目黒区が令和7年11月~12月に実施した「第10期介護保険事業計画基礎調査」から、在宅介護を担う家族の実態が明らかになっています。
主な介護者の高齢化や就労との両立の難しさ、そして精神的・身体的な負担の大きさなど、現場で起きている課題は決して他人事ではありません。
本記事では、「目黒区在宅介護」の現状をもとに、主介護者の不安や介護離職リスクに焦点を当てながら、家族介護者とケアマネジャーの双方に役立つ視点でわかりやすく解説します。
目次
この記事でわかること
- 目黒区の在宅介護者の約7割がほぼ毎日介護を担い、精神的・身体的負担が深刻化している実態
- 就労中の介護者の63.5%が「何とか続けている」状態にあり、介護離職リスクが潜在的に高いこと
- 在宅介護を継続するために求められる緊急時サービスやレスパイト支援など、具体的な支援ニーズ
主な介護者のプロフィール(性別・年齢・続柄・同別居)
目黒区の在宅介護では、「誰が介護を担っているのか」という点が非常に重要です。
調査によると、主な介護者の続柄は「子」が50.7%と最も多く、次いで「配偶者」が36.6%、「子の配偶者」が3.8%となっています。
親の介護を子世代が担う構造が中心となっており、家庭内での役割が大きく変化していることがうかがえます。
性別では、女性が65.5%と多数を占めており、依然として家族介護は女性に偏りやすい状況にあるといえるでしょう。
年齢を見ると、60代が29.5%で最も多い一方、80歳以上も23.3%に達しています。高齢者が高齢者を支える「老老介護」が、現実のものとなっています。
また、同居している割合は71.0%と高く、日常生活の中で介護を担っているケースが大半です。一方で、約3割は別居で介護を行っており、通い介護による移動負担や時間的制約も無視できません。
さらに、介護と育児を同時に担うケースも一定数存在しており、いわゆる「ダブルケア」の状況も確認されています。
介護負担は単独ではなく、複合的に重なっている点にも注意が必要です。
家族介護の内容と時間
在宅介護の実態を理解するうえで欠かせないのが、「どのような介護が、どれくらいの頻度で行われているのか」という点です。
目黒区の調査では、家族による介護は日常的に行われているケースが多く、「ほぼ毎日介護している」と回答した割合は68.0%にのぼります。
在宅介護は一時的な支援ではなく、生活の一部として継続的に行われているのが特徴です。
具体的な介護内容としては、
- 排泄介助(昼・夜間)
- 食事や入浴の介助
- 移動・移乗の支援
- 外出の付き添い・送迎
- 服薬管理や見守り
- 認知症への対応
- 医療的ケア(経管栄養など)
といった身体介護に加え、
- 食事の準備
- 掃除や洗濯
- 買い物などの家事支援
といった生活全般にわたる支援も含まれます。
つまり、在宅介護は、「身体介護」と「生活支援」が一体となった負担であり、特定の時間帯だけで完結するものではありません。特に夜間の排泄介助や見守りが必要な場合、介護者の休息が十分に取れず、疲労が蓄積しやすくなります。
また、週に数日の介護にとどまるケースであっても、通院や急な対応などが重なることで、実際の負担は想定以上に大きくなる傾向があります。
このように、介護時間は「見えにくい負担」として日々積み重なっている点が重要です。
主な介護者の就労状況と介護離職リスク
在宅介護において大きな課題となるのが、「仕事との両立」です。
目黒区の調査では、主な介護者の中には働きながら介護を担っている人も多く、日々の生活の中で「仕事」と「介護」の両方に対応している実態が見えてきます。
その中で注目すべきなのが、「介護を理由に仕事を辞めたケース」が一定数存在している点です。
介護離職は決して特別なケースではなく、誰にでも起こり得る現実的なリスクといえます。
さらに、今後の見通しについては、「問題はあるが何とか続けていける」と回答した人が63.5%と最も多くなっています。
この結果からわかるのは、多くの介護者が「ギリギリの状態で仕事を続けている」という実態です。一見すると両立できているように見えても、余裕があるわけではなく、環境が変われば離職に至る可能性を抱えています。
また、働きながら介護を続けるために必要な支援としては、「介護休業・介護休暇制度の充実」と回答した人が31.7%と最も多くなっています。
これは、制度の不足だけでなく、「使いにくさ」や「職場の理解不足」といった課題が関係しているといえるでしょう。
特に、突発的な通院対応や夜間の介護が必要な場合、勤務調整だけでは対応しきれず、結果として働き方の変更や離職につながるケースも少なくありません。
ケアマネジャーにとっては、「継続できているが不安を抱えている層」に対して、
- 適切なサービス導入
- レスパイトの確保
- 家族以外の支援の組み合わせ
を提案できるかが重要なポイントになります。
介護離職を防ぐためには、「限界を迎えてから支援する」のではなく、「余裕があるうちに支援につなぐ」視点が不可欠です。
主な介護者の不安・負担感
在宅介護において、見過ごせないのが主な介護者の不安や負担感です。
目黒区の調査では、介護者が抱える負担は非常に大きく、
- 精神的に疲れている:48.9%
- 身体的に疲れている:44.0%
- 自分の時間がとれない:43.3%
と、心・体・時間のすべてにおいて負担が集中している状況が明らかです。
特に精神的な疲労が最も高い割合となっており、介護が長期化する中でストレスや不安が蓄積していることがうかがえます。
また、具体的に不安を感じている介護内容としては、
