介護職員の賃上げと職場環境改善支援事業Q&A(第2版)を読み解く|現場への影響とポイント

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2026年3月、厚生労働省より「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業に関するQ&A(第2版)」が公表されました。

本資料は、令和7年度補正予算に基づく支援事業について、事業所からの疑問点を整理した重要な補足資料です。本記事では、その内容をわかりやすく整理し、現場にどのような影響があるのかを解説します。

なお、第2版では、第1版に対して以下の変更を追加。 問6-2(役員等の賃金改善対象への包含)および問12-2~12-4(地域包括支援センターの委託関係の取り扱い)が新たに追加されたほか、問9(ケアプランデータ連携システムと同等の機能を有するシステムの一覧)が更新されています。

第1版のQ&Aについて、実務上の注意点を中心に整理した内容は、以下の記事で詳しく解説しています。

介護分野の賃上げ・職場環境改善支援事業Q&Aのポイント整理|実務担当者が押さえておきたい注意点

この記事でわかること

  • 令和7年度補正予算に基づく賃上げ・職場環境改善支援事業の対象範囲と、補助金の使途に関するルール
  • 第2版で新たに追加された役員の賃金改善対象や、地域包括支援センターの委託関係における実務上の取り扱い
  • 本事業を活用するうえで現場が押さえておくべきメリットと課題

支援事業の基本|賃上げと職場環境改善を同時に推進

本事業は、令和7年度補正予算に基づき実施されるもので、介護現場における人材確保と定着を目的として、「賃上げ」と「職場環境の改善」を一体的に進める点が特徴です。

補助金の使途は大きく次の2つに区分されています。

  • 賃金改善経費(職員の基本給や手当の引き上げ)
  • 職場環境改善等経費(研修や業務改善に関する取り組み)

このうち賃金改善については、補助金の趣旨が「緊急的な支援」であることから、可能な限り速やかに実施することが求められています。

また、賃金改善の実施期間は、補助金の支給時期によって異なり、令和8年3月末までに補助金の支給を受けた場合、実施期間は令和7年12月から令和8年3月末までです。一方、令和8年4月以降に支給を受けた場合は、令和7年12月から各自治体が定める実績報告書の提出期限までが対象期間となります。

このように本事業は、単なる賃上げにとどまらず、職場環境の見直しとあわせて実施することで、介護人材の確保・定着につなげることを目的とした制度といえます。

対象となる事業所|原則は「令和7年12月にサービス提供」

本事業の対象となるのは、原則として令和7年12月に介護サービスを提供している事業所です。基準月についても、基本的には同月(令和7年12月)が用いられます。

一方で、現場の実情に配慮し、一定の条件下では基準月の変更が認められています。具体的には、次のようなケースです。

  • 感染症のまん延や大規模改修などにより、12月の実績が著しく低い場合
  • 月遅れ請求などにより、12月分の報酬が正しく反映されない場合
  • 令和8年1月〜3月に新規開設された事業所

これらの場合には、令和7年12月から令和8年3月までの間で、事業所の判断により別の月を基準月として選択することが可能とされています。

なお、基準月を変更する場合でも、原則として都道府県への事前届出は不要とされており、事務負担の軽減にも配慮されています。

ただし、具体的な運用やスケジュールは自治体ごとに異なるため、実際の申請にあたっては、各都道府県の実施要綱を確認することが重要です。

賃上げの対象範囲|「介護職だけではない」

本事業における「介護従事者」は、一般的にイメージされる介護職員に限らず、介護現場を支える幅広い職種が対象とされています。

具体的には、以下のような職種が含まれます。

  • 介護職員
  • 医師・歯科医師・薬剤師
  • 保健師・看護師・准看護師
  • 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
  • 機能訓練指導員(柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師等)
  • 精神保健福祉士・介護支援専門員(ケアマネジャー)・計画作成担当者 社会福祉士・生活相談員・支援相談員
  • 管理栄養士・栄養士・歯科衛生士・調理員
  • 事務職員など

このように、直接介護に関わる職種だけでなく、サービス提供を支える周辺職種も対象に含まれる点が特徴です。

また、法人本部の職員についても、対象となる介護サービス事業所の業務に従事していると判断できる場合には、賃金改善の対象に含めることが可能とされています。

一方で、補助対象となっていない事業所の職員は対象外となるため、どの職員が該当するかについては、事業所ごとに整理しておく必要があります。

このように本事業は、介護職の賃上げにとどまらず、現場全体の処遇改善を図る仕組みとなっている点が重要です。

役員も対象になる?|賃上げ対象範囲の注意点

本事業では、原則として「介護従事者」が賃金改善の対象となりますが、条件によっては法人の役員(代表者など)も対象に含めることが可能とされています。

具体的には、次のようなケースです。

  • 代表取締役や役員が、実際に介護サービスの提供業務を行っている場合
  • ケアマネジメント業務などを兼務している場合
  • 職員が少なく、役員が現場業務を担っている場合

このように、形式上の役職ではなく、実態として介護サービス事業所の業務に従事しているかどうかが判断基準となります。

例えば、職員が1名のみで、代表者自身がケアプラン作成を行っている居宅介護支援事業所などでは、当該役員を賃金改善の対象に含めることが認められています。

ただし、あくまで対象となるのは「補助金の対象となっている事業所の業務に従事している場合」に限られるため、役員であれば無条件に対象になるわけではありません。

職場環境改善費の使い道|何に使える?何に使えない?

