葛飾区が公表した高齢者実態調査からは、在宅生活を続けるうえで見過ごせないリスクとして「転倒」が浮き彫りになっています。
骨折や入院のきっかけとなるだけでなく、その後の要介護化や家族の介護負担、さらには介護離職へとつながるケースも少なくありません。
本記事では、葛飾区の「調査結果報告書2025」をもとに、転倒予防の重要性と在宅介護の実態を関連づけながら、今後求められる対策についてわかりやすく解説します。
目次
この記事でわかること
- 葛飾区の高齢者実態調査で、介護が必要になった原因の第1位は「骨折・転倒(24.0%)」であり、約42%が過去1年間に転倒を経験している
- 1人暮らし高齢者が33.1%を占め、外出を控えている人も34.2%にのぼり、転倒リスクと生活の孤立化が重なる構造的課題が浮き彫りになっている
- 在宅介護実態調査では介護離職が13.5%に達し、介護者の最大の不安は「認知症状への対応(41.2%)」で、転倒予防が本人だけでなく家族の生活を守る鍵となっている
転倒は“生活を大きく変える引き金”になる
調査では、介護が必要になった原因の第1位が「骨折・転倒(24.0%)」でした。
さらに、
- 過去1年間に転んだ経験あり:約42%
- 転倒に対する不安あり:約72.5%
と、多くの高齢者が転倒リスクを抱えて生活している実態が明らかです。
ここで見逃せないのは、転倒が「一時的なケガ」で終わらないケースが多い点です。
転倒をきっかけに骨折し、入院へとつながり、その後は活動量の低下や認知機能の低下を経て、要介護状態に進行していく。こうした流れは、在宅介護の現場でもよく見られる典型的なパターンです。
1人暮らし×転倒=“発見されないリスク”
葛飾区では、1人暮らしの高齢者が33.1%と、約3人に1人が単身で生活しています。
さらに見逃せないのが「孤立」の問題です。
調査では、家族や友人・知人以外に相談先がない人が31.0%にのぼり、約3割がケアマネジャーや地域包括支援センターなどの公的な相談窓口とつながっていない状況にあることが明らかになっています。
この状態で転倒が起きた場合、発見の遅れや重症化を経て、そのまま要介護状態へ進んでしまうケースも少なくありません。
転倒・1人暮らし・孤立が重なることは、生活の安全性を大きく揺るがす要因といえます。
外出減少と住環境が転倒を招く
外出の減少と住環境の問題は、転倒リスクを高める大きな要因です。その背景には、「動かなくなる生活」と「住まいの課題」があります。
外出減少の実態
- 外出を控えている:34.2%
- 外出を控える理由1位:足腰などの痛み(66.2%)
住まいの不安
- 家の老朽化:24.3%
- 階段の昇り降りがつらい:19.5%
さらに、今後必要とされる支援として
- 移送サービス:24.1%
- 外出同行:19.3%
と、「安全に移動するための支援ニーズ」が高いことも分かっています。
つまり、動かないことで筋力が低下し、転倒のリスクが高まり、さらに動けなくなる。こうした悪循環が、住環境の課題と重なりながら進行しているのです。
在宅介護の現実①|介護離職は13.5%
在宅介護の負担は、家族の働き方にも影響を及ぼしています。調査では、介護を理由に離職した世帯が13.5%に達していることが分かりました。
特に、主な介護者が仕事を辞めたケースが9.1%と最も多く、負担の集中がうかがえます。
また、働きながら介護を続けることが「難しい」と感じている人は17.8%にのぼり、現在進行形で限界に近い状況にある家庭も少なくありません。
在宅介護の現実②|最大の不安は「認知症対応」
主な介護者が不安に感じている内容として最も多かったのは、「認知症状への対応(41.2%)」でした。
ここで注目したいのが、転倒との関係です。転倒による入院をきっかけに、環境の変化や活動量の低下が生じることで、認知症状が進行してしまうケースは少なくありません。
その結果、転倒をきっかけに認知症が進行し、介護負担が増大し、最終的には介護離職へとつながるケースも見られます。
これは、在宅介護の現場でも見られる、典型的なリスクパターンの1つです。
転倒予防は「社会課題の起点」
ここまでのデータを整理すると、転倒は単なる事故ではなく、
- 要介護化の入口
- 家族負担の増大要因
- 介護離職の引き金
という“連鎖の起点”であることが分かります。
今求められる対策|個人から地域へ
転倒予防を効果的に進めるためには、個人の努力だけでは不十分です。
①住環境の整備
- 手すり設置・段差解消
- 階段対策・照明改善
②外出支援の強化
- 移送サービス
- 外出同行支援
③孤立対策
- 見守り体制の構築
- 地域包括支援センターの活用
特に重要なのは、「転倒しない仕組み」を地域でつくることです。
転倒を防ぐことが“家族の生活”も守る
葛飾区の調査からは、1人暮らしの増加、孤立の進行、転倒リスクの常態化、そして介護離職という現実が重なり合う、複合的な課題が見えてきます。
こうした課題の出発点となっているのが「転倒」です。
転倒予防は、本人の健康を守るだけでなく、在宅生活の継続や家族の就労維持にもつながる重要な取り組みといえます。
今後は、「転ばないための支援」を軸に、地域や制度を含めた総合的な対策が、より一層求められていくと考えられます。
参照元:葛飾区 高齢者に関する調査報告書、調査結果報告書2025

執筆者紹介
「福祉現場の架け橋」として、20年の経験から心に寄り添うヒントを。
介護福祉士および保育士として、高齢者介護から障がい福祉、保育まで、世代を問わず20年以上福祉の最前線に携わる。現場での豊富な実践経験を活かし、単なる制度解説に留まらない「介護する側・受ける側」双方の気持ちに寄り添った発信が持ち味。複雑な介護保険制度も、家族の視点に立って分かりやすく紐解きます。





