的には、介護サービスの確保に関する予算は約3兆4,598億円で、前年度より増額されています。

これは、高齢者人口の増加に伴う介護サービス需要の拡大に対応するためのものです。

主要施策ごとの予算配分

令和8年度の老健局予算案では、介護人材の確保や認知症施策の推進、介護DXの推進など、今後の介護体制を支える施策に重点が置かれています。

主な施策は以下のとおりです。

介護人材の確保と処遇改善

介護分野では人材不足が大きな課題となっており、介護職員の処遇改善や職場環境の改善を進めるための取り組みが引き続き重視されています。

令和8年度は、介護報酬改定による賃上げに加え、研修やキャリア支援などを通じた人材確保策が進められる予定です。

なお、令和7年度補正予算では、人材流出を防ぐための緊急対応として、賃上げや職場環境改善を支援するために1,920億円が計上されています。この対応が、令和8年度の介護報酬改定(+2.03%)にもつながっているといえるでしょう。

認知症施策の推進

認知症高齢者の増加を見据え、地域で認知症の人を支える体制づくりも重要なテーマとなっています。認知症カフェの運営支援や認知症サポーターの養成など、地域全体で認知症の人と家族を支える取り組みが引き続き推進されます。

本人だけでなく家族を含めた支援体制の強化も重要な課題です。

介護DXの推進

介護現場の業務負担を軽減し、サービスの質向上につなげるため、ICTやデータ活用の推進にも予算が充てられています。介護情報のデータベースであるLIFE(科学的介護情報システム)の活用促進やICT導入支援などを通じて、科学的介護の推進が図られます。

こうした取り組みは、介護現場の生産性向上や人材不足への対応につながる重要な施策です。

地域包括ケアシステムの推進

高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるよう、医療・介護・生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの整備も引き続き進められます。

地域包括支援センターの機能強化や、在宅サービスの充実などを通じて、地域で高齢者を支える体制づくりが推進される予定です。

介護施設の整備・防災対策

介護サービスの提供体制を強化するため、施設整備や防災対策への支援も行われます。具体的には、スプリンクラー設備の整備や施設の大規模修繕への補助、BCP(業務継続計画)に基づく訓練支援などです。

災害時でも介護サービスを継続できる体制の強化が図られます。

令和8年度の注目ポイント|介護報酬改定と人材確保対策

令和8年度の介護政策では、介護報酬改定(改定率+2.03%)を中心に、人材確保やサービス提供体制の維持・強化に向けた施策が進められます。介護現場では人材不足や物価高騰の影響が続くなか、今回の予算案では処遇改善や働きやすい環境づくり、地域でのサービス確保など、幅広い支援策が盛り込まれています。

主な取り組みは次のとおりです。

介護報酬改定と処遇改善の流れ

今回の介護報酬改定の背景には、令和7年度補正予算による緊急的な支援があります。政府は、人材流出を防ぐための対策として、賃上げや職場環境改善を支援する事業に1,920億円を計上しました。

この補正予算による支援を「橋渡し」としながら、令和8年度の介護報酬改定では、より継続的な形で介護職員の処遇改善を進めていく方針です。賃金面の改善だけでなく、ICTの導入や業務改善など、介護現場の負担軽減につながる取り組みも重要なテーマとなっています。

訪問介護の人材不足への重点対策

介護分野の中でも、特に人材不足が深刻とされているのが訪問介護です。高齢者が住み慣れた地域で生活を続けるためには訪問サービスの維持が不可欠ですが、担い手不足が大きな課題となっています。

こうした状況に対応するため、地域のボランティアや生活支援サービスなど多様な担い手を活用するタスクシェア・タスクシフトの推進が進められます。また、通所介護(デイサービス)事業所が訪問機能を追加できるよう支援する取り組みや、柔軟な人員配置を可能にするサテライト拠点の設置支援なども盛り込まれた施策です。

ケアマネジャーの確保と負担軽減

人材確保の対象は介護職員だけでなく、ケアマネジャー(介護支援専門員)にも及びます。資格を持ちながら現場で働いていない潜在ケアマネジャーの復職支援を進めるほか、相談業務や事務作業など本来業務以外の負担(いわゆるシャドウワーク)を軽減する取り組みも進められる予定です。

