目黒区が実施した第10期介護保険事業計画基礎調査では、要介護認定者の生活実態や介護サービスの利用状況、家族の負担までが具体的なデータとして示されています。
現場で日々支援に関わる家族やケアマネジャーにとって、見過ごせない内容です。
本記事では、「目黒区要介護認定者」「目黒区介護サービス利用状況」をもとに、住まいの実態やサービス利用の傾向、家族介護の負担までを整理しながら、現場で役立つ視点でわかりやすく解説します。
目次
この記事でわかること
- 目黒区の要介護認定者は「ひとり暮らし」が最多で、単身・高齢夫婦世帯が半数超を占めており、家族の支援を前提としない在宅介護の実態が明らかになっている
- 介護サービスの満足度は約8割と高い一方、サービス内容や利用回数が希望に合わないという声も多く、制度と個々の生活ニーズとの間にギャップが存在している
- 家族介護者の約4分の1が1時間以上離れた場所に住んでおり、遠距離介護や家族の負担軽減を含めた支援体制の強化が第10期計画の重要な論点となっている
回答者の世帯・要介護度・日常生活自立度
目黒区の要介護認定者の実態を理解するうえで、まず押さえておきたいのが「誰が・どのような状態で生活しているのか」という基本構造です。
世帯構成(家族構成)
回答者の世帯構成で最も多いのは「ひとり暮らし」であり、在宅介護が必ずしも家族同居を前提としていない現状が見えてきます。
- ひとり暮らし:27.5%
- 息子・娘と同居(子が64歳以下):26.4%
- 夫婦のみ(配偶者が65歳以上):25.3%
- 息子・娘と同居(子が65歳以上):8.4%
- 夫婦のみ(配偶者が64歳以下):1.3%
- その他:7.8%
単身世帯と高齢夫婦世帯を合わせると半数を超えており、「家族の支援が常に受けられるとは限らない」状況が前提になっています。
要介護度
要介護度別では、「要介護1」が約4割と最も多く、全体として軽度者が中心となる構成です。
- 要介護1:39.2%
- 要介護2:30.4%
- 要介護3:12.9%
- 要介護4:9.8%
- 要介護5:7.6%
介護度が上がるにつれて割合が低くなる傾向があり、「比較的軽度の段階から在宅介護が始まっている」ことが読み取れます。
日常生活自立度
日常生活の自立度を把握するうえで、外出状況や身体機能の低下も重要です。
外出の状況では、
- 「ほとんど外出しない」:28.9%
- 「週に2〜3回程度」:23.9%
- 「ほぼ毎日」:14.0%
と、外出頻度の低下が目立ちます。
特に年齢が上がるほど外出しない割合は増え、90歳以上の男性では4割を超える結果です。
また、外出機会が少なくなる理由として最も多いのは、「歩行に困難があるため(車いす利用を含む)」で58.4%となっています。身体機能の低下が、そのまま生活範囲の縮小につながっている状況がうかがえます。
このように、目黒区の要介護認定者は「軽度から始まる在宅介護」と「外出・身体機能の低下」が重なり合う構造となっており、早期からの支援介入が重要なポイントといえるでしょう。
利用している介護サービスの全体像
介護サービスの利用状況を見ると、在宅サービスが中心となっています。
主な利用サービスは、
- 福祉用具:55.4%
- デイサービス、デイケア:47.8%
- 訪問看護・訪問リハビリテーション:40.6%
- 訪問介護(ホームヘルプ):30.4%
と、複数サービスを組み合わせながら在宅生活を支えている実態がうかがえます。
この構造は、地域包括ケアシステムの考え方を反映したものです。一方で、「サービスがあっても生活が成り立つとは限らない」という現場の難しさも浮かび上がっています。
ケアマネジャーやサービスへの満足度・疑問
介護サービス全体の満足度は高く、「満足(計)」は79.9%に達しています。利用者からは一定の満足感が示されている状況といえるでしょう。
一方で、不満の内容を見ると、
- サービス内容が希望に沿っていない:47.8%
- サービスの利用回数・時間などが希望に沿っていない:43.5%
といった声が上位に挙がっています。
この結果から、「全体としては満足しているが、細かな部分では課題を感じている」という実態が見えてきます。制度としての枠組みは整っているものの、個々の生活スタイルやニーズに完全には適合しきれていない場面があるといえるでしょう。
また、自由意見では「ケアマネジャーは介護者の状態も意識してほしい」といった声も見られます。
これは、支援の対象が利用者本人だけでなく、介護を担う家族にも広がっていることを示しています。今後は、本人支援に加えて家族の負担や状況にも目を向けたケアマネジメントの重要性が高まる見込みです。
