東京都目黒区が公表した「第10期介護保険事業計画基礎調査・高齢者の生活に関する調査 報告書(本編)」のうち、「サービス提供事業所調査」および「居宅介護支援事業所調査」「要介護認定者調査」をもとに、介護サービス事業者の実態を整理します。
本調査は、地域のサービス供給体制や人材状況を把握し、今後の計画策定に活用する基礎資料として実施されています。
目次
この記事でわかること
- 目黒区の居宅介護支援事業所は「4人」体制が最多で、少人数運営のなか人材確保と離職対策が大きな課題となっている
- 介護サービス利用者の需要は福祉用具やデイサービスなど在宅系が中心であり、供給側の人員配置の安定が求められている
- 事業所の半数以上が「介護報酬の低さ・採算性」を運営課題に挙げており、ICT対応や制度改正への対応負担も重なっている
事業所の種別・規模・設立年別内訳
サービス種別では「訪問介護」19.7%、「地域密着型通所介護」18.3%、「訪問看護」14.4%と在宅系サービスが中心です。
開設年は「平成25〜30年」32.6%、「平成24年以前」26.1%で、半数以上が長期運営事業所となっています。
規模は「11〜20人」41.2%が最多である一方、居宅介護支援では従事職員数『4人』が28.3%で最も多く、次いで『2人』が26.1%、『3人』が17.4%となっており、少人数体制の事業所が中心です。
目黒区の高齢者全体の要介護認定状況
高齢者の生活に関する調査では「要介護認定なし」が84.3%を占めており、認定を受けている方では「要介護1」4.2%、「要支援1」3.4%と軽度者が中心です。
こうした構成から、介護予防や軽度者支援の需要が高く、在宅サービスの重要性が高い地域特性が読み取れます。
サービス提供体制と稼働状況
要介護認定者調査では、利用しているサービスとして福祉用具(55.4%)、デイサービス・デイケア(47.8%)、訪問看護・訪問リハビリテーション(40.6%)、訪問介護(30.4%)が上位を占める結果に(複数回答)。
在宅系サービスへの需要が高く、供給側では人員配置の確保が安定したサービス提供の鍵となっています。
人材確保・離職・処遇改善加算の取得状況
直近1年間の採用は常勤平均0.7人、離職は0.4人と、少人数体制の中で人材の入替が発生しました。
また、常勤職員の勤続年数は「5年以上」が62.3%と高い一方で、短期離職も一定数存在しており、定着と流動の両面が見られます。
処遇改善については「介護職員等処遇改善加算」を活用した賃金改善が進められている状況です。
介護報酬改定への対応状況
報酬改定に伴い、加算取得や体制整備が求められており、小規模事業所では対応負担が相対的に大きい傾向が見られます。制度理解と実務対応の両立が課題です。
家族介護者との連携
要介護認定者調査では、困りごとへの協力を得られる家族・親族が『1時間以上かかる距離に住んでいる』が26.1%で最多、『家族・親族はいない』も6.9%となっています(複数回答)。
家族が遠方に住んでいたり、身寄りのない利用者も一定数おられるなかで、事業所と家族との情報共有や支援調整の重要性が高い状況です。
目黒区の事業者が直面する経営課題
収支は「変わらない」37.0%、「やや増えた」23.9%、「やや減った」17.3%と分散しています。
人材確保の難しさ、小規模運営による業務負担、制度対応コストの増加が重なり、経営の安定化が大きな課題となっています。特に在宅サービス中心の構造において、人材確保と生産性向上の両立が今後の重要な論点といえるでしょう。
参照元:目黒区 第10期介護保険事業計画基礎調査・高齢者の生活に関する調査 報告書、要介護認定者調査(13ページから54ページ)、居宅介護支援事業所調査(189ページから224ページ)、サービス提供事業所調査(227ページから266ページ)

執筆者紹介
介護現場の「伴走者」。豊富な相談実績から、最適な選択肢を提案します。
介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)での相談援助職を経て、現在は多角的な視点から介護支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士・ケアマネジャーの3つの資格を保持し、制度の裏側から現場のリアルまでを熟知。これまで数多くの家族の悩みに向き合ってきた経験から、読者の「今、どうすればいい?」に対する的確な解決策を提示します。