こうした対策により、ケアマネジャーがケアマネジメント業務に専念できる環境づくりが進められる見込みです。

介護DXの推進と生産性向上支援

介護現場の業務負担を軽減し、サービスの質向上につなげるため、介護DXの推進も重要な柱となっています。ICTや介護テクノロジーの導入を進めるだけでなく、都道府県単位で介護生産性向上総合相談センターを設置し、事業所の生産性向上の取り組みを支援する体制づくりが進められます。

こうした支援により、ICT導入や業務改善に関する相談や支援をワンストップで受けられる環境が整備される見込みです。

離島・中山間地域のサービス確保対策

人口減少が進む地域では、介護サービスの担い手不足や事業所の維持が課題となっています。令和8年度の予算では、こうした地域でのサービス提供体制を維持するため、離島・中山間地域等のサービス確保対策も強化されています。

具体的には、関連する対策予算が10百万円から20百万円へ倍増される予定です。また、市町村の判断で柔軟なサービス提供を可能にする「離島等相当サービス」の活用促進も進められます。こうした取り組みにより、離島や中山間地域でも必要な介護サービスを維持する体制づくりが進められる見込みです。

物価高騰への対応とサービス継続支援

近年の物価上昇の影響を受け、介護事業所の経営環境も厳しさを増しています。こうした状況を踏まえ、令和7年度補正予算ではサービス継続支援事業(488億円)も計上されています。

燃料費や食料品費の高騰に対応するため、訪問サービスの移動経費や施設での食費などへの支援が行われ、介護サービスの安定的な提供を支える施策です。

事業者・利用者への影響

令和8年度の介護分野の予算や施策は、介護事業者の経営環境だけでなく、サービスを利用する高齢者や家族にもさまざまな影響を与えると考えられます。

介護事業者への影響

介護事業者にとっては、介護報酬改定(+2.03%)が大きなポイントです。処遇改善の流れが継続されることで、介護職員の賃金改善や人材確保の取り組みが進むことが期待されています。一方で、物価上昇や人材不足といった経営課題が続く中、事業所の経営安定に向けた対応も引き続き重要になります。

また、ICTや介護テクノロジーの導入、データ活用の推進など、介護DXへの対応も事業者にとって重要なテーマです。業務効率化や生産性向上に向けた取り組みが求められる一方、各自治体に設置される生産性向上の相談窓口などを活用することで、導入支援を受けられる環境も整備されつつあります。

さらに、訪問介護の人材不足対策や地域でのサービス確保の取り組みなど、地域の実情に応じたサービス提供体制の整備も進められる予定です。特に人口減少地域では、離島・中山間地域向けの支援策などを活用しながら、サービスの継続を図ることが求められるでしょう。

利用者・家族への影響

利用者やその家族にとっては、介護サービスの安定的な提供体制が維持されるかどうかは、大きな関心事です。今回の施策では、人材確保や地域包括ケアの推進を通じて、地域で介護サービスを受け続けられる体制づくりが進められます。

また、低所得の高齢者に対する介護保険料の軽減措置についても、公費による支援が引き続き実施される予定です。これにより、所得の少ない高齢者の保険料負担を抑える仕組みが維持されるとされています。

さらに、ICTやデータ活用の推進により、介護サービスの質向上やケアの個別化が進むと期待されています。利用者一人ひとりの状態に合わせたケアの提供につながる取り組みです。

今後の介護政策の方向性

令和8年度の厚生労働省予算案では、介護人材の確保や処遇改善、介護DXの推進、地域包括ケアシステムの強化など、介護サービスを持続的に提供するための施策が幅広く示されています。特に、介護報酬改定や人材確保対策、地域でのサービス維持に向けた取り組みは、今後の介護政策の方向性を示す重要なポイントといえるでしょう。

高齢化がさらに進む中、介護サービスの需要は今後も増加すると見込まれています。今回の予算で示された施策が、介護現場の課題解決やサービスの質向上につながるのか、今後の制度運用や地域での取り組みがどのように進んでいくのか、引き続き注目されます。

参照元:厚生労働省 令和8年度予算案の概要(老健局)

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