介護保険施設・居住系サービスの利用意向
将来の生活意向を見ると、「主に介護サービスを利用しながら自宅で暮らしたい」が35.2%で最も多く、在宅志向の高さがうかがえます。
一方で、その内訳を見ていくと、単純に「自宅で暮らし続けたい」という希望だけではなく、
- 家族の支援を前提とした在宅継続
- 状態が悪化した場合の施設利用
といった、現実的な選択を視野に入れている人も少なくありません。
つまり、実際の生活設計は「在宅か施設か」の二択ではなく、状態や家族の状況に応じて段階的に移行していくことを前提とした考え方が主流となっています。
この背景には、在宅生活を続けたいという思いと、介護負担や身体状況の変化に対する不安の両方が存在しています。今後は、在宅と施設を切れ目なくつなぐ支援体制の整備が、より重要になるといえるでしょう。
介護支援専門員(ケアマネ)の関わり方
ケアマネジャーは、サービス調整や相談支援、医療と介護の連携といった役割を担い、在宅介護を支える中核的な存在です。
利用者の状態に応じて適切なサービスを組み立てるだけでなく、関係機関との調整や家族への助言など、幅広い役割が求められています。
一方で現場では、関わりの頻度にばらつきがあることや、情報提供の分かりやすさ・質に差があることが課題として見られます。
また、利用者からは「家族の状態にも目を向けてほしい」という声も挙がっており、支援の対象が本人だけでなく家族へと広がっている点も特徴です。
このような状況を踏まえると、今後は利用者本人への支援にとどまらず、家族の負担や生活状況も含めて捉える視点がより重要になります。
在宅介護を安定して継続していくためには、世帯全体を支えるケアマネジメントへの転換が求められているといえるでしょう。
家族の負担感
在宅介護において、家族の負担は非常に大きな課題となっています。
調査では、困りごとを支援してくれる家族との距離について、「1時間以上かかる」が26.1%と最も高い結果となっており、すぐに頼れる環境にないケースが少なくありません。
このように、支援者が存在していても物理的な距離によって十分なサポートを受けにくい「遠距離介護」の実態が浮き彫りになっています。
その結果、精神的な孤立感の増大や、仕事と介護の両立の難しさ、さらには介護離職のリスクといった問題が生じやすくなります。
特に単身世帯や高齢夫婦世帯が多い目黒区では、家族だけで介護を抱え込むこと自体が難しい状況です。
在宅介護は、すでに「家族だけで支えるもの」ではなく、地域やサービスと連携しながら支える仕組みへと移行しているといえるでしょう。
調査から見えた課題と第10期計画への論点
目黒区の調査から見えてきたのは、在宅中心の介護体制が定着している一方で、その基盤を支える仕組みには課題が残っているという現実です。
まず、要介護認定者の多くが高齢・単身または高齢世帯であることから、家族の支援だけに依存した介護は難しくなっています。さらに、サービスは一定程度整っているものの、「内容や利用時間が希望に合わない」といった声が多く、制度と実生活の間にギャップがある点も明らかになりました。
また、家族の負担についても、遠距離介護や孤立といった問題が顕在化しており、「支援される側」だけでなく「支える側」への支援の重要性が高まっています。ケアマネジャーに対しても、本人だけでなく家族の状況まで踏まえた関わりが求められている状況です。
こうした背景を踏まえると、第10期計画においては、在宅介護サービスの充実を軸としながら、施設サービスとの適切な連携、そして家族介護者への支援を含めた“在宅・施設・家族支援の三本柱”をどう強化していくかが重要な論点となります。
これからの介護は、サービスの量だけでなく、「どれだけ生活にフィットするか」「どれだけ家族を支えられるか」が問われる段階に入っています。
在宅生活を支え続けるためには、地域・制度・専門職が一体となった支援体制の構築が不可欠です。
参照元:目黒区 第10期介護保険事業計画基礎調査・高齢者の生活に関する調査 報告書、概要版、調査の概要、要介護認定者調査

執筆者紹介
「福祉現場の架け橋」として、20年の経験から心に寄り添うヒントを。
介護福祉士および保育士として、高齢者介護から障がい福祉、保育まで、世代を問わず20年以上福祉の最前線に携わる。現場での豊富な実践経験を活かし、単なる制度解説に留まらない「介護する側・受ける側」双方の気持ちに寄り添った発信が持ち味。複雑な介護保険制度も、家族の視点に立って分かりやすく紐解きます。





