ケアマネジャーの皆さま、日々のお仕事お疲れ様です。現場の”困った”を解決する「ケアマネ相談室」です。
「なんとなく嫌な感じがする」「今日は少し様子がおかしい気がする」訪問先でそんな違和感を覚えた経験はありませんか?
利用者やご家族との信頼関係づくりはケアマネジャーにとって大切な仕事ですが、その一方で、自分自身の安全については後回しになってしまうことも少なくありません。
2026年6月には、埼玉県で訪問中のケアマネジャーが命を落とす痛ましい事件が発生し、介護業界全体に大きな衝撃を与えました。
しかし、この問題は決して特別なケースだけではありません。多くのトラブルやハラスメントは、小さな違和感や危険サインから始まることがあります。
本記事では、訪問時に意識したい危険サインと、違和感を見過ごさず行動につなげるためのポイントについて、ベテランケアマネがお答えします。
まず大切なのは「違和感」を軽視しないこと
ケアマネジャーは利用者支援を第一に考える専門職です。そのため、「自分が我慢すればいい」「利用者さんも大変だから」と考え、違和感を飲み込んでしまうことがあります。
しかし、実際にトラブルへ発展したケースを振り返ると、「最初から何かおかしいと感じていた」という声が少なくありません。
もちろん、違和感を覚えたからといって、すべてが危険な状況とは限りません。しかし、自分の感覚を無視し続けることも避けたいところです。
「なぜ不安を感じたのか」「何に違和感を覚えたのか」を一度立ち止まって整理することが、自分自身を守る第一歩になります。
現場で注意したい危険サイン
ご家族や親族の方など、以下のような様子がみられる場合は少し注意をすることが必要です。
① 急激な感情の変化がある
穏やかに話していたと思ったら突然怒り出す、声を荒らげる、物に当たるなど、感情のコントロールが不安定な様子が見られる場合は注意が必要です。
特に、訪問のたびに怒り方が強くなっている場合や、特定の職員に対して攻撃的な言動が続く場合は、事業所内で情報共有を行いましょう。
② 過度な要求や執着が見られる
「今すぐ来てほしい」「他の利用者より優先してほしい」「夜間や休日でも対応してほしい」といった要求が繰り返される場合も注意が必要です。
最初は小さなお願いでも、境界線が曖昧になることで要求がエスカレートしていくことがあります。
ケアマネジャー個人が抱え込まず、事業所として対応方針を統一することが大切です。
③ 個人的な情報を聞き出そうとする
「どこに住んでいるの?」「家族はいるの?」「休みの日は何をしているの?」など、業務に関係のないプライベートな情報を何度も聞かれる場合は注意しましょう。
親しさと距離の近さは別物です。信頼関係を築く上で、自己開示が必要な場合もありますが、個人情報は必要以上に開示せず、あくまでも事業所職員として対応する姿勢を意識しましょう。
④ 密室や一対一の状況を強く求める
「家族がいない時に来てほしい」「他の人には聞かれたくない」「1人で来てほしい」といった要望が続く場合も慎重な判断が必要です。
もちろん正当な理由がある場合もありますが、不安を感じる場合は同行訪問や事前共有など、安全確保の方法を検討しましょう。
現場で実践したい3つの安全対策
違和感を感じた場合は以下のような対策をしておきましょう。
① 違和感は必ず記録する
「怖かった」だけではなく、「大声を出した」「机を叩いた」「威圧的な発言があった」など、具体的な事実として記録を残します。
そして、その行動の背景にはどんなことが考察できるのか、を書くようにしましょう。
後から振り返ったときの重要な情報となり、事業所としての対応にも役立ちます。
② 1人で判断しない
危険かどうか迷う段階でも、管理者や主任ケアマネへ相談しましょう。第三者の視点が入ることで、客観的な判断がしやすくなります。
些細なことでも相談することや、場合によっては自治体や各関係機関交えて共有しておくことが大切です。
③ 「大丈夫だろう」をやめる
経験を積むほど、「今まで何もなかったから大丈夫」と考えがちです。
しかし、安全管理において最も避けたいのは、慣れによる油断です。少しでも不安がある場合は、同行訪問や訪問時間の調整など、できる対策を講じましょう。
ケアマネジャー自身を守ることも大切な支援
利用者支援を続けるためには、まずケアマネジャー自身が安全であることが大前提です。
利用者やご家族の生活を支える仕事だからこそ、「自分のことは後回し」と考えてしまう方も多いでしょう。しかし、あなたが安心して働き続けられなければ、継続的な支援も難しくなってしまいます。
違和感は、決して気のせいではないかもしれません。当たり前のことですが、小さな不安や引っかかりを見過ごさず、記録する、相談する、共有するという行動につなげることが大切です。
利用者を守ることと同じくらい、自分自身を守ることも専門職として重要な責任です。ぜひ明日からの訪問で、「違和感を見逃さない」という視点を意識してみてください。
また、今回の埼玉県の事件を受けて、厚生労働省は介護支援専門員をはじめとする在宅介護従事者の安全確保について通知を発出しています。
複数名訪問や相談体制の整備、カスタマーハラスメント対策など、事業所として取り組むべき内容がまとめられていますので、あわせてご確認ください。
▶︎ケアマネジャーの安全確保を徹底へ|厚生労働省が通知を発出(Vol.1508)
参照元:厚生労働省 介護支援専門員等の在宅介護従事者の安全確保の徹底について、介護現場におけるハラスメント対策
執筆者紹介 花俣
介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。
介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。
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