- 認知症への対応:37.7%
- 夜間の排泄介助:32.1%
- 外出の付き添い・送迎:30.7%
などが挙げられています。
いずれも日常的に発生しやすい介護場面です。
認知症対応は、行動や症状が日によって変化するため精神的な負担が大きく、対応に悩むケースが多く見られます。
さらに、夜間の排泄介助が必要な場合は睡眠不足につながり、身体的な疲労を一層強める要因となります。
加えて、外出の付き添いや送迎は時間的拘束が長く、仕事や日常生活との両立を難しくする要素の1つです。
このように、在宅介護の負担は1つではなく、身体的・精神的・時間的な負担が重なり合うことで、より深刻な状態になりやすいことが特徴といえます。
特に問題となるのは、こうした負担が「見えにくい」ことです。周囲からは気づかれにくく、結果として1人で抱え込んでしまうケースも少なくありません。
そのため、介護者の状態を早期に把握し、適切な支援につなげることが、在宅介護を継続するうえで重要となります。
在宅介護継続のために必要な支援
在宅介護を続けるうえで重要なのは、「介護を頑張ること」ではなく、「支えをどう確保するか」です。
目黒区の調査では、介護者が最も必要と感じている支援として、「介護者の病気や急用時に利用できるサービス」が50.9%と最も高い割合となっています。
これは、「自分が対応できなくなったときの備え」が最大の不安であることを示しています。言い換えれば、「自分が倒れたら介護が止まってしまう」というプレッシャーの中で、多くの介護者が日々の介護を続けている状況です。
これに続いて、ショートステイなどのレスパイト(休息)支援や、訪問介護・通所サービスの充実、気軽に相談できる窓口の整備などが求められています。
特にレスパイト支援は、介護者の心身を維持するうえで欠かせない要素です。一時的に介護から離れる時間を確保できるかどうかが、在宅介護の継続に直結します。
また、自由意見では、ショートステイの予約が取りにくい、必要なときにサービスが使えないといった声も見られ、制度があっても十分に活用できていない実態が浮かび上がっています。
さらに、ケアマネジャーによって提案内容に差があるとの指摘もあり、支援の質にばらつきがある点も課題の1つです。
このように、在宅介護を続けていくためには、サービスの量・質・タイミングのバランスが取れていることが重要といえます。
ケアマネジャーには、「困ってから対応する」のではなく、緊急時への備えや休息の確保、サービスの事前調整を意識しながら、早い段階で支援体制を整えていくことが求められます。
在宅介護を無理なく続けるためには、「1人で抱えない仕組み」をつくることが欠かせません。
目黒区の在宅介護者が直面している5つの課題
これまでの調査結果を踏まえると、目黒区の在宅介護には、いくつかの共通した課題が見えてきます。
特に重要なポイントを5つに整理すると、以下の通りです。
①老老介護の進行
主な介護者は60代が中心ですが、80歳以上も23.3%に達しています。高齢者が高齢者を支える構造が広がっており、体力的な限界と常に隣り合わせの状況です。
②ダブルケアの存在
介護と同時に、未就学児の育児や孫の世話を担うケースも見られます。負担が重なりやすく、精神的・時間的な余裕が失われやすい点が課題です。
③「離職予備軍」の多さ
「問題はあるが何とか続けている」層が63.5%を占めています。一見安定しているように見えても、支援がなければ介護離職へと移行する可能性が高い層です。
④精神的・身体的負担の深刻化
「精神的に疲れている(48.9%)」が最も高く、身体的疲労や時間不足も重なっています。特に認知症対応や夜間介助は、負担を長期化させる要因です。
⑤支援の“使いにくさ”と格差
自由意見では、ショートステイの予約が取りにくい、必要なときにサービスが利用できない、ケアマネジャーによって提案に差があるといった声が見られます。
制度があっても、十分に活用できていない状況が課題として浮かび上がっています。
まとめ|在宅介護は「支援設計」が重要なポイント
目黒区の調査から見えてきたのは、在宅介護が家族だけで支え続けるには負担が大きくなっているという現実です。
主介護者の高齢化や、仕事との両立の難しさ、精神的・身体的な疲労が重なり、多くの方が余裕のない状態で介護を続けています。
特に、「問題はあるが何とか続けている」と感じている人が多い点は見逃せません。この層は、適切な支援があれば在宅介護を継続できる可能性がある一方で、支援が不足すると介護離職や在宅生活の断念につながるおそれがあります。
そのため、在宅介護を続けるうえでは、目の前の対応だけでなく、あらかじめ支援体制を整えておくことが重要です。
緊急時に頼れる環境や、無理なく休息が取れる仕組みを準備しながら、状況に応じてサービスを組み合わせていくことが、負担の軽減につながります。
在宅介護は、1人で抱え込むものではありません。無理のない形で続けていくためにも、早い段階から支援につながることが大切です。
参照元:目黒区 第10期介護保険事業計画基礎調査・高齢者の生活に関する調査 報告書、概要版、調査の概要、在宅介護実態調査

執筆者紹介
「福祉現場の架け橋」として、20年の経験から心に寄り添うヒントを。
介護福祉士および保育士として、高齢者介護から障がい福祉、保育まで、世代を問わず20年以上福祉の最前線に携わる。現場での豊富な実践経験を活かし、単なる制度解説に留まらない「介護する側・受ける側」双方の気持ちに寄り添った発信が持ち味。複雑な介護保険制度も、家族の視点に立って分かりやすく紐解きます。