本事業における「職場環境改善等経費」は、すべての改善活動に自由に使えるわけではなく、使途が一定の範囲に限定されている点に注意が必要です。

まず、対象となる主な経費は次のとおりです。

  • 研修費(職場環境改善に資するもの)
  • 人材確保に関する経費(求人広告、チラシ作成、人材紹介手数料など)
  • 業務改善のための取組にかかる費用(会議費、専門家の派遣費用など)

これらは、単なる設備投資ではなく、人材確保や業務の見直しといった「組織運営の改善」に関する取り組みに充てることが想定されています。

一方で、対象外となる経費も明確に示されています。

  • 介護テクノロジー(ICT・ロボット等)の機器購入費
  • パソコンや端末などの設備購入費

これらは別の補助事業で対応すべきものとされており、本事業では充当できません。

また、研修費についても、単に義務付けられている研修ではなく、職場環境の改善につながる内容であることが求められます。

このように職場環境改善経費は、「何にでも使える補助金」ではなく、あくまで人材確保や働きやすい職場づくりに直結する取り組みに限定されている点を理解しておくことが重要です。

地域包括支援センターの扱い|実務上の注意点

本事業において、地域包括支援センターはすべてが対象となるわけではなく、介護予防支援事業者としての指定を受けている場合に限り対象とされています。

また、実務上のポイントとして重要なのが、委託関係がある場合の取り扱いです。

地域包括支援センターが、介護予防支援や介護予防ケアマネジメント業務を指定居宅介護支援事業所に委託している場合、補助金の申請主体はあくまで地域包括支援センターとなります。

そのうえで、交付された補助金の取り扱いについては次の点に注意が必要です。

  • 委託先の居宅介護支援事業所も、賃金改善等の対象となる
  • 原則として、委託料(原案作成委託料)に相当する額は委託先へ配分する
  • 委託先においても、その配分額以上の賃金改善等を実施する必要がある

さらに、実績報告の際には、地域包括支援センター自身の賃金改善額に加え、委託先事業所における賃金改善額も含めて、合算して報告する必要があります。

なお、委託先が賃金改善の実施を希望しない場合などには、一定の条件のもとで柔軟な配分も認められていますが、基本的には委託先も含めた対応が求められる点に留意が必要です。

このように、地域包括支援センターにおける本事業の活用では、委託先との連携や資金配分の整理が重要な実務ポイントとなります。

現場への影響|メリットと課題

本事業は、介護現場における人材確保や処遇改善を後押しする施策である一方、運用面では一定の対応が必要となる点にも注意が必要です。ここでは、現場への主な影響を整理します。

メリット

まず大きなメリットは、賃上げの原資を確保しやすくなる点です。補助金を活用することで、基本給や手当の引き上げが進めやすくなり、人材の定着や採用強化につながることが期待されます。

また、職場環境改善経費を活用することで、研修や業務改善の取り組みを進めやすくなり、働きやすい職場づくりの推進にも寄与します。

さらに、役員や事務職なども含めた幅広い職種が対象となるため、事業所全体での処遇改善を図れる点も特徴といえるでしょう。

課題

一方で、運用面ではいくつかの課題もあります。

まず、計画書や実績報告書の作成・提出が必要となることから、一定の事務負担が発生する点です。提出時には誓約ベースでの対応が基本とされていますが、必要に応じて根拠資料の提出が求められる場合があります。

また、これらの根拠資料については、2年間の保存が必要とされており、日頃からの記録管理が重要となります。

さらに、事業スケジュールや運用ルールは都道府県ごとに異なるため、自治体ごとの実施要綱を確認しながら対応する必要がある点にも注意が必要です。

このように本事業は、現場にとってメリットの大きい制度である一方、適切に活用するためには、事務対応や制度理解も含めた準備が求められるといえるでしょう。

賃上げだけでなく「組織づくり」がカギ

今回の支援事業は、単に賃金を引き上げるための制度ではなく、介護現場における人材確保と定着、さらには業務改善を含めた職場環境の見直しを一体的に進めることを目的としています。

補助金は、賃金改善と職場環境改善の両面に活用することが求められており、短期的な処遇改善だけでなく、中長期的に働き続けやすい職場づくりにつなげていくことが重要です。

特に、人材不足が続く中では、単なる賃上げだけでは解決が難しい課題も多く、業務の見直しや役割分担の整理、研修体制の充実などを組み合わせた取り組みが求められます。

その意味でも、本事業は「給与を上げるための補助金」ではなく、現場の運営体制や働き方そのものを見直す契機となる制度といえるでしょう。

今後は、各自治体の実施要綱やスケジュールを確認しながら、自事業所の課題に即した形で活用方法を検討し、持続可能な組織づくりにつなげていくことが重要です。

参照元:厚生労働省 「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業 に関するQ&A(第2版)」の送付について

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